天文はかせ幕下

Masa'sAstroPhotography氏の北アメリカを処理しました

事の起こり

@MasaAstroPhoto さんから 23時間露光の北アメリカ星雲の前処理後のデータが提供され、Twitter上の天文ファンが大挙してそれを後処理するというイベントがありました。

その結果は、youtube動画

にてまとめられています。どうぞご覧ください。わたくしの結果は8:30あたりから紹介してもらっています。

だいこもんによる処理

わたしの処理した結果はコチラです。持てる技術のほぼすべてをつぎ込んで、全力で処理しました。例によってリンク先のflickrに飛んでもらった方が画像がシャープに表示される傾向ですので、クリックしてね。

NGC7000

処理してみての感想

元データについて

まず、@MasaAstroPhotoさんの元データは、ある程度の光害地から、決して最新型でないカメラを使用して撮影されたものです。SightronのQBPフィルターの効果と長時間露光が、それら不利を十分に払しょくできるのだということを、実証してくれました。

しかし、写真下方向からの光害カブリはかなり強いもので、PixinsightのABEでは取り除くことができませんでした。DBEを使うにはサンプル点を打つ隙間が見つからない。わたしは結局、photoshopのグラデーションツールでGを中心にカブリを取り除きました。カブリを取り除いていくと、写真下部の淡いH2領域がどんどん浮きあがってきて驚きました。これは23時間露光の賜物だったと思います。

画像処理について

1月8日の黒編集長のつぶやき

は、@MasaAstroPhotoさんのデータを処理しての感想でしょう。おっしゃる通り確かに北アメリカ星雲は難しく、画像処理の技術の差が出やすいと思います。

以下、自分の処理の手続きです。

Pixinsight
  1. BackGroundNeutlization:背景をニュートラルなグレーに
  2. ABE:n=1でおおざっぱな傾斜カブリを除去
  3. ColorCalibration:カラーバランスの調整。これは星の色の平均を白にする処理ですが、QBPフィルターを使っている画像なので、あまり参考にはならない。あくまで、のちのちPSでさらにカラーバランスを調整することを前提としてます
  4. 光星のみにDeconvolution:特に写真上側の密集した微光星を小さくすることを目的として。これをやると星の色も少し出やすくなります。詳しくは

    Deconvolutionでスターシャープ! - 天文はかせ幕下
    をご参照ください。

  5. AutoHistgramのlog stretch->asinhStretch->maskedStretch:の順番でストレッチ
  6. HDRMT(Layer=8, gauss 11)で構造を強調
  7. EZStarReductionで星を小さく
Photoshop
  1. グラデーションツールをつかって、下部のGカブリかなり強く補正。これにともなって下部の淡い構造がでてきます
  2. 明るい星を選択して、彩度と色相を強調
  3. トーンカーブ レベル補正をRのみに対して適用
  4. CameraRawで彩度とコントラスト調整

総括

こちらが画像のヒストグラムです

f:id:snct-astro:20220123114502p:plain

自分の処理の反省点は、北アメリカ本体に含まれるO3の青っぽい成分をうまく引き出せなかったこと。星雲の色全体がだいぶん単調です。Pixinsightでの5番目の処理

AutoHistgramのlog stretch->asinhStretch->maskedStretch

がちょっと雑すぎたのかもしれません。もうちょっと考えないと。

一方で微光星の処理と明るい星の色の抽出、淡いH2領域のあぶり出しはうまくいったなと思っています。