天文はかせ幕下

三脚アジャスター

前々回の気仙沼での撮影から、遠征にてNJP赤道儀をのせる脚を、ピラー脚から三脚に変更しておりました(三脚を入手! - 天文はかせ序二段(仮))。この三脚は、取り周りの良さも剛性も申し分ないものの、赤道儀の水平出しが難しいです。

そこでよく使われる、三脚アジャスターというものを製作しております。とりあえず一つ作りました。

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端材を利用しているので、製作費用はネジと蝶番あわせて三百円ほど。同じものをあと二つ作っても、全部で1000円弱です。

たとえばタカハシの三脚アジャスターは、NatureShopKyoeiなどをみると1ケで1万円くらいしていますね。費用にして30分の1で抑えられました。

でも安かろう悪かろう。タカハシ製がほとんどガタつきが無さそうな強固な蝶番を使っているのに対して、ホームセンターで買って来た汎用の蝶番は、かなりガタガタ。

蝶ネジを二つにすれば、ガタツキも解消できそうですけど。ダメだったらカスタネットとして活用します。

マルカリアンの鎖、モザイク合成、職務質問

まだまだお寒い季節ですが、夜半を過ぎるともうすっかり春の星座です。代表的な星座は、しし座とおとめ座でしょうか。その中間位置のあたりに、「マルカリアンの鎖」とよばれる銀河の集団があります。8等〜10等くらいの小さな銀河達が、ちょうど満月の2倍くらいの領域に鎖状に密集しているのです。

これを以前から撮影したいと思っていて、コモンは一人で遠征してきました。子供達が寝静まった夜の10時半に家を出発。はやま湖へ。月没の1時間前にはやま湖に到着。この場所の独特な闇と静けさには、いつも本能的な恐怖を感じます。もうちょっと広くて周辺の見晴らしがあればよいのですが。

今回はモザイク合成をするため、各12枚x2=24枚を撮影が目標。一枚6分露光でトータル2時間半です。25時すぎからようやく撮影を開始して、27時ころ、ふいに一台の車が近づいてきました。福島県警の方々でした。

「これは何をしているのですか?星の写真ですか?」
「はいそうです。」
「免許証を見せてもらっていいですか?」
「どうぞ」
「・・・」
「この辺りは、自殺者とかも多くて見回っていたんですよ。良くない輩も稀にですが見かけますので、できれば一人で来るのは避けたほうがいいとおもいますね。」
「ありがとうございます、ご苦労様です」

なんて会話。怪しい奴と思われて、だれかに通報されたのだと思いましたよ。でも、これからはやま湖で撮影するのが、すこし気味が悪くなってしまいました。どうしましょう。

さておき、撮影した写真を載せておきます:構図が最低です。

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マルカリアンの鎖 2018年2月23日25:00~27:30
鏡筒と架台:Takahashi ε200 on NJP赤道儀
カメラ:EOS60Da 撮影データ:360sec * 12flames(*2枚モザイク)
ISO1600 PHD2による自動ガイド(5秒間隔)

 

覚書:

・この銀河団、近くに目立つ星がなくて一つ一つの銀河自体も暗いので、導入に苦労しました。30分以上かかってしまいました。天体は手動で導入するのが風流であると思っていた信念が揺らぎました。

・モザイク合成はphotoshopのphotomergeがうまくいかず、MicrosoftのImege composite editorを利用。評判通り優秀なソフト。DSSでスタックした画像をほんの僅かにトリミングして(ガイドエラーのために写真の周辺部が極端に暗くなっている部分を取り除く)、このソフトに読み込ませればあっけなく合成が完成。

・モザイク合成をするときは、写真の縦横方向を、赤緯赤経方向と注意深く一致させた方が良い(その方が撮影と構図の設定が楽)。ニュートン式の場合、イメージセンサーの一辺と鏡筒の軸が平行になるようにカメラと鏡筒に取り付ける。かつ、鏡筒の接眼部と斜鏡の中心を結ぶ線が、赤道儀赤緯軸と平行・垂直になっていなければならない。

・モザイク合成をするときは、事前にプラネタリウムソフトで構図を綿密に定めてくべき。今回は構図が思いっきり失敗。

 

送別冬合宿

思い出せば5年余りまえ、ろくに活動をしていなかった当時の天文部に元気な1年生が2名、入部してきました。ざわなかさんと5100(ごとうれい)さんです。それがきっかけとなって、夏に蔵王での初合宿をおこない、このブログもスタートしたのでした。

そのあとなかむら、たなか、スズリョウ、オノデラ、阿部なども加わって、その学年の部員たちが天文部の主力となります。

彼(女)らは、今年の3月に卒業。さよならです。送別会をかねて、部員たちが最も恐れ「やりたくない」と主張していた冬合宿を行うことにしました。宿泊と観測場所は気仙沼の小さな宿泊施設「コテージキクタ」。開催日は2月16日(金)~17日(土)としました。

コテージへ

開催日の週末にかけて低気圧が近づいて、GPV予報も曇り。まあそんなもんだよね、と三陸道を北へ。登米あたりまでくると白鳥やマガンが田んぼの上を曇り空を飛んでいます。

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日本の空はどこで撮影しても電線がはいるよね。最近覚えたphotoshopで消してやりましょうか。

