ペアの銀河といえば、M81とM82がすぐに思い浮かびます。3つ組は「しし座のトリプレット」、ひとつ飛んで5つ組は「ステファンの五つ子」があります。
4つ組のカルテットと呼ばれる銀河のことは、今回撮影するまで知りませんでした。
つる座の付近に"The Grus Quartet”(つる座のカルテット)と呼ばれる銀河の連なりを見つけて、チリでの夏の撮影対象に選びました(あっちは冬)。7月末から8月の晴れ間に18時間ほど露光しました。
date: 2023-7-28,29,8-13,25,29 (5 nights)
Location: El sauce Observatory, Chile
Optics: R200ss,
Camera: ASI294MM-pro
Exposure:
L 120s x 281f gain120
R 120s x 92f gain120
G 120s x 87f gain120
B 120s x 91f gain120
(total 18.4h)
Processing:Pixinsight, Photoshop
焦点距離760mm+4/3センサーで、面積比60%くらいにトリミングしています。ちゃんと撮るなら1200mmくらいほしいところ。画像処理は色と透明感を重視して、腕の淡いところの描出は諦めつつ、なるべく背景を暗く出来るように心掛けました。黒つぶれを防ぎつつ背景を落とすためには、結局は長い露光時間が必要なんじゃないかなと思っています。
この4つ組の銀河が見えている位置を確認します。ペガスス座のはるか南方、ちょうこくしつ座とつる座の間のあたりです。宮城県での南中高度は12度くらいで、さすがに日本から撮影するのは難しそうです。
思い切りトリミングして、一つ一つの銀河を見てみます。距離は、後述する id:rna さんのアノテーションスクリプトからとりました。
まずはフェイスオンのNGC7552、こういうのを棒渦巻銀河というのでしょうか。棒構造の本体には活発そうなHa領域も見えています。
つぎはNGC7582。これも棒渦巻銀河ですね。もしこれがファイスオンだったら、うえのNGC7552とほとんど同じ形をしていそうです。ただ腕の色はすこし青みが薄いようでした。
さいごは、NGC7590と7559のペア。これは渦巻銀河のようです。細かな暗黒帯が印象的で、顧問はM63と似ているなと思いました。
4つの銀河の距離は、いづれも7000万光年前後。それらが0.5°くらいの視野内に集まって見えているわけですから、簡単な三角法で計算すると、カルテットの間の距離は数百万光年程度になります。ちょうど我々の天の川銀河とアンドロメダ銀河(M31)くらいの位置関係です。これらの銀河に住んでいるガチ天達にとって見れば、M31のような立派な銀河がお互いに3つも見えているわけで、すこしうらやましくなりました。
最後にアノテーションをした結果を載せておきます。
アノテーション機能は、撮影結果をみて一人ニヤニヤするには最高のツールです。10億光年以上離れた銀河はいづれも黄色っぽくって、宇宙の膨張を感じちゃいます。
id:rna さんの作成されたスクリプトを使用しました。以前も拙ブログで紹介していましたが、最近、わずかに残っていた不具合を修正して新しくリリースしてくれました。ありがとうございます。
rnaさんのスクリプトは、Pixinsightのアノテーション機能と比較しても下にあげるような利点があります(一部超マニア向け利点ではありますが^^)
- 銀河までの距離が日本語で表示できる
- PIの銀河のマークが円だけであるのに対して、銀河の形を考慮した楕円マークが表示されるので、写っているかいないかわからないような小さな銀河の確認に役立つ
- フォントの選択肢が多い
- 表示する銀河に等級で制限をかけられるので、PGC銀河で画面が埋め尽くされることが無い
などです。導入方法は下で紹介しています