天文はかせ三段目

天文はかせ三段目(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

コントラストの低い部分だけ選択するマスク(PhotoShop)

序論

まずは、次の写真をご覧ください:

M16, M17 and the Sagittarius Star Cloud

これは今春、kissX5と60Daをつかったツインシステムで撮影した天の川の中心部のモザイクです。左半分を60Daに、右半分をkissX5に担当してもらいました。合成をAstro Pixel Processorで行ったおかげでうまく繋がってはいますが、ちょっと不満がありました。全体的にコントラストにムラがあるのです。とくに右半分のコントラストが低いように見えないでしょうか?

このような画像に対して上手なマスクを施し、ローカルなコントラスト調整ができないものか? そんなマスクを、ここではコントラストマスク」と呼ぶことにします。今回は、その作成方法と適用結果のお話です。

裏話

唐突で失礼ですが、「着想に至った経緯*1」を記しておく必要があります。

『「ためしてガッテン」じゃないんだから、さっさと結論教えろ。』

という方は読み飛ばしてください。

発想のきっかけは、近江商人さんのブログ

でした。北アメリカ星雲の画像処理工程において、「コントラストの低い部分を選択するマスク」について触れられています。しかし肝心なところは

これは、よっちゃんがやっていた方法ですね。詳しくはビデオを買ってみてください。

とあって、リンク先を辿ると、よっちゃんさんの教材ビデオがたくさんあります。どのビデオを買えばいいのかもわかりませんし、値段も(!)そこそこです。これを購入して答えを見ては、いろいろ負けた感じがします。

 

それでちょっと自分で考えた、というわけです。

 以下は、「低コントラストマスク、こんな感じでよいのでは?」と顧問が考えた方法です。読者の皆さんの中には上記の教材ビデオを見たか、オフ会に参加したかで、すでに答えを知っている方もいらっしゃるかもしれません。

「ふーん・・まあそんな方法もあるかもね。ちょっと違うけど」

という感じで暖かく見守っていただけると幸いです。

誓って述べますが、顧問はビデオ教材を見ていません*2

コントラストマスクの作成法

それでは参ります。作成方法は簡単です。

  • 調整したい画像を「ぐっと」眺めて、大雑把にどのくらいの長さスケールでコントラストのムラが生じているかを見極める。上の画像の場合1000pxくらいとしました(画像の解像度は5000x8000)
  • 元画像に1000pxでハイパス(フィルター>その他>ハイパス) をかける*3(下画像)

    f:id:snct-astro:20200914233443p:plain

  • 「ハイパス1000pxレイヤー」と「元画像」をコピーして、両者の「差の絶対値」とったあとモノクロ化(イメージ>色調補正>白黒)すると下の画像のようになります。

    f:id:snct-astro:20200914234428p:plain

  •  上の画像には、輝度の高い星雲の跡が残っているので、ガウスぼかしなどを使って消してしまうと、以下のようなマスクができます。f:id:snct-astro:20200914235241p:plain

  • 上が「コントラストマスク」になります。この場合,バンビの横顔部分やわし星雲の北のほうなどがマスクされることになります。あとはこのマスクを調整レイヤに置いた状態で、マスク自体にレベル補正をかけて強度を調整しつつ,コントラストを調整します。下は、適用している様子です。「明るさ・コントラスト」を使ってます。レベル補正で中間スライダを動かしても良いと思いますf:id:snct-astro:20200914235558p:plain
  • 以上です。

適用結果

(1)オメガ星雲・わし星雲付近

まず、上の画像に適用した結果を見てみましょう:

f:id:snct-astro:20200916195531g:plain

バンビの横顔など、もともとコントラストの高い部分はそのままに保った上で、選択的な強調ができていると思います。

(2)干潟星雲付近

もう一つの適用例を見ておきます。ぐらすのすち氏天城高原でノーマルの5Dを使って撮影した干潟星雲付近を拝借しました。

f:id:snct-astro:20200915002635j:plain

この作例の場合、とくに右上部分のコントラストが足りてないような、と顧問はゴルバチョフぐらすのすち氏と話し合っていました。上記の方法を使うと、次のようなマスクができました

f:id:snct-astro:20200915002827j:plain

このマスクを適用して、コントラストを強調したBefore-Afterが以下になります:

f:id:snct-astro:20200915003315g:plain

中央した部分の天の川ハイライトはそのままに、部分的なコントラストの調整ができていると思います。ドストエぐらすのすちさん、画像提供ありがとうございました。

仕組みの説明とシメ

ハイパスフィルタというのは、

「指定した半径 L [px]よりも長いスケールでの空間的変化は、輝度128のグレーにしてしまい、それより短いスケールはそのままに残す」

という処理です。したがって今回使用したマスクは

L [px]よりも長いスケールで輝度が変化している「眠い」部分を選択するマスク」

になっているわけです。

これ、結構使えると思うんですけど、どうでしょうね。

 

 

*1:科研費の作文ではない

*2:実は、「星雲の炙り出し法」は数年前に購入して試聴していますが、そこでは「コントラストマスク」については述べられていませんでした。

*3:実は1000pxはpsではハイパス 半径の最大値。これ以上長い値を指定しなければならない場合は、画像の解像度を下げるしかないでしょう。