天文はかせ幕下

LRGB合成で,質の良いLを得るためにちょっと頑張る

タイトルが分かりにくいので,本題から入ります.今ここに

  • モノクロカメラで20枚 x 300s をスタックした画像 ”L”
  • カラーカメラで20枚 x 300s をスタックしたカラー画像 ”C”

があったとします(画像は丹羽さんがチリで撮影したものをお借りしました) 

どちらも同じ露光時間なわけですが,LRGB合成を実行するときに次の二つの方法をとったとします:

  1. そのままLRGB合成する
  2. カラー画像”C”からも輝度”Lc”を取り出して,”L””Lc”を加算平均して作った"L_ave"を新たなL画像としてLRGB合成する

どちらが結果がよくなるでしょうか? と言う問題を考えます.

1. は「カラーアシスタント方式」だとこの方法でやっているものと思われます.対して2. は誰しも考えそうなことで,カラー情報の取得にも露光時間をかけているわけだから,それを輝度にも組み入れて,すこしでもSNを上げたいという発想はあり得ます.しかし後者はあまり意味がないということをあちらこちらから聞いていました.通常はモノクロカメラで取得した輝度情報の方が,カラーカメラのそれよりもずっと質が高いからです.

ですが先日の記事

で,質の悪いデータも全体のSNの向上に寄与することがわかりました.なのでLRGB合成でも再度検証してみようというわけです

方法

要は,モノクロカメラの輝度情報”L”と,カラーカメラから取り出した輝度情報”Lc”を加算平均した"L_ave"が,もとの”L”を上回るかどうか? が問題です.まずは”L””Lc”をそれぞれ用意します.

”Lc”は,RGBWorkingSpaceでR:G:B=1:1:1と指定したカラー画像から出力しました.上の写真を比較すると,たしかに右の”Lc”のほうが画像の質は劣っています.念の為SubframeSelectorで画像を評価しました

PSF Signal Weightの値は,”L”が2.3にたいして,"Lc"が1.8でした.ほかのパラメータも総じて”Lc”が劣っている結果を算出しています.

この二つの画像をPSF Signal Weight の重みで加算平均します.これはImageIntegrasionにて,WeightsをPSF Signal Weightに指定しておくと勝手に計算してくれます(ただし,”Rawじゃないので値が正しくないかも”という警告はでます).画像は2枚なのでRejectionは無し.またImageIntegrationは最低3枚の画像が必要なので,同じファイルを2回づつ登録してエラーを避けてます.

結果.

まずは結果の画像です.

次は銀河部分の拡大

 

画像は目を皿にするとわずかな差があって,加算平均した結果が優れているように見えます.でもよくわからないので,再度PSF Signal Weightを計算してみます.比較のために,単純に足して2で割っただけの加算平均(右)も並べました.

目論見通りの結果になってます.どうやら今回の検証では,"L"に対して,質の劣る”Lc”を加算した方が結果が向上することがわかりました.また今回の例では,"PSF Signal Weight"を使った加算は,単純な加算をわずかに上回りました.

画像を見比べると,PSFSignalWeightの差ほどの違いが見えないのは,STFでの自動ストレッチで双方に異なる強さの処理ををやってしまっているからかもしれません.フェアな比較を思いついたら画像を差し替えます.SNは確かに差があるので,ストレッチをすると耐性などの違いが出てくるように思います.

 

また,まだ確実に確かめていないので後日まとめる予定ですが,"L"に対して"Lc"の画像がどんなに質が悪くても,適切なWeightを決めて加算平均しさえすれば,必ずSNを向上させることができて,しかもそのWeightの値には最適値が存在しそうです.

 

最後に,他のデータも載せておきます.