天文はかせ幕下

photoshopで行う高精度なフラット補正

はじめに

ここでは、photoshopのみを用いて、フラット補正を行う方法をご紹介します。補正の精度はかなり高く、輝度ムラだけでなく色かぶりもほぼ完全に取り除くことができます。ただし、対象となる画像はいわゆる「日の丸構図」に近いような天体写真。つまり,画面全体に対してグレーの背景部分が占める面積が大きい画像に限定されます。画面全体に分子雲や散光星雲が分布しているような写真には向きません。また,光害が強い環境で撮影した画像にも有効かどうかは,まだ検証してません(たぶん大丈夫だと思ってますが)。

考え方は、決して新しくありません。星と星雲を消去した背景のみの画像を抽出して,元画像から減算あるいは除算するもので,一部有償のFlatAIdePro *1(FAP)で採用されている手法やソフトビニングフラット補正*2(SBF)と呼ばれているものと同じです。しかし、この方法だと色ムラもきれいに補正できる点がFAPとは異なっています(FAPはおそらく輝度のみを補正して、色には影響を与えない仕様のようです[ver1.1.5])。また、ステライメージを使った手法で紹介されているSBFよりも手続きはずっとシンプルで簡単だとおもいます。

以下の説明は,ある程度Photoshopの操作に馴染んでいる方を前提としています。

作例:ひまわり銀河

例として,下のM63の画像を例に説明していきます。

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この画像は,RStackerでフラット画像を用いた通常のフラット補正を行った後、DeepSkyStackerでコンポジットし,16bitのtif画像として出力したものです。ダーク補正はしていません。ある程度空の暗い場所での撮影のため,このままでも背景は平坦に見えますが、わずかな補正の誤差や光害カブリ、熱カブリなどが残っていて、強調処理には耐えません。それはレベル補正で画像を切り詰めてみるとよくわかります:

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このとおり。左側の四隅が暗く、逆に右側が明るいです。これはフラットが完全に合っていないためと思われます。全体的に傾斜カブリもあるようです。

さらに色ムラもだいぶん残っています。ためしに彩度を思い切りあげてみると:

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このように、中心部分は緑がかっていて、四隅が青くなっているのがわかります。

天体写真の強調処理を行っていくと,このような輝度ムラや色ムラが必ず浮かび上がってきます。これまでの経験では,浮かび上がってきたムラをグラデーションマスクなどで修正するよりも,強調前にしっかり補正しておいた方が良い結果が得られると思っています。

準備

準備は一つだけです。つぎの手順で背景のみを抽出した画像を作ります(ご存知の方は,この節を飛ばしてください)

  1. 星マスクを作る
  2. 2値化した星マスクを使って,星を消去
  3. スポット修正ツールをつかって,星雲も消去

星マスクのつくりかたは「星マスクの作り方 - YouTube」がわかりやすいです。この方法で作った星マスクに対して,

 イメージ>色調補正>2階調化(閾値は12前後)

を行い,完全な白黒のマスクを作っておきます。

(後日記:この記事を書いたころは知らなかったのですが、上の1. 2.の作業の代わりに、Starnet++という星を消去するプログラムを用いるのが便利です。)

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こんなマスクです。この「2値化した星マスク」で星を選択した状態で,元画像に対して

 編集>塗りつぶし>コンテンツに応じた塗りつぶし

を行って星を消去します。この処理は数分くらいかかって,うまくいくとしたのような画像が得られます:

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まだ銀河と星の消し残しがありますので,これは「スポット修復ツール」で下のように手動で消しちゃいます:

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銀河は,見た目以上に周辺に淡く広がっているので,なるべく大きめに塗りつぶしておきます。これを怠ると,補正後に銀河周辺が黒く落ち窪んだりしてしまいます。

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このようにして,元画像の背景のみを抽出した画像が出来上がりました。最後に70pxくらいでガウスぼかしをかけておきます。

