天文はかせ幕下

やり過ぎ感?アンタレス付近

顧問です。

5年生の部員たちが卒業していきました。このブログの更新も、しばらくは私の駄文だけになっていく予定です。よろしくお付き合いください。

少し前のこと、顧問の自宅近所にHさんが引っ越してきました。子供が同年代のこともあって親しくなり、カメラの趣味も共通。そこで今回いっしょに撮影してきました。私が強引に誘ったという感じもあります

早春の時期、撮影対象は薄明前に昇る天の川です。東の空が暗くて見晴らしの取れる宇田川湖に行ってきました。宇田川湖というのは、以前、部員のピロッシーに教えてもらった場所で、福島と宮城の県境に位置するダム湖です。はやま湖にくらべて少し標高が高く、南相馬市から離れていることから、東が暗いだろうと予想しました。湖の北岸には撮影に適した公園があります。

日付が変わった1時に名取を出発。相馬ICで高速を降りて、県道からダム湖へ向かう細道へ曲がると急に周囲が暗くなります。ハンドルを握るHさんが、ビクリと体を震わせました。

「どうしました?」
「いや、カーブミラーのところに首をくくっている人影が見えた気がして・・」
「え?」
「いや、気のせいです。木のツルが絡まっていただけですよ」
「・・・」

このまえ、霊山に出かけた時も、ピロッシーが

「宇田川湖は確実にでますよ。声が聞こえるんですよ。そうして、湖に近づくと足首を触られるんですよ。」

なんて言っていました。

たわごとはこの辺にして、今回はついに、顧問も「アンタレス付近」に手を出してしまいました。アンタレスはさそり座の一等星。その周辺は全天一と言って良いほど賑やかで、球状星団M4をはじめ、赤・青・黄の散光(反射?)星雲と分子雲が広がっています。画像処理が難しいので、素人が手を出してはイカンとこれまで敬遠してきました。

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2018/3/24  さそり座アンタレスの周辺
カメラ:Canon 60Da 
レンズ:ApoSonner 135mm F2->2.8
露光:ISO1600 90sec x 22
マウント:SkyMemoR ノータッチガイド
画像処理:DSSでフラット・ダーク・スタック処理。PhotoShopで強調&ノイズ処理

この領域、カラフルな上に分子雲の広がりが大きいので、背景をニュートラルグレーにするのが難しい。 画像処理を繰り返すうちに感覚がマヒして、ついつい厚化粧をしてしまいがちです。どうでしょうか・・

 

HさんがD810で撮影した天の川のデータをもらって、こちらも処理して見ました。フラット補正をしていないのと、光害カブリの影響で処理が難しかったですが、さすが良いカメラとレンズです。

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2018/3/24  天の川
カメラ:Nikon D810
レンズ:Nikkor AF-S 24-70mm F2.8E->24mm 開放
露光:ISO1600 90sec  1枚
マウント:Vixen ポラリエ ノータッチガイド
画像処理:PhotoShopで強調&ノイズ処理

フラット撮影でフードをつけるべきか?

事の起こり

これまで、フラット画像の取得にあたっては、もっぱら液晶画面を使っていました。その方法を概説しますと、まず写真1のようにカメラを液晶画面に向けます。

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写真1:従来のフラット撮影の様子

ここで気をつけるべき事は:

  • フォーカス・絞り・フードの取り付けなど、ライトフレーム撮影時と同じ状況を再現すること
  • RGBのヒストグラムのピークが、撮影したライトフレームに一致するよう、液晶画面の背景色と輝度を調整すること
  • 液晶画面の走査速度が影響しないよう、適度に遅いシャッタースピードをとること

