天文はかせ幕下

悪いデータを削除するのは時代遅れ?

前置き

「ガイドエラーで星がイビツになった画像もどんどん含めてスタックすべきー」

この話題は,丹羽さんが海外のフォーラムから仕入れてきて,星沼会の中でも議論していました.なんでも最近Pixinsightに実装された”PSF signal weight”はかなり優秀で,品質の悪い画像の寄与を適切に計算してくれて,かつ淡い部分のSNの向上につなげられるというのです.

「品質の悪いデータを削除するのは、old-school(時代遅れ)だぜ!」って記述が衝撃的です.

検証

そこで私も検証してみることにしました.対象は,先日蔵王で撮影していた洞窟星雲です.

The cave nebula(Sh2-155)

120秒露光の81枚をスタックしたこの画像,しかし実際には131枚を撮影していました.

当日は風があってガイドが安定しなかったために,泣く泣く50枚もボツにしていたのです.その中には,こんな画像や↓

こんな画像↓

さらいにはこんなに星が肥大した画像まで含まれています

 

131枚すべてについて星を基準にAlighmentしたあと,コマ送り動画にしてみると,かなりガイドエラーの画像が多いことが分かると思います.

youtu.be

 

さすがにこんなにヒドイエラーを含めてしまってはアカンのではないの?

疑いつつもこれらを全部ひっくるめ,”PSF Signal weight”をかけてスタックした画像と,エラー画像を除いた81枚をスタックした画像を比較したのが次の画像です:

驚きです.予想された星像の肥大はかなり僅かです.gifアニメではっきりしない背景ノイズの差は,jpg画像を並べてみるとわかります

131枚スタックでは背景は滑らかになっていて,かつ星雲のディテールもほとんど乱れていないようです.

 

含めてよいのはガイドエラー画像だけでなく,薄雲通過の画像や,高度が下がって光害に埋もれた画像もどんどん含めてスタックすれば良いということにもなりそうです.(実は私の隣で,そーなのかー氏が昔からそうしていました)

ちょっと気になるのは,ラッキーイメージングの考え方と逆行するという点で,M104など銀河の画像についても同じ結果になるかどうか調べる必要はありそうです.以前検証した時は,シーイングの悪い画像を含めると結果が悪くなりました.

若干,課題は残りますが,この結果は本当に遠征派にとって福音です.今後は「PHDガイドグラフの眼視ガイド」をする必要はなく,安心してみんなと談笑したり,コーヒー飲んだりできるというものです.

遠征がますます楽しくなってしまいます.