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この画像を「背景ぼかし画像」と以下では呼びます。(注:ぼかしをかけると画面上で階調が破綻して段差が見えることがありますが,おそらくPSの仕様であって見た目だけのことです。16bitのtifを扱っていれば問題ありません)(あと、ガウスぼかしによって周辺部が黒く落ち込むことがありますが、これはそれぞれのスタック画像のズレによるものです。そういう時は、周辺を数ピクセルくらいクロップしておきます)

フラット補正をおこなう

さてフラット補正の方法は

  • 「元画像」を「背景ぼかし画像」で割る
  • 「元画像」から「背景ぼかし画像」を引く

の2種類あります。どちらもそれほど結果は変わらないような気がしています*3

割り算による補正

まずは割り算のほうから説明します。

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上のように,「元画像」を1枚目のレイヤーに,「背景ぼかし画像」を2枚目のレイヤーに配置します。その上で「背景ぼかし画像」のレイヤーの描画モードを「通常」から「除算」に変更します。すると。。。

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このように画面が真っ白になります。輝度がほぼ同じ画像を割っているので,値が1(つまり白)になってしまったわけです。次の操作がポイントです:

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「背景ぼかし画像」の上にレベル補正レイヤーを配置して,そのレイヤーを右クリックし「クリッピングマスクを作成」を選びます。そのうえで,ハイライト側のスライドをヒストグラムのピークの右側ギリギリまで移動させます*4。すると真っ白だった画像が,ほぼ元に戻ります(若干元画像より明るくなります)。

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はい。これでフラット補正は完了です。三つのレイヤーは統合しておきます。

効果を見てみましょう:わかりやすくするために輝度を強調しています:

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さらに彩度も強調。色ムラも解消していることがわかります

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引き算による補正

引き算を使った補正も,考え方は同じです

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上のように,「元画像」を1枚目のレイヤーに,「背景ぼかし画像」を2枚目のレイヤーに配置します。その上で「背景ぼかし画像」のレイヤーの描画モードを「通常」から「減算」に変更します。すると,

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このように画面が少し暗くなりました。次の操作は割り算補正の場合と反対です:

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さきほどと同じように「背景ぼかし画像」の上にレベル補正レイヤーを配置し,クリッピングマスクを施しておきます。今度は,ダーク側のスライダをヒストグラムのピークの左側ギリギリまで移動させます*5。すると暗くなっていた画像が,ほぼ元に戻ります(若干元画像より暗くなります)。結果は,割り算とあまり代わり映えしないので,省略します。

おわりに

注意点としては,この方法の場合,背景に淡い分子雲や暗黒帯が横たわっている場合には,それらも一緒に補正してしまうので,まずいことになる点です。背景画像を,暗黒帯や分子雲の大きさよりも長いpx数でぼかせば,この問題は低減するかもしれませんが,そうするとフラット補正の精度も下がるかもしれません。

また,やっていることは,Flat Aide Proと変わらないわけですが,ひまわり星雲の画像の例に限って言えば FAPよりも高い精度の補正ができました。最後にその比較のgifアニメを載せておきます(FAPの設定値ははソフトのデフォルト値を使って,「割り算」でシェーディング画像を適用しフラット補正をしています)。

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FAPのほうは,設定値を適切にすればさらに高い精度の補正ができるのかもしれませんが,試していません(あくまでデフォルト値での比較です)。また,FAPが色むらの補正を確かに行なっていないことも,2枚目の比較画像を見るとよくわかると思います。

この方法で,色に影響を与えたくない場合は,「背景ぼかし画像」を白黒に変更してあげれば良いです。また逆に,輝度に影響を与えず色むらだけを取ることもちょっと考えればできるような気がしますが,思いついていません。

*1:http://www.baoland.com/FlatAide/

*2:2分でできる!天体写真のフラット画像の作り方【ソフトビニングフラット補正】

*3:FAPでもフラット補正をするとき割り算か引き算か選べるようになっています。マニュアルには,周辺減光補正には割り算が,カブリ補正には引き算が適するとありますが,その根拠はよくわかりません。光害カブリは足し算的に加わっているので,引くべきということでしょうか?

