天文はかせ幕下

子持ち銀河(1年ぶり5回目)

先日の神割崎での撮影。蒼い馬が南に登ってくるのを待つ間、手持ち無沙汰にM51を撮影していました。

M51(reprocessing)

Date:22th, April. 2020 21:31~23:59
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11"
Mount: Takahashi NJP
Exposure: 300sec. x 26flames (gain 120) + 60sec. x 5flames (gain120)  

とっくの昔に人生が守りに入っている顧問ですけど、画像処理も最近は守りに入りがちなのがの悩みです。攻めとか守りとか意味わかんねーし、という声が聞こえますので具体的に申し上げますと、エラーを恐れて冒険ができないということです。例として輝度の飽和を恐れてハイライトが弱い、色の飽和を恐れて彩度が弱い、など。

上の画像では彩度も輝度もがっつりあげてみたつもりですが、どんなものでしょうね。

ピクセル等倍で振り返る、いままでのM51

M51子持ち銀河は、もう5回目の撮影になります。これまでの結果を、恥ずかしながらピクセル等倍で振り返ってみます。

  1. 1枚目:2013年12月 学校屋上で撮影
    f:id:snct-astro:20200506232841j:plain
    Meade Lx200とKissX5のノーマル機を使って屋上での撮影でした。始めたばっかりの頃の撮影で、露光時間とかスタック枚数など細かいデータも残ってません。「こんな時代もあったよね」的な。
  • 2枚目:2016年2月 学校屋上にて撮影

    f:id:snct-astro:20200506233451j:plain
    1枚目の約3年後。なんだろうこのセピア調は?しかし結構解像している。大気の状態が良かったのだろうか? MT200+EOSkissX5 180s x 12枚。

  •  

    3枚目:2017年2月 はやま湖で撮影

    f:id:snct-astro:20200506234028j:plain
    2枚目から1年後。色は乗っているけれど、解像度は悪化。MT-200とEOS60Da、240s x 16枚。まだノータッチガイドで、画像処理もgimpのみだった。

  • 4枚目:2019年4月 神割崎で撮影

    f:id:snct-astro:20200506234259j:plainおよそ1年前、前回の撮影。当時の記録には「デジカメの限界かな?」なんて書いてます。MT-200 EOS60Da, 360s x 18枚。

  • 5枚目 2020年4月 神割崎で撮影

    f:id:snct-astro:20200506234755j:plain
    そして今回の結果。まあーちょっとは良くなっているけど、そんなに変わってもいないような? RASA11" + ASI294MC, 300s x 26枚。

 

RASA11" + Sigma Fp ファーストライト

はじめに

もうだいぶん前のことなのですけれども、RASA11"にSigma Fpを装着する組み合わせでのファーストライトをして来ました。対象はこの時期、0時過ぎに昇ってくる蒼い馬星雲。夜中に神割崎まで出かけて撮影し、黙々と帰って来ました。出発から帰宅まで「ゼロ密」だったと思います。

準備編については、

をご覧ください。

RASA+FPファーストライト

神割崎としては珍しく低空の霞が晴れて透明度が高く、さそり座付近を撮影するには良い条件でした。ふだんですと、海が広がっている東から南方向の低空には、霞がかかることが多いようです。この日は、水平線の上に出て来たばかりのアンタレスがよく見えていました。

構図合わせたあと、自作のレリーズ変換ケーブルの接触不良が判明し30分ほど浪費。これは後日要調整。カメラの設定はISO1600の180秒露光。とするつもりだったのが、知らないうちにISO2000になってました。SigmaFpの操作ダイアルはちょっと触っただけで回ってしまうので、これも注意が必要。

撮って出しの画像は以下のとおり。

f:id:snct-astro:20200423012012j:plain

鏡像です。中央下の輝星の周辺にうっすらと青い星雲の姿。フルサイズセンサーになると周辺減光はきついですねえ。ヒストグラム

f:id:snct-astro:20200503085743j:plain

このような様子で、最周辺の光量は中央の50%くらい。ちなみにRASA11"のイメージサークルはφ70mmとのことです。鏡筒にはEFマウント用のTリングを取り付けて、シグマ純正のEF to Lマウントコンバーターを通し、カメラを取り付けてます。

