天文はかせ幕下

望遠鏡で見た銀河の様子を再現する

今週末には,天文部プラネタリウム班のイベントがあります。顧問の私も,おてつだいとして展示物の準備などしております。

その過程で表題の件,銀河を望遠鏡で見たときのあの淡くぼんやりしたイメージを画像として使いたいなと思い至りました。

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撮って出しのM33

これは昨年に撮影していた,M33の写真です。当然ながら眼視ではこんな風には見えません。これをPhotoShopで加工して,眼視のイメージに近づけることはできないだろうか?こんな風に処理してみました・・・普段の画像処理の全くの正反対です:

  • レベル補正でダークスライダを持ち上げ,中央スライダを下げて画面を暗くする。
  • 星マスクで星を保護した上で,銀河にガウスぼかしをかけて,ディティールを潰す。
  • さらに彩度を下げて,色をモノクロに近づける。

そうして出来上がったのが,下の画像です:

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実際は,もっと淡いかなー。以前,標高1100mの蔵王山駐車場にて,30cmのドブソニアンで見せてもらったM33が,だいたいこんな感じだったような。ぎりぎり,銀河の腕がS字に分解して見えていたのを覚えていますした。わりと,よく再現できて満足。

M106周辺の星野写真

「星野写真」という言葉を聞かなくなった気がします。

星野という言葉の意味も(読み方すら*1)実は判然としないのですが、それが文字通り「恒星の野原」といった意味合いであるとしたら、おそらく天体写真がデジタル中心になってから、淡い星雲や分子雲が注意の的になって、星そのものは脇役に追いやられてしまったからなのかなと考えます。

先日、はやま湖でSeagull星雲が沈んだ後の空き時間で撮影しました。250mmのレンズでのM106の周辺の様子です。こういう写真を「星野写真」と呼んでいいのでしょうか。

M106 and the surroundings

Date: 13 Jan. 2019, 25:30~
Location: Iidate, Fukushima
Camera: Canon 6D
Optics: Mamiya Apo Sekor 250mm F4.5
Exposure: 300sec. x 8 (ISO2500)
Guide: Kenko SEII with PHD2

もしお時間がありましたら、リンク先に飛んでいただいて、ピクセル等倍でご覧ください。この周辺には実に無数の銀河が見えていることがわかると思います。WikiSkyを参考にして、カタログ番号を書き込んでみました:

M106 and the surroundings with the galaxy numbers

これほど無数に見える銀河の中に、はたしてどれほどの知的生命が存在していて、そこで栄えている文明のなかで、どんな悲喜劇の歴史が展開されているのだろう?なんて考えると本当に不思議な気分になります。

*1:せいや」それとも「せいの」、まさか「ほしの」だったりして

SeagullとThor's Helmet星雲@はやま湖

前置き

曇ることを覚悟して撮影に行かないと,良いシーイングには恵まれません。というのは大気の状態が安定しているときは,雲も発生しやすいことが多いからです。反対に冬場の安定した晴れ間では,たいてい星はパタパタと瞬いています。

大気の状態が悪ければ、いくら空が綺麗に晴れていても良い結果にはならないことは明らかで、それでも長焦点撮影の重い機材を背負って、曇り覚悟で撮影に出かけるというのはなんとも辛い話です。

要は毎夜々々,命を削って遠征撮影を重ねなければ良い写真は撮れないということですね。顧問は最近,福島県の山中に土地を買って,私設の観測所を設けることを妄想しておりますよ。

SeagullとThor's Helmet星雲

さて,12日の夜は曇りの予報でした。

GPVよりも,かのーぷすさんの経験を信じて撮影に行ったところ,夜半から綺麗に晴れました。シーイングも良かったみたい。ところが気合の足りない私は,250mmのレンズしか持ってきていませんでした。

「MT-200でM81を撮影したかった・・」

と後悔しながら,カモメ(Seagull)星雲とトールのメット星雲がひとつに納まる画角で撮影しました*1

seagull nebula and Thor's Helmet

Date: 13 Jan. 2019, 24:00~
Location: Iidate, Fukushima
Camera: Canon 6D
Optics: Mamiya Apo Sekor 250mm F4.5
Exposure: 300sec. x 12 (ISO2500)
Guide: Kenko SEII with PHD2, dithering,

覚書:

  • 先日の記事にも書いた通り,気温が低かったせいでApo-Sekor250mmレンズのピントが出ていません。わずかに「前ピン」です。おそらくそのせいで強調していくと,星に緑のハロが目立ってきました。PhotoShopのCameraRawでかなりを取り除きましたが,それでもすこし残っていて,全体的に星像が汚く感じます。とくにカモメの「胸」のあたりは,星の周辺が落ち窪んでみえています。星マスクの使い方が悪い時,よくこういう結果になりますが,この写真に限って言えば強調する前から落ち窪んでいた。ピンズレのせいだと思いたい。
  • はやま湖は南に高い林があって,南中高度の低いこの領域は撮影しにくい。実は最後の1枚は,写真の右側1割ほどが木々に被っていました。Kappa-Sigmaでスタックしたら消えたので,そのフレームも使っています。あと3メートル東に陣取れば,あと5枚は撮影できたのに。
  • Seagull星雲の周辺の青は,60Daよりもよく出たような気がします。
  • あいかわらず,赤い星雲がマゼンダに傾くのはなんでだろう。上の写真では色相を赤に振っている。

 

*1:カノープスさんは800mmの反射でM106を撮影し,良い結果だったみたい。やっぱりシーイングが安定していたのですね。

Mamiya-EOSマウントアダプタに問題

すっかり気に入ってしまった,MamiyaのApo-Sekorレンズ。現在は

  • Apo-Sekor 250mm F4.5
  • Apo-Sekor 500mm F6

の2台で撮影しています。ところがここにきて中〜大くらいの問題が発覚しました。冬場にはいって,なぜか250mmレンズの無限遠にピントが出たり出なかったりするのです(500mmの方は問題なし)。

原因は気温とEOSカメラのEFマウントと接続するためのアダプタにあるようだとわかりました。

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Mamiya-EOS間のマウント変換アダプタ。フォーカスのためのヘリコロイド機構が付いている

このアダプタはヘリコロイドがついていて,Apo-SekorのRZレンズの場合は下の写真の"RZ∞"よりもほんのちょっと左側で無限遠が出ていました。

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気温が下がってくると,おそらくレンズの熱収縮のために,その位置がだんだんと右側に移動するようです。ところがこのヘリコロイド,Nikonのオールドレンズにように"RZ∞"でカチッと止まってしまいます。先日の撮影は−3℃と冷え込んで,とうとうピント位置が"RZ∞"の右側に達してしまいました。あともうちょっとというところで無限遠が出ません。

 

昼間のテストでは,遠景にピントが出ることを確認して,夜になっていざ撮影に入ると気温が違うのでピントが合わない,なんて何回か泣かされました。

 

このアダプタ,アマゾンだと3万円以上と高額なのですが,個体差なのでしょうか?他の皆さん(といっても日本中でも数えるほどしかいない?)のアダプタではどうなのでしょうか?よければ教えてください。

 

しし座銀河団

先日、5日の撮影では、ガイドなどもうまく行っていて余裕があったので、スカイメモR+旧Sigma 70mm Macroの組み合わせで、いろいろ撮影して遊んでました。夜半過ぎに高く登って来たしし座周辺を撮影して、写り込んだ銀河の名前を書き込んで見ました。こんな写真も楽しいかもです。

"Leo" cluster of galaxies

一部の銀河はあまりに小さくてわかり難いとおもいます。ちょうどNGCの”N”の左下に銀河が位置するように、文字を入れています。

このレンズはジャスピンで青ハロが出ます。画像が眠くなるのを我慢して、ちょっとピントをずらせば、ハロが気にならないくらいまで抑えることができます。それでも十分シャープです。

Mamaya Apo-sekor 500mmのファーストライト

「来年のお正月は新月が重なっていますから、一度撮影にまいりませう」

年末から天文部OBのアベくんとの約束があって、5日の夜に神割崎に撮影に行って来ました。顧問の私は、昨年末にボーナスで追加購入していたMamiyaのApo-sekor 500mmのファーストライト、アベ氏はε200で馬頭星雲を撮影する予定です。西風が比較的強く、また季節特有の薄い雪雲が奥羽山脈の方にかかっていて、いろいろ心配な夜でした。

 Mamaya Apo-sekor 500mmのテスト

いぜん、ヤフオクで錯乱購入したMamiyaのApo-sekor 250mmF4.5の性能-価格比において極めてご機嫌であったのに気を良くして(Mamiya APO-Sekor のファーストライト - 天文はかせ序二段(仮))、同系の500mm F6レンズを購入しておりました、私は。

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ヤフオクで10万円ちょっとでした(2018年11月時点)。250mmF4.5が2万円ちょっとだったのに比べると張りますが、私は価格が3倍ちかいTakahashiのFSQ85ED相当の性能をこのレンズに期待していますよ*1

まずは一枚ものの撮って出し写真です:

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レンズ:Mama Apo-sekor 500mmF6開放, カメラ:EOS6D(HKIR),露光データ:360秒露光 ISO1600, CameraRawでホワイトバランスのみ調整

中心と周辺像:

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300pxを切り出し

まず、周辺減光がすごく少ないです。250mmでは若干の色収差があって星のまわりが青く滲むのですが、500mmではそれが皆無で、そのへんは公称されている性能通り。星像は周辺部でコマ収差(?)があって星がすこしゆがんでみえますね。でもこれはかなりいいんで内科医?勝手ながらライバルとみなしているFSQ-85ED+フラットナーの中心と周辺像は、Nature-shopKyoeiのサイトで見ることができます。ご興味があれば上の写真と比べて見てください。ぱっと見の印象では、周辺減光はMamiyaのほうが上、周辺の星像はさすがにFSQのほうが上でしょうか。

コーン星雲、クリスマスツリー星団の周辺

こんかい撮影した、作品です:

cone nebula and Christmas tree cluster

Date: 2018.1.5 23:30~25:30

Camera: CanonEOS 6D

Optics: Mamiya Apo-sekor 500mm F6

Guide: Kenko SEII, PHD2 guiding

Exposure: 360sec. x 25 flames (ISO3600), ダーク補正なし、ディザリング撮影あり
(リンク先のほうが画像がシャープです)

覚書

  • Mamiya RZレンズ用のfotodiox製マウントアダプタは、レンズ側に「グッと」押し付けながら装着しないと、ギリギリで無限遠が出ないことがあるので気をつける。(間違い)
  • HKIR改造の6Dは、ライブビューを表示しながらシャッターを押すとひどい被りが出る。これはハヤタカメララボのサイトにもちゃんと書いてあった。
  • 今回の撮影ではアベ氏がNJP赤道儀を利用したが、これまでよく経験していた赤緯方向のガイドの暴れは、モーターのギアを強く押し付けすぎであったことが、原因と思われる。これはかなり微妙な調整なのでよくよく気をつける。
  • 冬場の撮影は、バッテリーがへたるのが早い。バッテリーだけ車の中におけるようにするとか工夫が必要かも。

*1:Apo-Sekor 500mmの元々の定価は60万近かったそうなので、そんなに無謀な期待ではない?

2018年の撮り納めはバラ星雲

年末には寒波が訪れて、東北地方も随分と冷え込みました。そんな時期に「星の撮影に行ってまいります」なんて言うと、妻にも「は?まじすか?」みたいな顔をされます。でも冬の撮影が寒いなんてことは初めからわかりきったことです。

12月30日の夕刻。空は綺麗に晴れ渡って空気も冷え切っていました。出掛けぎわを近所のHさんに見られてしまって。撮影に行くことを告げると、やっぱり「まじすか?大丈夫ですか?」といった反応でした。

バラ星雲のモザイク撮影

以前の夏合宿で、アンドロメダ銀河を800mmのε200で4枚のモザイク撮影をしたのが(M31 | Flickr)非常に良い結果になっていたので、冬にはバラ星雲を同じ方法で撮影したいなと考えていました。しかし今回はそれほど上手く行きませんでした。操作に慣れていないMgenでのガイドがイマイチだったのと、急激な冷え込みによる鏡筒の熱収縮でピントがずれたにもかかわらず、それを修正する余裕がなかったのが原因でした。シーイングも悪くて星がボッテリしてます。それでもなんとか画像を仕上げました。

The Rosette Nebula

バラ星雲
日時:2018年12月30日 22:00~26:00ころ
場所:福島県原町フラワーランド付近
カメラ:EOS 60Da
鏡筒:タカハシ ε200(800mm F4)
露光:ISO1600, 360sec. x 5flames (4枚モザイク)
ガイド:Mgen

この星雲は、見方によってはドクロにも見えるわけですが、バラと捉えるかドクロとみるかで構図が変わってくるような気がします。

備忘録

今回はMGENでのガイド撮影でトラブル。モザイク撮影で撮影範囲を変える場合、PHD2ならば、一度ガイドを切って筒先を動かしたのちに再度ガイド星を選び直せばそのままオートガイドが再開できる。しかしMGENではそれが上手くいかなかった。いろいろバタバタしたのち、キャリブレーションをやり直すとガイドが安定するようでした。MGENのオートガイドのアルゴリズムは優れているとのことなんですが、このへんの融通は効きにくいのかもしれません。

もう一つ、MGENでディザ撮影をするときの"wait time"は60秒くらいの長めに設定しておいたほうがよさそう。