天文はかせ幕下

学園祭の夜に遠征観測

月末の土日は本校の学園祭でした。天文部でも、片隅にブースを確保してささやかな展示を行っておりました。そちらは特に盛り上がりもなく終了。

片付けの終わった後、顧問は撮影に行ってきました。部員は誘っても誰もついてこなかったというのは、きっと学祭の打ち上げなどあったのでしょう。撮影地の神割埼にはそーなのかー氏とカノープス氏が先着されてました。最近は天候が悪いので、みなさん平日前でもとても熱心です。

M31の2x2モザイク+HDR

予定は、ASI294MC-ProとRASA11の組み合わせでM31の撮影と、翌々日の観望会のための電視の練習。まずは撮影。時折の薄雲の通過に悩まされつつ、4分x10枚+30秒x10枚の2x2モザイクHDRを何とか完走できました。gainは200。このCMOSカメラのフラット補正はいまだに思い通りにならなくて、モザイク合成が激烈に面倒なんですが、なんとか矛盾なくつなげることができました。けっかはこんな感じ:

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date: Oct. 27th, 2019
location: Kamiwari-saki, Miyagi, Japan
optics: RASA11 650mm F2.2
camera: ASI-294Mc pro
mount: Takahashi NJP with MGEN guide
Exposure:gain220, brightness 36, 240sec. x 10flames + 30sec. x 10 flames, 2x2 mozaic
sensor temp.:-10 deg.

うーん、色が出ない。以前、60Da+ε200で撮影したときは、右上当たりの青い輝星とか、暗黒隊の赤っぽさとかもっと鮮やかだったですが、ASI294MCとRASA11のこの結果は、何とも色に乏しい。暗黒帯も完全にグレーです。fitsデータの処理過程に、色を損失してしまうエラーを犯してしまっているのか?

あと、HDRは1段か2段くらい別の露光データを加えないと、中心まで滑らかに繋げられないですね。

画像処理をしているうちにイライラしてきて、ついカッとなって強引な反則プレーで色を出してしまいました。けっかはこんな感じ:

M31 The andromeda Galaxy

トーンカーブ調整で、輝度別に中心部分はGとRを持ち上げて、腕の部分はBを強調してから、彩度を上げた結果です。しかしこれでは塗り絵ですね、今は後悔してます(といいつつFlickrにはこちらをアップしてしまうのです)。

それにしても、ASI294MCは、感度は申し分ないのですが色表現が乏しいと感じるのは、処理が悪いせいなのか、もともとのカメラの性質なのか?裏面照射センサーを採用した昔のソニーのカメラWX1は、発色が冴えなかったという話も合って、どうなのかなー。もう少し苦しんで、試行錯誤するしかないですかね。

 

 

 

 

学内電視観望会を行いました。

前置き

今年度から,中谷財団の助成を受けて地域で電視観望を行うプロジェクトを進めておりますが,最近は天候がすごぶる悪く,計画するたびに台風やら雨やらで中止に追い込まれておりました。

先日までで,合計2回の観望会が中止になり,来月の3日に計画していた福島県相馬市での観望会も,当地の洪水被害のため,天候に関係なく中止にせざるを得なくなってしまっております。

でも,助成金をいただいている以上,とにかく何かしなければなりません。そこで,まずは足元の仙台高専のキャンパス内で観望会を開こうということになりまして,学内にチラシを貼るなどしてアナウンスしていたのに,また雨で中止・・・。

もうやってられん!仕方がないので事前アナウンスは諦め,直前にGPV見て,晴れるなら急遽の観望会を開き,集まれる人だけで集まろうという作戦で,昨日,ようやく観望会にこぎつけましたよ。

観望会の様子

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部員がハロウィーンのかぼちゃ照明を用意してくれました。

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M31を導入する顧問とSくん。

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集まったみんなでM27を観望しております。

今回電視観望した対象たち

記録のために,今回,学内キャンパスでの電子観望で得られた画像のキャプチャを載せておきます:

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まずは50mmレンズでのデネブ付近。15秒の露光でライブスタック。写野が広いと,光害カブリが結構きついです。IdasのNBフィルター使用

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このM31は神割崎でのライブスタックですが,学内でもこれの6割程度の質感で見えておりました。

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そしてM27,中心部のトリミング。5.6秒露光のライブスタックで,NBフィルターは入れ忘れていたけど,綺麗に映りました。これが一番ウケが良かったです。

 

あ,言い忘れてましたが,今回は名取・岩沼地域の情報誌「なうてぃ」からの取材がありまして,近く掲載される予定です。年末の財団への報告会でもネタにできるので助かりました。 

月のさつえい

先日の夕刻,部長のヒヨリくん達と学校の屋上に上って土星を撮影してみましたら,あまりに大気の状態がふ悪くてピントが合わせられない。仕方がないので,対象を月に切り替えました。

Moon: creter "Copernicus"