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消しました。

さておき、日没前にコテージに到着。

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かわいいトレーラーハウスです。オーナーは一関高専の卒業生だとか。素泊まり一泊3800円なり。

観測地を探し、夕食の買い出し

暗くなる前に、観測予定地の下見に向かいました。コテージから車で3分ほど走ると、海沿いに出ます。

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岩井崎というところで、近くには駐車場。周辺は盛んに復興工事が行われていて、民家も思っていたより点在していました。風も強くて近くに明かりも多くここでの観測を諦めて、少し離れたところの津波避難所を利用させてもらいました。

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日が暮れていきます。果たして晴れるのでしょうか。

ちかくのスーパーに買い出しに来ました。今夜はカレーを作成します。

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「バカモノ、ジャワカレーの中辛はこくまろカレーの辛口に相当するのだぞ!」

と顧問は5100を怒鳴りつけています。

このあと、一行は料理班と機材設置班に分裂して、それぞれ作業に勤しみました。機材設置班が仕事をおえてコテージに戻ると、料理班の阿部がニンジンをぶちまけていました。バカモノ!

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やっと観測

カレーを食べて、ゆったりしたあと、高速バスで移動してきた1年生たちとも合流。ようやく観測を始めました。f:id:snct-astro:20180216212714j:plain

彼らが見上げているのは、星々ではなくてノッペリとした曇り空です。しかし顧問は、なんとなく晴れるような気がしていました。実際、日付が変わるころに晴れ間がやってきました。

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久しぶりに登場のε200で、しし座の三つ子銀河を狙います。そうして夜は更けていきました。

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 しし座の三つ子銀河、M65(右上)M66(右下)NGC3628(左)
2018年2月16日25:05~27:36
鏡筒と架台:Takahashi ε200 on NJP赤道儀
カメラ:EOS60Da
撮影データ:300sec * 23flames ISO1600
PHD2による自動ガイド(5秒間隔)
 

撮影結果です。ちょっと構図がずれていますが、再び空が曇るのを恐れるあまりアングルを追い込む余裕がありませんでした。にしてもなぜか素晴らしく解像した傑作が撮れたなと思っています。

 

上の写真の再処理:

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よくあさ

観測に利用した場所で記念撮影をしました。ちょっと小さめの画像でご紹介します:

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それではさようなら。

三脚を入手!

我々の天文部が属している高専という学校は、どちらかというと高校よりも大学に近いところです。各学科には「研究室」があって、そこでは「研究費」が配分されています。そのため高価な研究機材があちこちにあるのです。

それで今回、とある研究室でしばらく使わない予定の三脚を、偶然的に発見してしてしまいました。さっそく、その研究室の教授のところに押しかけました。

「あの三脚、いいですよね。え!使ってないんですか?使ってないんでしょ。うん、貸してよね。」

とお願いしたところ、快く承諾していただきました。借りてきましたよ我々は。

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写真の左側が、その三脚。アメリカ製みたいですが、BRUNSONというのでしょうか?よくわかりません。右側は今まで、NJP赤道儀を載せていたピラー脚です。この三脚、一部カーボン製になっていて、とにかく軽いです。片手で持てるくらいです。それでいて強度は申し分ない様子。

そのままでは、赤道儀を固定できないので、旋盤を使って下の写真のようなアダプタを作製しました。

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6つのインチネジでこのアダプタを三脚に据えて、3つのM10ボルトで赤道儀を固定します。

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これでだいぶん、遠征が楽になりました。ありがとうございました。

皆既月食の観測 ーー 撤収すると晴れるの法則

31日の皆既月食へむけて、天文部では「皆既月食観測会」を企画。学校の屋上で、みんなで月食を観測しよう!というわけです。ラグビー部や野球部に比べれば、学内ではほとんど知られていない天文部の闇の活動を、アッピールしようという魂胆もありました。ノゾキドさんにチラシを作ってもらって掲示したりして、全校生徒にアナウンスしました。

しかし、当日の宮城県名取市は厚い雲に覆われていました。薄明後、観測会会場の屋上には天文部の4名と顧問だけの姿がありました。寒風に乗って、チラホラ雪も舞っていたのです。

動画は18時から22時30分まで、約4時間半のタイムラプスです。


絶望的な曇り空です。約35secからかけ始めの様子が、1m03sころに皆既の様子が一瞬だけ見えます。

撤収すると晴れるの法則

そして、また機材を展開すると曇る。これは本当に恐ろしい法則です。

夜も更けて、めぼしい部員たちは都合があって帰宅。顧問とナカムラは23時ごろまで屋上で粘りました。立ちっぱなしでだいぶん疲れて来ました。とうとう、

「もうだめですな、ナカムラどの」
「そうですな、ナガヒロどの」

とアキバのオタクのような会話を交わして、我々も撤収しました。

あらかた機材を片付けて身支度をととのえ、再び外に出るとなんと晴れていたのです。恐ろしいことです。ちょうど真上に、皆既を終えたばかりの月がはっきりと見えていました。我々はクタクタでしたが、仕方なく、イヤイヤ撮影を開始しました。あたふたしているとどんどん月が太くなっていきます。

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ターコイズフリンジ(?)の部分、すこし青っぽく見えますね。まあよかったよかった。