です。これまでは、この方法でフラット補正に成功していました。

 しかしそれは、APS-Cのセンサーを使っている限りでの話でした。先日、部員のアベがフルサイズカメラEOS6Dで撮影を行いました。画像処理を行なってみると全くフラット補正がうまくいかないではありませんか!フルサイズセンサーを撮影に使うのは、本校の天文部としては初めての経験でした。これまでは、単にAPS-Cセンサーを使っていたから、周辺減光が目立っていなかったからだったのかもしれません。自分たちの未熟さを思い知りました・・・

従来の方法だと・・・

EOS6Dで撮影した画像に対して、上に紹介した従来の方法でフラット補正を行うと、写真2のように過剰補正になってしまいます。

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写真2:従来のフラット補正で得られた画像。

なんでだろうか? 液晶を明るくしてフラット取得時のシャッタースピードを速くしてみたり、部屋を真っ暗にして周辺の明かりが影響しないようにしてみたり、ピントを調節してみたりといろいろ試しましたが、すべて結果は同じです。

フードが原因

最終的には「フード内壁の光の反射が原因である」という結論に達しました。つまり写真3のようにフードを外した状態で、部屋を真っ暗にしてフラット画像を撮影してみたところ、写真4のようにフラット補正がうまくいきました。

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写真3:フラット撮影時にフードをつけない

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写真4:フラットが合った!

これは考えてみれば当然の結果と言えるかもしれません。フードには迷光対策が施されているとはいえ、カメラを液晶画面に押し当てれば、その内壁はある程度の光を反射します(写真5)。その反射光は、夜空にカメラを向けている時に比べれば、圧倒的い明るいはずです。それによって、フラット画像の中心付近が本来より明るくなってしまったとしたら、過剰なフラット補正になってしまいます。

有機パネルや青空を使ったフラット撮影においても、ライトフレームの撮影時に比べて格段に明るい状況で撮影している以上、フードの内側での反射の影響は無視できないように思います。

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写真5:フード内壁の光の反射がフラット画像に影響する?

ちょっと心配なのは、「フラット撮影時には、フードと取り外せ」といった話は、これまで寡聞にして聞いたことがない点です。とすると、多くの方はフルサイズセンサーを使っている場合でも、よく知られた方法でフラット補正に成功しているはずで、実際の所はどうなのかな?と思っている次第です。

 

3月観測会報告

こんにちは,すずりょうです.ついこないだ入学したと思ったら,高専での五年間の生活が終わってしまいました.ここで5つも歳をとったのですね.時の流れというのは早いものです.

さて,この春高専を無事に卒業することができた自分や阿部さんにとってラストの観測に先日行ってまいりました.場所は霊山こどもの村駐車場です.最近自分はあまり観測に行けていませんでしたので,久々の観測となりました.天気は快晴!風もなく観測日和でした.

いつものスカイメモで撮影を行いました.顧問や阿部さんは過去のブログの通りうまくいかなくて悔しそうにしておりますが,自分は写真を撮りまくりました.今回は4種類です!一日一天体の掟を大いに破っております笑

 

写真を見ていきますが,今回はあまり時間がなかったことと,Photoshopを使い慣れていないため,あまり出来がよくないです...データは顧問が持っているので,ぜひ改めて画像処理をしていただければと思います!

 

はじめに,ぎょしゃ座の中を撮影しました.ここには散光星雲があります.

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左下に散光星雲がありますが,強調できてませんね...撮影時のピント合わせはだいぶできるようになったと勝手に思っております笑

 

続いて,M51子持ち銀河です.レンズに限りがあったため画像処理後に拡大したのが2枚目になります.

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M101回転花火銀河です.顧問も今回撮影していましたね.上記のM51とおなじ一枚に入れようとしましたが,端と端になってしまうので今回は別々にしました.

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ここまで撮影して午前2:30頃でしたかね(うろ覚え)このくらいの時間になると,東の空から天の川が昇ってきます.春ですね.一年前,はじめて神割崎でみた天の川を思い出します.天の川の中でもM8干潟星雲とM20三裂星雲が入っているところを撮りました.

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昨年5月の白石での撮影時にもこの画角でしたね.

