天文はかせ幕下

白金台でメガスターを見てきた感想など

成果発表会のついでに、大平貴之さんのメガスターを見ることのできる施設を探していて、白金台にあるプラネタリウムbarを見つけました。ここは夜も営業していて、発表会後の時間帯でも入場できました。

このBARは基本カップル向けに作られていて、座席も二人席しかありません。顧問は二人分のチャージ料金とドリンクを二杯以上オーダーする条件で、一人鑑賞してきました。平日の早い時間帯だったせいか、客は私一人で、カップルたちの中で気まずい居心地のわるさに囚われることはありませんでした。

店内は完全に真っ暗。赤い懐中電灯でオーダー表を見て注文するという天文マニアも納得のスタイルです。奥手のほうの天井が直径5mほどのドーム状にくり抜かれていて、その中心にメガスターが据え付けられていました。

私が着席した時には、「メガスターCLASS」が稼働していました*1。これは100万の星を投影するとのことです。失礼して投影機に近づき、ドームの中心から見て見ますと、なるほど素晴らしい星空を堪能できました。

具体的な感想や推察など

ただ、決して批判する意味でなく申しますと、本物と見間違える星空か?と問われると、そうではないなと。あれは、あくまでプラネタリウムが投影するという前提での美しい星空である、というのが本音の感想です。恐らく理想のプラネタリウムがあるとしたら、それは数百万の輝度と色の異なる光源を搭載し、それらの光をレンズを通して一つ一つ投影するスタイルになるはずです。でもそれは無理なので、実際のプラネタリウムでは、1個から数十個の光源をつかって、星の明るさを投影面積の違いに置換して表現しています。

で、ここからは推測になりますけど、おそらく星の明るさの比をそのまま面積比に置き換えて投影してしまうと、美しい星空にはならない。星景写真でソフトフィルターを使って輝星を強調するように、プラネタリウムの面積比もある種の「デフォルメ化」が施されているように思いました。そのデフォルメ化が見事なセンスで行われていて、バランスよく、かつ本物の星空よりも星座がわかりやすいと思いました。私の好きな「や座」なんて、非常にはっきり見えました。

もう一つ気づいたのは、微光星の投影について。投影される天の川は、目に見えない星々を忠実に一つ一つ投影した点光源の集合体として表現されているということを大平氏の著書で読み、これが一番気になっていました。といいますのも、前述したように、星の明るさは投影面積で表現されるので、目に見えない暗い星は非常に小さい投影面積を持つことになります。そのためには恒星原盤*2に非常に小さな穴を穿たなければならない。しかしながら、小さな穴を通った光は必ず回折するので、原盤の穴を小さくしすぎると、投影される星は逆にぼんやりしてしまうはずです。この事情は、ちょうどカメラレンズを絞りすぎると画質が低下することに似ています。

メガスターはどうだったかと言いますと、スクリーンに近づいて確認したところ、微光星はちゃんと投影されているわけではなくて、それが存在するあたりをぼんやりと照らしているだけでした*3。しかしその星像は人間が実際の星空を見るときの目の分解能とうまく対応が取れていて、微光星はぼんやりしているけれども本物の星空と同じように見える*4。これがすごいと思いました。たとえば肉眼で光のシミのように見える蟹座のプレセペなどは、見事に再現されていました。いわんや天の川をや、です。

 

投影は休憩を挟んで「メガスターラチナム」に切り替わりましたが、ぱっと見は違いがわかりませんでした。プラチナムのほうは、投影する星の数がClassより多いとのことで、若干星座の識別がしにくかったような気がしましたが、そのころには酔いも進んでいたので、勘違いかもしれません。

 

予定より長い記事になってしまいました。2019年度の更新は以上です。みなさま良いお年を。

 

 

*1:同店にはこれの他にメガスターラチナムが設置されている

*2:プラネタリウムの光路に配置される星の配置ごとに穴を開けた板

*3:例えばプレアデス星団は、はっきり数えられる6つの星が投影されていて、その周辺がぼんやり明るく投影されていた。

*4:これも推測ですが、メガスターでは、はっきりとした面積でもって投影される星と、ぼんやりと投影される微光星は別扱いされていて、その閾値の設定が非常にうまく考えられているのではないかと。