それよりも、もっとも恐れていたのは「片ボケ」。フォーサーズセンサーのASI294MCでも苦しめられたのだから、フルサイズだとどうなってしまうのかと。しかし幸いにも上の画像に片ボケはほとんど見られません。ASI294MCでは、いまでも僅かな片ボケを認めてますが、これはマウント面とセンサー面のずれなのかもしれません。こんどレーザーポインターをつかって調整をしてみよう。

結果

3分露光を6枚撮影したところで、雲が広がって来てしまいました。SCWは正しかった・・。苦労して来たのにたったの18分しか撮影できず、意気消沈しつつも処理を行います。うえのぼんやり画像が果たしてどうなるでしょうか??

・・・・

・・・・

IC4592 The Blue Horsehead Nebula

Date:2020-04-23
Location: Miyagi, Minamisanriku, Jpn
Optics: Celextron RASA 11"
Guide: Takahashi NJP, MGEN
Camera: Sigma Fp
Exposure: 180s x 6flames (ISO2000)
Processing: Pixinsight, Photoshop CC

 

おお、けっこう映ってた。

接触不良で、レリーズケーブルをぐるりできなかったので、星像には問題あり。しかし18分のわりには星雲もよく出てくれました。70点くらいの出来だったフラット補正も、DBEでなんとか見られるようになりました。機会があれば追加露光をしたいところ。

 

Zoom観望の閉会後、自宅からM8とM20

先日のZoom観望会を閉会して寝支度を整えた頃、いて座付近が南中していました。さきほどまで少し霞んでいた空の透明度も、若干回復した様子。眠いのを少し我慢して、出しっ放しの機材でM8付近を撮影て見ました。

M8 and M20 taken from my backyard.
Date: 25th. April. 26:20~26:40
Location: Natori, Miyagi.
Optics: Zeiss app-sonner 135mm F2, IDAS NB1 filter
Camera: ASI294MC-pro
Exposure: 30sec. x 40flames, gain390(temp -10deg)

 

撮影地は、仙台市中心部から南に13kmほどしか離れていない住宅街でF2のレンズを開放で使ってgain390で撮ってます。露光30秒でもM8の中心部はすこし飽和してしまいました。光害カットフィルターとして、IDASのNB1フィルターを使ってます。

f:id:snct-astro:20200502094339j:plain

有名なサイトロンのQBPフィルターと同じく、NB1もHαとOIII線を通すように設計されています。QBPに比べると、こちらの方が若干バンド幅が狭いようです。このフィルターの威力は、多くの方がすでに実証されているところではありますが、改めてその威力に驚きます。ただ、カラーバランスがかなり崩れます。

f:id:snct-astro:20200502100156j:plain

背景をニュートラルにしても、GとBにくらべてRだけが極端にコントラストが高い状態で、画像はどうしても赤茶けた感じになります。それを「そんなもの」と我慢しさえすれば、都市部近郊でも十分に撮影を楽しめますね。上の結果で言うと、「猫の手」やM20の青い方が結構映って来たのが驚きでした。

 

 

Zoom観望会

「あ、どうもですー。」
「はじめまして。」

なんて言ってZoom会議に参加しましたら、隣の家の瓦屋根越しに干潟星雲が見えている。なんとも非現実的なコントラストである。

顧問は先日の深夜、ほしぞloveログのsamさんが主宰するZoom電視観望会に参加しました。50mmのNikkorレンズとAZ-GTi+StickPCという簡易なシステムで、天の川沿いの星雲を、あれほどしっかり観ることができるのは驚きでした。その夜は、いて座あたりから白鳥座までを存分に楽しませてもらいました。