 

これまで一年半ほど天文部で活動し,天体写真の魅力に取りつかれたり,プラネタリウム製作を行ったりと,有意義な時間の過ごし方を覚えてしまいました.あぁ...もっと写真を撮ったり画像処理して素敵な写真を作りたい...と思っているので,いつかは観測の機材なんかも揃えて撮影にいきたいものです.

顧問をはじめ天文部員の皆さんにはお世話になりました.また,すずりょうのブログを見てくださった皆さんありがとうございました.これからも仙台高専天文部の活動を応援し,このブログを読者としてみていきます.それでは,またいつかお会いしましょう!

 

...夏合宿,行きたいなぁ...(独り言)

参った参ったマイケル・ジャクソン。困った困ったこまどり姉妹。

顧問です。表題のオヤジギャグですが、これは私が大学院の学生であった頃の指導教官Y教授の口癖です。

「はぁー、参った参ったマイケルジャクソン・・・」

と往年の柳家喜多八が高座に上がるときのような脱力感で呟きながら、Y教授は大学院生の研究室にやって来ます。何に参っているのかは、こちらからは尋ねません。ひととおり研究のディスカッションをして、うまいアイデアが出ずに煮詰まると

「はあー、困った困ったこまどり姉妹・・・」

といって去っていくのでした。

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さておき、アベからの報告がありましたように、3月12日に霊山こどもの村へ撮影に行って来ました。今回の撮影も、表題のような困った結果でした。

今回は、4月から東北大学の大学院へ進学するアベ、と某旅客鉄道会社に就職が決まったスズリョウの参加する最後の観測会というわけです。普段はアホなことばっかりブログに書いてるわりに、二人とも優秀だったのですねぇ。顧問としては、できれば二人とも留年してもらって、天文部の活動を続けて欲しかったです。

まずは、アベが以前より撮影したいと願っていた「トールのかぶと星雲(NGC2359)」を日没後に狙い、そのあとM101へ移る予定です。

NGC2359をISO1600の6分露光で撮影。なんだがガイドエラーが大きく出ます。これは後で、赤緯軸ギアのイモネジの緩みが原因であったことがわかりました。この失敗は2度目です。どうもNJP赤道儀クラッチを操作するとイモネジが緩むことが多いみたいです。クラッチは触らないことにしましょう。それでもまともなライトフレームを12枚くらい確保できたので、その成果は後ほどアベより報告されると思います。

 さらなるガイドエラー

この季節、夜が更けてくると北斗七星が北に高く登って来ます。天頂付近のM101の撮影をします。するとこんなガイドエラーが!

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PHD2の青いグラフに注目ください。これはガイド星の赤経方向のエラー量を表していて、綺麗に周期的なエラーが出ているのがわかります。周期は数分程度で、この状態が1時間以上は続いたでしょうか?撮影結果は、星が強く流れていて使い物になりません。何をしてもこの周期的エラーが消えませんでした。万策尽きて疲れ果てたとき、オートガイダーから出ているケーブルが赤道儀の背中に乗っかっているのに気づきました。なんの気もなしに、そのケーブルを動かして宙ぶらりんの状態にしてあげると、なんとガイドエラーが解消したではありませんか!

そのあと、7枚ほど点像のフレームを確保。やがて子午線ごえで鏡筒の先端が三脚に干渉して、撮影終了。結果はこちら

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2018/3/12  M101 回転花火銀河
カメラ:Canon 60Da 
鏡筒:タカハシMT−200(1200mmF6)with MPCCコマコレクター 
露光:ISO320 360sec x 7
マウント:NJP赤道儀 PHD2ガイディング
画像処理:DSSでフラット・ダーク・スタック処理。PhotoShopで強調&ノイズ処理

せめて15枚くらい確保できればと思うともったいない結果です。人工衛星の軌跡を消す気力が起こりませんでした。久しぶりにMT−200での撮影で、焦点距離の長い鏡筒を使うことの難しさを痛感しました。あとこの鏡筒だと、なんだか星の十字回折像が綺麗に出ませんね。星の色もいまいちです。

ガイドケーブルのStick-Slip??