*4:スライダーがピークにかかってしまうと,ハイライト側からフラットが破綻するので注意

*5:スライダーがピークにかかってしまうと,ダーク側からフラットが破綻します

おとめ座銀河団

冒頭から私事で恐縮ですが、わたしは9月生まれの乙女座です。ぱっとしない星座であって、一等星のスピカ以外は目立つ星が少なく存在感がありません。実は未だに、どれとどの星を結べば「乙女座」が構成されるのか、よくわかってなかったりします。

乙女座の隣には獅子座がありますね。これは明るい星が多くて、またその形も確かに4本足の動物のように見えるので、春の星座の中ではよく目立ちます。

このふたつの星座のあいだ、下の写真に赤く囲んだ領域に「おとめ座銀河団」と呼ばれる銀河の集まりがある…とは、中学生の頃なにかの本を読んで知りました。星図に示された銀河の配置を見る限り、その数は尋常ではありません。まるで小虫が群がるように銀河がひしめき合っているのです。それで春の夜、ちいさな双眼鏡を持って外に出かけ、その辺りを観察して見ました。「何にも見えないではないか」とがっかりした記憶が残っています。

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3月12日、午後9時頃の星空(stellariumより作成)

その銀河団が位置する上の赤枠の部分を、Mamiya Apo sekor 250mmとEOS6Dの組み合わせで、先日撮影しました。

Virgo cluster

Date: 8th Mar. 2019, 23:00~

Location: Iidate, Fukushima

Camera: Canon 6D(HKIR)

Optics: Mamiya Apo Sekor 250mm F4.5

Exposure: 180sec. x 30(ISO3600)

Guide: Kenko skymemoR

 

銀河の密集の様子はこのような写真によって初めてよくわかりますね。ぜひリンク先のflickrに飛んでいただき、ピクセル等倍でごらんください。

この撮影中、昔のことを思い出して5cmの双眼鏡を手にしてこのへんを眺めてみました。はやま湖の暗い空のしたでも、やっぱり乙女座銀河団はよく見えませんでした。私の場合は、そんな少年の頃の「見えなかった」記憶が、中年の今になって星空を見上げる動機になっています。

 

 

 

春の系外銀河撮影

学校は春休みに入って、静かになりました。猛烈な活動で学内に知られる、我々天文部のプラネタリウム班も、ここ数日はさすがにお休み(予算を使い切ったので、することがないのだろうと思います)。

陽気もすっかり春模様です。暖かい雨降って、気温が下がって、そのあとの穏やかに晴れる…といった天気がくりかえされています。そんな晴れ間が新月期の金曜日に重なり、よっしゃと撮影に出かけてきました。

春は銀河

天文マニアの人々は、春になると「銀河祭り」などと宣って沸き立ちます。

「は?なんのことやら」

とお思いになると察しますが、春夜は天の川が沈んでしまうので、系外銀河しか撮る対象がなくなってしまうのですね。銀河の撮影には長焦点の望遠鏡が必要で、難易度もかなり高い。祭に参加できるのはある程度の熟練者のみというわけです。マニアの中のマニア、アホの中のアホです。

顧問はそれほどでもないのですけど、機材だけは一定のものが天文部に揃っているため、参加することができます。

夕刻。自家用車に必要機材を詰め込みました。その内容をご紹介します:

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銀河撮影時の機材

全部で80kgはあるのじゃないかと思います。これだけの機材をたった一人で車に積んで、遠征先で設置し、また車に積み直して、帰ってきたら部室に戻す。トータル240kg。しかも徹夜です。正直にいうと、心も体もボロボロになります。なんなんでしょうね。

ひまわり銀河

北天のひまわり銀河を撮影しました。

M63 Sunflower galaxy

date: 8th, Mar. 2019
location: iidate, fukushima
exposure: 480sec. x 14 + 180sec. x 5 (ISO1600)
camera: Canon EOS60Da
optics: Takahashi MT-200(1200mm F6)
mount & guide: Takahashi NJP, MGEN

数えてみればMT200やε200を持ち出す長焦点撮影は、年に4=5回ほどしかない。ここ最近は、NJPとMGENの組み合わせでガイドしていて、なかなか安定した結果が得られていない。今回学んだのは、MGENの場合はガイド星が飽和しているとガイドの精度が著しく落ちること。撮影開始時にはまだ飽和してなかったのに、カメラが天頂に移動するにつれてガイド星の光度が上がって、ついには飽和してガイドエラーが多発するという事態を今回は味わった。