これは真似しよう。

というわけで、Slackで部長のヒヨリくんに連絡。よく晴れた土曜の夜に、さっそく部内での電視Zoom観望会を行いました。機材は135mmのApo SonnerにASI294MC pro。IDASのNebula Boosterを取り付けておきます。顧問のベランダに機材をセットして、23時より開催。いて座が上がってくるまで、天秤座あたりの球状星団M5->M10->M12と観望。がしかし、いまいち盛り上がりません。球状星団あはみんな同じ見た目ですからね、部員たちは「ふーん」という反応。この点Samさん主催の観望会に参加されていたガチの方々とはかなりの温度差があります。

なんとかその場を取り繕って、しばらくしたらいて座も昇って来ました。さっそく干潟星雲を見て見ます:

f:id:snct-astro:20200428224519j:plain

ここからもう少し東に移動して、M16とM17をみてみます

f:id:snct-astro:20200428225201j:plain

こんな感じで、楽しい夜を過ごしました。自粛疲れの部員達にとってもよい気分転換になったかもしれません。

 



 

 

 

デジカメ画像のRAW現像結果、一挙比較

天体写真においては、画像処理のどこかのタイミングでRawをtiffなどに変換します。その時に使っているソフトウェアによって、色や解像度に違いが生じるのではないか? これまでの経験からそんな気がしておりましたので、試しに一挙比較を行ってみることにいたしました。

サンプルはEOS6D + Sigma 105mm art (レンタル)で昨年に撮影していたアンタレス付近の一枚ものの撮って出し画像です。手持ちの全ての処理ソフト

  • Digital Photo Professional (DPP:Canon純正の画像処理ソフト)
  • Photo Shop の Camera Raw
  • Deep Sky Stacker (DSS)
  • Stella Imege ver. 8
  • Pixinsight

の5種について比較を行いました。公平に比較するためには慎重な調整が必要なのですが、今回は次のようにします:

  1. DPP:WBのみ調整、デフォルトでonになっているシャープ化処理をオフにして16bit tiff 出力。(この画像を比較基準とする ヒストグラムピークは120/255)
  2. PhotoShop:CameraRawでWBを調整、デフォルトでonになっているカラーノイズ処理とシャープネスはオフにして、16bit tiff出力。
  3. DSS:一枚の画像を形式的にスタック後、結果を"Embed Adjustments in the saved image but do not apply them" にチェックを入れて、16bit tiff出力、PSでWBのみ調整。
  4. SI:RGGBパターンでディベイヤー、オートストレッチにてWB調整後、レベル調整にて上下スライダの値の差が14bitでかつヒストグラムのピークが120/255になるように調整後、16bit tiff出力(SIは32bitで処理を行うためこの操作が必要、14bitとしたのは6DのADCが14bitだから)。
  5. PI:RGGBパターンでディベイヤー、Background neutralization でWBを調整後、レベル調整でヒストグラムのピークが120/255相当になるように上側スライダのみを調整して、結果を16bit tiff出力(PIも32bitで処理を行うためこの操作が必要)。

それぞれのtiffは、webに載せるために、PSでjpgに変換しています。ではそれぞれ見て見ましょう。

1. DPP
f:id:snct-astro:20200424230251j:plain


2. PhotoShop Camera RAW
f:id:snct-astro:20200424225033j:plain

 

3. Deep Sky Stacker (DSS)
f:id:snct-astro:20200424225124j:plain

 

4. Stella Image
f:id:snct-astro:20200424225206j:plain

 

5. Pixinsight
f:id:snct-astro:20200424225307j:plain

 

いかがでしょうか?

顧問の印象では、発色では

PS > DPP >>DSS>>PI >>>>> SI

と感じました。DSSは予想どおり、SIとPIについてはちょっとひどすぎるので、比較の仕方が悪い可能性もあります。

意外だったのは、解像度(感)にも差が出たことです。これも顧問の印象では、

DPP=PS=SI>PI>>>>>DSS

です。これも比較の仕方がわるいのか?