Rのフィルターを通してモノクロ撮影したクレーター「コペルニクス」の周辺です。最悪のシーイングだったのに,それなりにシャープに写るものですね。激しい隕石の衝突の様子で,月の岩石が四方に飛び散っている様子がよくわかります。

部員達もAutoStackkert!やRegistaxの操作を覚えましたので,来月の上弦の時期にはモザイクで月の高解像度写真でも作ってみましょう。

 

台風一過のIC1805 & IC1848

10月4日、金曜日。

台風から変わった温帯低気圧が、夕刻に東北南部を通過していきました。日没後は「西高東低」の気圧配置が発生して、太平洋側は晴れの予報。

とはいえ、台風です。

普通だったらお家でおとなしくしているのが常識人というもの。しかし私は変態! 21時に自宅を出発して、福島県のはやま湖に出かけて来ましたよ。家族も

「キヲツケテネー(棒読み)」

と暖かく見送ってくれました。

本降りの雨の中、機材を車に詰め込みます。そしてワイパーを動かしながら南進。

「いったい何やってんだ俺は?本当に晴れるのか?」

なんて、こんな遠征は初めて。

はやま湖に到着。すでに星がちらほら見えていて、急速に雲が切れつつありました。先着(!)のカノープス氏と空を見上げていましたら、じきに快晴となりました。しかも不思議と無風。「大勝利ですなあ」と各々撮影を開始しました。

ハート&ソウル星雲

250mmのMamiya Apo-sekorで表題のハート&ソウル星雲をモザイク撮影するのが今回の狙い。しばらくして暴風状態になりましたが、それは想定内*1。250mm程度の焦点距離ならガイドにはさほど影響ありませんでした。60DaとKissX5のツインで「ハート」を30枚撮影した後、「ソウル」を14枚撮影した時点で曇り。即座に撤収して帰宅した次第でした。

The Heart and Soul nebulae ver2

Date: 4th Oct. 2019
Location: iidate, Fukushima
Camera: Canon EOS 60Da, EOS Kiss X5 twin
Optics: Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5
Exposure: 300sec. x 30 and 300sec. x 14(ISO1600), mozaic
Guide: Kenko SEII, PHD2 guiding

ハートとソウルにノイズレベルの差はありますけれど、モザイクしてしまえば結果的にあまりよくわかりませんでした。今回は、画像処理の進め方に関して、2点ほど進歩がありました。機会があればまたまとめて書きたいと思います。

 

 

 

*1:というか、それまで無風だったのが想定外

最近のメディア情報(名取天文台関連)

今年度から、我々の天文部から分離・独立をはかった「名取天文台」。

上部にもtwitterのリンクを貼ってますが、ちょっと紹介しておきますね。まず、今月号の星ナビにて、先日のプラネタリウム展示会の様子が2ページで紹介されています。これは「天文リフレクションズ」の紹介記事を引用しておきます:

上の記事の中段あたりに紹介されています。

もう一つ、名取市の地域ラジオ「なとらじ 80.1MHz」にて、毎週木曜21:00〜、30分のラジオ番組「名取天文台のCosmo Cafe」がスタートしておるようです(これにはちょっとビックリしました)。ネット上で公式のサイトを見つけることができず、顧問の把握している情報源はTwitterのみです*1。 

 

 4月から、顧問の私は名取天文台の台員達の活動に、口出しをしていませんが、彼らはすっかり有名になりました。たまに天文部が外部のイベントに参加しても

(お前らじゃなくて)名取天文台の人たちは来てないのですか?」

と問われ、毎回、事情を説明しなければならない始末です。

一方、すでに2回のイベントを実施し、名取市近郊では「プラネタリウム観望」の需要はすでに掘り尽くされている可能性もあります。今後はさらに活動地域を広げていくことになるのかなー、と他人事のように想像していますが、彼らの次のアイデアに期待しましょう。

 

 

*1:ちなみに先週の放送は、ラジオの周波数を合わせていたのですけど、子供を寝かしつける時間帯と重なってしまい、聞き逃してしまいました。

土星のカラー撮影

バーダープラネタリウム製、31.7mmのLRGBフィルターと、ZWOのフィルターホイールを手に入れまして、ようやくモノクロカメラによる惑星のカラー合成ができる体制が整いました。昨年度の部費で、ASI174MMを導入して以来、一年越しです。

いまの時期、日没後にちょうど南の空に南中している土星を撮影しました。まずは結果から、

Saturn, 30th Sep. 2019

date: 30th Sep. 2019 19:30~19:40
location: Miyagi, Japan
optics: Meade Lx200 3048mm F10 with Kasai 2 x Ballo
camera: ASI-174MM, Gain 400,
Exposure: RGB: 20ms x 75% of 3000flames RRGBでカラー合成
Processing: Autostackkert!, Photoshop

土星の結果としては自己最高記録。

初めてのカラー合成

まず、今回の写真の作成手順を記録しておきます:

  • 撮影:LRGBそれぞれのフィルターで動画を撮影。L画像は5000フレーム、RGBはそれぞれ3000フレーム。8bitMONOのAVIで保存。
  • スタック:AutoStackkert!で各チャンネルを75%スタック。
  • カラー合成:ステライメージで各チャンネル画像を位置合わせしてから、Photoshopでさらに各チャンネルの土星の位置を微調整しつつ、カラー合成。
  • シャープ化処理:NikCollectionのOutputSharpnerでシャープ化処理。Photoshopでホワイトバランス調整、明るさ・コントラスト調整。

といった形です。いろいろとツッコミ所の多い処理過程なので、一つ一つについて言い訳して参りましょう。

  1. 撮影:まず困ったのが、干渉膜のフィルターを使っているのに、RGB各チャンネルのピント位置がだいぶんズレること。LとGのピントがだいたい合っている時、Rはわずかに、Bは結構大きくピンボケになります。この事態を恐れて、ZWOでなく、少々お高いバーダーのフィルターを選んだのに・・・。どうやら、バローレンズを使っている時はBがピンずれしやすいという情報もTwitter経由でいただき、これについてはもうちょっと検証の必要あり。なんにしても、各チャンネル毎にピントを調整する必要があり、今回の撮影ではBがピンボケになってしまった。
     また、RGに比べて、Bはかなり暗くなる。今回はRGBを全て同じ露光時間で撮影したが、Bだけは露光を伸ばす必要がありそう。
     とにかく、RGB撮影では、Bチャンネルが困ったちゃんであることがわかったので、次回はしっかりしたB画像を得ることを目標とする。
  2. スタック:LRGそれぞれのスタックは問題無し。Bチャンネルは暗過ぎて、まともにスタックできなかった・・。
  3. カラー合成:まずWINJUPOSによるRGB合成を試みたところ*1、惑星のフチに色ノイズが強く発生して、どうしようもなかった。これはBチャンネルの像の質が低かったせいかもしれない。いろいろ試したが改善しないので、しかたなくステライメージで位置合わせをして、Photoshopでカラー合成を行なった。また、Rチャンネルは他のチャンネルよりも鋭像にだったので、LをRで置き換えるRRGB合成で処理した。
  4. シャープ化処理:これもなぜRegistaxを使わないかというと、Photoshopで保存したtifがRegistaxで読み込めない場合があったので。Nikのシャープ化とRegistaxのウェーブレット処理、くらべてみるとそれほど顕著な差はないように思える。ウェーブレット処理では、各波長ごとに処理の強さとデノイズ・シャープを調整する必要があり、職人技的要素が強いが、その点、NikのOutputSharpnerはパラメータ数が少ないので楽。

 

 

 

*1:WINJUPOSによるLRGB合成については、

を参照。

夜空の明るさ調査

上の環境省の取り組みに協力して、先日、名取市周辺の明るさ調査をしました。

 

もともと夏の観測期間が8月21日〜9月3日までだったのが、あいにくその時期は天候が悪かったせいか、追加観察期間が9月20日から10月3日までとなっています。撮影条件は、上のサイトに書かれていますが、あちらこちらに分散していて分かりにくいので、いかにまとめておきます:

  • 撮影日時・時間帯:新月前後2週間の日の、日没後の1時間半〜3時間半の間
  • カメラ設定:ISO800、30秒露光、長時間露光のノイズ低減Off、高感度撮影のノイズ低減On
  • レンズ:焦点距離35mm前後、F値5.6
  • カメラのセンサーサイズ:指定なし
  • 撮影方法:MFで無限遠にピントを合わせた状態で、カメラを天頂へ向けて固定撮影。

撮影条件は結構厳しくて、天候も考慮するとなかなかチャンスがありませせん。カメラの設定も細かいですし、実質的に天体写真を趣味にしている人でないと、協力が難しいのじゃないかなという印象です。

撮影したデータはhttps://hoshizora.photoから、撮影場所のデータと一緒にアップロードする仕組みになっています。

 

さて、今回我々の部では、以下の7地点

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にて測定を行いました。光街マップと重ねると

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だいたいこんな感じ。

「学校のグラウンド」はもっとも市街地に近い場所。「地点1」は名取市岩沼市のちょうど中間の市境で、双方の街明かりの影響が少ないところ。そこから西方向の山間部へ向かって、およそ1000m間隔で測定しました。

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上の設定で撮影した写真を、PSのRaw現像で露光量を1.5にしてJPGに書き出したものを並べてみました。

地点1と地点6の間の距離は4キロほど。車でたった5分ほどの距離を離れただけで、ずいぶんと暗くなるものです。地点1に対して地点2が明るいのは、この交差点にコンビニとガゾリンスタンドがあるせいでしょう。

明るい対象の撮影であれば、それほど遠くに出かけなくても、撮影が可能なのかもしれません。