天文はかせ幕下

寒波の神割崎で、カタツムリ星雲

お正月明け1月9日の神割崎遠征について思い出しながら書いておきたいと思います。

新月期は撮影に専念して、満月期にブログを更新する方がイロイロと良いのじゃないかなと思い始めています。天リフにピックアップされる確率も上がるのではないか知らん。

 

確か1月上旬は、シベリア高気圧が1080hPaを超えて過去最高を更新したとかで、猛烈な寒波が押し寄せていまいた。自宅の水道管も久しぶりに凍結して、外に置いておいたペットボトルも簡単に過冷却状態になるほどでした。

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当夜の気温と湿度はご覧の通り。最低で-7℃まで下がりました。温度計に言われるまでもなく「不快」です。撮影をご一緒したそーなのかー さんによると、前日はもっと寒くてー10℃まで下がったとか。一方で撮影については、カメラはよく冷えますし、湿度も低くて結露もなし。バッテリーさえ気を付ければ撮影自体は快適です。

今回の対象:カタツムリ星雲

今回は、バラ星雲のちょっと北、コーン星雲の東に位置する「カタツムリ星雲」をメインの対象に選びました。比較的にマイナーな対象ですのでちょっとご説明を。

下の写真は2018年に撮影したバラ星雲とコーン星雲付近です。撮影にはEOS6DとMamiya Apo-sekor 250mmを用いました。

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冬の定番構図のひとつです。この写真の右上部分、灰色の枠で囲った青い小さな星雲が「カタツムリ星雲」になります。ピクセル等倍で拡大すると以下のとおりです。

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まさにこの画角を、フォーサーズセンサーの294MC-proと、620mmのRASA11"の組み合わせで撮影しようというわけです。

撮影の改善点

RASA11"と294mc-proの組み合わせの撮影は、もう何回もやっています。漫然と同じようにして撮影していては飽きてくるというのもあって、ちまちまと小さな改良を繰り返しています。

今回はスケアリングエラーの原因であったTリングとZWOのマウントアダプターから決別して、ガッチリした延長筒とZWOのフィルタードロウナーを用いてカメラと望遠鏡を接続しました。

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この16.5mmと書かれた延長筒はZWOのカメラに付属で一緒についてくるものですが、かなり堅牢に作られています。堅牢すぎて内側が狭く、RASAで使用すると多少ケラれるようでした。そこで、全く同じ光路長で内側を広くした延長筒をコスモの天文工房さん

に製作してもらいました。下がそのブツになります。

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左がZWOの延長筒、右がコスモ工房特注の延長筒になります。フィルタードロウナーとの接続もM42ネジからM48ネジに変更しました。価格は八千円弱でした。これで周辺光量がだいぶん回復しました。

あともう一つ。ZWOのフィルタードロウナーですが、Twitterで噂されていたとおり個体差があるようです。私の手元の製品もマウント面の平行が出ていませんでした。そこで学内の直線廊下を使って、スケアリングを調整しました。

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30m先にピンホールの光源を置いてます。その「人工星」を使って、写野の四隅でピントがあうようにドロウナーにテープを貼りながら調整しました。

余談ですけどこの方法、星を使わなくて済むので便利な反面、目立つんですよね。

「また仕事しないで遊んでるのですか」

と思われてしまいます。全くそのとおりなんですけど、査定に響くと嫌ですので盆や正月など基本的には人がいないときにやっています。

さておき、結果的には下の写真のようにマスキングテープを二枚貼る程度で、調整はうまく行きました。

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位置からして、フィルターを差し込むスリットの加工に影響されて、マウント面が傾いているようです。同じドロウナーを使われている方は、同じ位置の調整でうまくいくかもしれません。

撮影結果

前置きが長くなってしまいました。それでは撮影の結果です。

IC2169

Date: 2021-1-09
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec x 36 flames
(gain 120)
Processing: Pixinisight, Photoshop

画像処理は「控えめに控えめに」と唱えながら行い、輝度よりも色を引き出せるように心がけました。ある程度意図した通りにできたかなと思ってます。PixinsightのDecomvolutionがうまく決まって解像も上がったと思います。とくにカタツムリ の頭部から写真左側の反射星雲にかけての領域:

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あたりが気に入っています。でもこれくらい拡大してしまうと、DenoizeAI特有の網目状の模様が目立ってきてしまいますね。

あと写真左上部分の大きな暗黒帯

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この部分に縞状の構造が写っています。これはどうなのでしょう?他の方が撮影した結果を探してみると、私が探した範囲で、こう言う構造が写っている写真は見当たりませんでした。アーティファクトなのかどうか、判断ができていません。

もう一点。反射星雲を伴った星を拡大してみると、Starnet++の星消し痕が残ってしまってます。

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これはTwitter上でTakahiroさんに指摘してもらって気づきました。星消し画像を直接使ってしまうとこう言うことになるので気を付けないといけません。別の星では目立っていない場合もあって、明るさと星周辺の様子に依存しそうです。EZ Star Reductionスクリプトも、星の周りを星消し画像で置き換えているようなので、場合によってはこう言うアーティファクトが生じる場合もあるかもしれません。

この星消し痕は、ちょっとみっともない感じなので修正しようと思いつつ、気力が湧かずにそのままにしてしまっています。