いままでPSで行なっていたRAW現像を、DPPに変更しても良いかもしれません。比較方法については議論の余地があります。気になる点がありましたら、コメントいただけると嬉しいです。

再処理2作

巷では新種の肺病が猖獗を極め、震災の頃に味わったような9年前の非日常の生活が、またやってきています。人々は「家に居よう」という呼びかけあい、都会は空洞のようになっているとか。日本人特有の同調圧力が功を奏した結果にしても、あらゆる活動に対して、自粛すべし、という論調がネットを中心に散見されるのには弱ったことだなあと思っています。と言いますのは、あえて批判を覚悟して申し上げます。夜、山の中の駐車場に出かけていって写真を撮って帰ってくるという我々の行為にはなんら問題はない、というのが私の意見です。

と思い切っ主張して見たものの天候がすぐれないので休日、過去写真の再処理を楽しん時間を潰しました。その成果を載せておきます。

 

1枚目は昨年の4月に撮影したアンタレス周辺。一枚目が再処理、二枚目が以前のバージョンです。

Rho Ophiuchi cloud complex (reprocessing)

Rho Ophiuchi cloud complex

処理の主な違いは、再処理ではコンポジット後にPIのABEでかぶり補正を行い、MaskedStretchとAsinhstretchを軽くかけたのち、Stanet++の星消し画像も活用しながらPSで処理しています。

 

次は1年と3ヶ月まえのオリオン大星雲です。これも、一枚目が再処理、二枚目が以前のバージョン。

The Orion nebula (reprocessing)

Orion Nebula

以前のバージョンでは、HDRなどを駆使して中心部のトラベジウムを解像させることが正義、と思い込んで居たフシがありまして、今回の再処理ではそのコダワリを捨てました。中心部を少し飛ばし気味に処理して、フワーッとまぶしい感じを出しました。あととうとう観念してDenoiseAIを購入し、適用しています


最強?SigmaFp + RASA 11" 準備編

次回の撮影では、満を辞しての組み合わせを試して見たいと思っております。我々の部が現在保有する機材の中での最強コンビ:世界最小フルサイズのSigmaFpと11inch RASAです(ただしSigmaFpは顧問の私物)。

本日、試験的に装着して見ました。

f:id:snct-astro:20200415174554j:plain

カメラの右手側がわずかに飛び出る程度で、小さな遮蔽でフルサイズを生かすことができます。

ためしに、この状態でフラットを取得して見ました(ただし、ピントは無限遠に合わせてません)

f:id:snct-astro:20200415174044j:plain

国際光器のサイトによると、11inch RASAのイメージーサークルはφ70mm。にしては周辺の光量の落ち込みが大きいかな。

 

このSigmaFpをRASAと組み合わせて使うにあたって、問題になるのが次の二つです。

  1. バリアングルがないので、ピント合わせに苦戦しそう。
  2. 撮影中、背面液晶がoffにならない。

1.について:RASAは一般的なシュミカセと同様に、鏡側にピントノブがついています。そのため、対物レンズ側に装着されたカメラの液晶を見ながらピントを調整できません。まあ、頑張ればなんとかなるのかもしれませんが、顧問はIO-DATAのHDMI->USB変換アダプタを使うことにしました:

f:id:snct-astro:20200415175227j:plain

カメラのHDMI出力をUSBに変換することで、一眼をUSBカメラとして使うことができます。パソコン側ではSharpCapなどを起動しておけば、簡単に認識してくれます。

2.については、来夏のファームウェアのアップデートで、長時間露光中のLCDオフ機能が実装されることを期待していました。しかしsigmaのプレスリリースを見る限り、望み薄です。仕方なく粗末なカバーを自作しました。

f:id:snct-astro:20200415222604j:plain

厚紙の裏側にアルミテープを貼り付けてあります。暗室で確認したところ、光の漏れはまったく無いようでした。

最初のターゲットは、青い馬星雲の予定です。果たしてどうなることか?