冬の終わりに天の川

気がつけば2月も下旬。薄明のはじまるころには南東の方向にさそり座が登ってきて、天の川も低く横たわります。今の時期はちょうど、明けの明星の金星と、土星木星も並んで見えてなかなか絵になるのではないかと考えて、日曜の未明に撮影に行ってきました。OBのアベを誘って、北上川河口の白浜海外付近で出かけます。

前日は21時就寝。翌2時半起床、3時出発、4時過ぎに撮影場所到着。われながらよくやるなと思います。

しまったことには月齢を勘違いしていて、予想外につよい月明かりのなかでの撮影でした。ちょっと露光すると、背景が青空の様になって、写真がKouji Onishi風になります(あくまで「風」です)

。しかしそれはそれでよかったかもしれません。

Scorpio on a morning in the late winter

Venus, Saturn and the Milky way

 

北天の分子雲に挑戦

前置き

先日、岩本彗星の撮影をしていたときのついでに、M81とM82の周辺も撮っていました(といいますか、こちらが本命で岩本彗星はついででした)。最近よく使っているフルサイズの6Dと500mmレンズの組み合わせでの撮影ですと、この二つの銀河は小ぢんまりと画角に収まり、その周辺に広がっている薄雲のような宇宙のチリ(分子雲)との組み合わせが良い感じになります。

その構図は定番でもあるのですが、このへんの分子雲は非常に淡いことで知られており、鮮明に捉えるためには数夜を費やして5時間とか6時間といった露光をするわけです。そんなの無理です、わたしには。

そこで、一晩でも最良の結果を得るために、こんな作戦を練りました:

  • 街の灯りが弱くなる0時以降に撮影する
  • その上で、薄明ギリギリまで3時間の露光を確保する
  • 撮影場所も、いつものはやま湖よりも南に移動して、仙台から離れる

0時以降にM81&82が天頂付近に位置する季節は、2月を逃せばまた来年です。そんなわけで平日に遠征してきたわけでした。

M81, M82と周辺の宇宙のチリ

当日は風が強いながら天気に恵まれて、およそ3時間の露光を確保できました。しかしそれでも足りないので、分子雲のあぶり出しはそこそこにしました。でも、銀河の階調を残して、目をこらすとうっすらと分子雲がもくもくしているくらいが自然なのかなとも思います。

M81, M82 and the faint clouds around

Date: 14th. Feb. 2019, 0:30~
Location: Hara, Fukushima
Camera: Canon 6D
Optics: Mamiya Apo Sekor 500mm F6
Exposure: 360sec. x 29(ISO3200)+ 120sec. 10(ISO3200)
Guide: Kenko SEII with PHD2, dithering

覚書:

(あ)もうちょっと西方向(写真でいうと右)に画角をとればよかった。

(い)なぜかM81もM82も、赤っぽくなってしまった。

(う)撮影場所は、先日書いた通り原町フラワーランドの道端です。常磐富沢の秘密のばしょまでいけばさらに良い結果になるかもしれませんが、ちと遠い。

(え)mamiyaの500mmレンズ冷静になってみてみると,周辺像のコマ収差が強いのがわかります(250mmはフルサイズ周辺まで点像なんですが)。ちょっと気になりますね。ライバルはFSQ85とかここで書いてましたが,フラットナーを取り付けたFSQの星像には遠く及びませんね。

 

岩本彗星を撮影

13日の夜から14日にかけて、岩本さんが発見した岩本彗星(C/2018 Y1)の明るさがピークに達するという予報が出ていました。翌日の午前に休みをいただいて、撮影に行ってしまいました。V字のテイルを映し出すことができて、ひとまず満足。

Comet Iwamoto (C/2018 Y1)

Date: 14th, Feb. 2019
Location: Haramachi, Minami soma city, 
Camera: Canon EOS 60Da
Optics: Zeiss Apo-sonner 135mm F2(2.8)
Mount: Kenko SkyMemo R
Exposure: 150:17 (ISO1600)