うえのガイドエラーの原因について。もしケーブルを動かしたことによってエラーが解消したとするなら、ガイドケーブルのstick-slip振動がオートガイダーに伝わったためと見ています。つまり、赤道儀の背中に乗っかっていたケーブルが、赤経方向の運動で少しずつ引っ張られる。それが限界に達するとほんの僅かに「ズルッ」と動き、それを繰り返すわけです。ガイドケーブルからの振動が、赤経だけのエラーとして現れていた理由は不明です。

ともかく、追尾によってケーブルが引っ張られたりしないよう、固定の方法を工夫するのは当然やるべきことであって、今回の失敗はとても教訓になりました。

 

 

 

アンタレス付近

DSSの不調の原因

先日の記事にDSSが不調である旨を書きました。すぐに顧問からコメントが来て、不調の原因が明らかになりました。

DSSでスタッキングする際に、"Stacking parameters"の"alignment"がデフォルトではAutoになっているのですがこれが原因のようです。これをbilinearに変更することで正常にスタックできました。

ということで、DSSでスタック後GIMP2.9にて画像処理をしました。

 

Photo Data
  • Location; 霊山こどもの村(福島県伊達市霊山)
  • Takahashi MT200 on NJP
  • Canon 6D, ISO 3200
  • Light Frames; 360 sec×6 = 36 min(-5℃~-3℃)
  • Flat Frames; 21

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んー、やや周辺減光が強くで出ますね。また、アンタレス付近は極彩色な散光星雲が有名かと思いますが、無改造の6Dではやはり映らないようです。

ただ、ダークなしで相当な強調処理をしたにも関わらず、6Dで撮影したこの写真ではノイズが目立ちません。APS-CのISO3200で撮影したならばもっとノイズは目立つように思いますが気のせいでしょうか。

 

DSSにおける空間の歪み

どうも、アベです

なんか物々しいタイトルですが単にDSSが不調なだけです。

 

今週の月曜日に福島県伊達市霊山にて最後の観測会に行ってきました。

気象条件は良かったものの、道に迷ったり機材の不調など、トラブル続きの観測会でした。

やれやれ。やっとこさ撮った写真を画像処理しようとしたらここでもトラブルが現れます。

普段、複数枚撮影した天体写真をDeepSkyStackerにてスタックするのですが、どうもうまく行きません。

↓これが例の写真。

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 はて、どうしたものでしょうか。この写真、右上では正常にスタッキングされているかのように見えますが左下では完全にぶれています。そしてスタッキングの際に何かしらの理由で画面下部がゆがむことも見て取れます。

スタッキングの設定を変更してみても直りませんし、処理するPCを替えても直りません。困ったものです。DSSには空間を歪ませる機能でもあるのでしょうね。

 

ところで、空間の歪みと宇宙(重力)と言えば相対性理論相対性理論に関する研究で著名なスティーブン・ホーキング氏が本日お亡くなりになったそうです。小中学生のころ、相対性理論量子力学の話に憧れ理系を選択した私にとっては悲しいお知らせです。まあ、今となっては量子力学相対性理論もチンプンカンプンなのですが。

ガリレイの命日に生まれ、アインシュタインの誕生日に亡くなったそうです。

ご冥福を…。

 

 

↓参考までに上の写真の設定。

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メモ

すばる望遠鏡超広視野主焦点カメラ(HSC)の撮影データが

SSP - hscMap -

で公開されていますね。まだ全天の一部ですが、凄まじい解像度の画像を見ることができます。そのデータを見る新しい視点を持っていさえすれば、論文を書けるとうな新発見もあり得るということですが、一体どんな「新しい視点」があるのでしょうね。