覚書:

(あ)彗星核基準で合成して、星が流れている画像を作ってみると、どうも星が途切れ途切れで見栄えがわるくボツにしました。それでよく行われる方法で、星が止まって見える合成写真を作りました。

  1. σ-κクリッピング彗星核基準スタックで恒星が消えた画像(彗星のみ画像)
  2. σ-κクリッピング恒星基準スタックで彗星が消えた画像(彗星のみ画像)

の2つを用意。彗星が露光時間帯の中心に位置する様に調整して、両者を比較明合成しました。この方法の欠点は、彗星のみ画像につよい縞状ノイズが残ることです。そのまま強調すると、かなり醜くなってしまいます。そこで比較明合成を行う前に、彗星のみ画像にかなり強烈なノイズ処理を行いました。彗星の像はもともとぼんやりしているので、ノイズ処理でディテールが潰れても、あまり見栄えが変わりません。

(い)本来ならば、自宅から車で50分のはやま湖にいくところ、最近は、一人であそこにいくのが嫌になってしまいました。どうも不気味で。それで今回は南相馬市馬事公苑ちかく、はらまちフラワーランドの道端で撮影しました。ここは市街を東に見下ろす高台に位置していて、視界がひらけているので嫌なストレスなく撮影できます。北から南東方向は十分に暗いです。

(う)月はほぼ上弦で、まだ月明の影響がのこる深夜の0時から撮影。はじめはISO1600の90秒露光でヒストグラムのピークが2/3に位置する悪コンディション。ところがそれから1時間くらいの間に、そらがみるみる暗くなり、星も増えてきました。月没と市街の照明が暗くなる時間が重なったためと思われます。最終的に150秒露光まで伸ばして、ピーク位置も1/2弱でした。だいたい背景の明るさが55%暗くなった計算です。空が暗いのはいいのですが、写真の背景レベルが時時刻刻変わってしまうのは、やりにくいですね。

 

 

1年半前の撮影画像を再処理

顧問は、自分が書いているこのブログを過去から読み返してニヤニヤすることがよくありますが、それが楽しいのは

「昔は、下手くそだったなー」

と、今も下手なりに成長具合がよくわかるからです。天体写真で有名な方々のブログを拝見しても、過去記事の方へたどってみると案外数年前には並みのレベルだったりして驚くことがあります。

我々の天文部は、2011年の活動再開以来、ずーっとノータッチガイドでした。ようやくオートガイドを導入できたのが1年半前の秋頃。その第1作はM33でした。晩秋のころで、湿度が高いながらもシーイングの良い夜でした。ぶっつけ本番だったのに800mmの焦点距離で360秒露光が歩どまり100%だったのを覚えています。あのとき撮影した素材は、今の視点から見ても品質が高かったはず。その当時の作例は

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snct-astro/20171102/20171102171226.jpg

こんな感じでした。顧問と、当時の部員だったアベが別々の夜に撮影した2晩分のデータをスタックしたものでした。それぞれの晩の、鏡筒の固定位置がずれていたために光条が八重になってはいるものの、悪くはない様に見えます。でも、この当時はDSSでスタックしたあとGIMPトーンカーブや彩度を調整しただけの画像処理でした。

そういうわけですので、3連休のひまつぶしに再処理をして見ました。

Triangulum Galaxy M33

Date: 25th and 25th, Oct. 2017
Camera: Canon EOS 60Da
Optics: Takahashi epsilon-200(800mm F4)
Mount: Takahashi NJP with PHD guide
Exposure: 360sec. x 12(ISO1600) + 240sec. x 15 (ISO3200)

当時のレタッチとのもっとも大きな差は、マスクを使って暗い部分にだけノイズ処理をかけるようにしたこと。あとハイパスフィルターはやりすぎると星がガリガリになってしまうので星マスクで星にだけシャープ処理がかからないようにしています。

天体写真では画像処理の閉める割合が大きいなと改めて痛感。来春の銀河の撮影が楽しみになってきました。