天文はかせ三段目

天文はかせ三段目(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

木星と土星の最接近(新兵器準備編)

21日の木星土星の大接近。みかけで0.1度まで近づくのは400年ぶりとか800年ぶりなとどと言われております。貴重なイベントに際して,どういう写真を撮るのが一番楽しいかと考えてみますと,これはなかなか難しい問題です。

といいますのは今回の大接近,夕刻に高度20度くらいで重なって見えている木星土星が,そのまま太陽を追いかけて1時間ちょっとで沈んでいく。というイベントです。

 

例えばこれを,星景写真として撮る場合を考えてみます。みかけ0.1度というのはあまりに近すぎて,地上風景が入る画角では,両者が分解せず一つの光点にしかみえません。24mmくらいの広角で撮影して

「この点!!この点なんですよ。これは木星土星が重なっているんです。400年ぶりに!(鼻息)」

なんていっても理解されないでしょう。

木星土星を分離したいと思ったら,フルサイズだと135mmくらいは必要そうです。風景を含めるなら,高度10度付近で撮影する必要があり,低空に雲が出ていたらアウト。運良く撮影できたとしても低空の悪条件では土星が楕円に見えるかどうかも怪しいと思います。

というふうに考えて行きますと,やっぱり望遠鏡で拡大撮影かなーとなるわけです。

しかし冬のシンチレーション 。そのなかでも最も気流が不安定な夕暮れ時。かつ低空。拡大してもお団子にしかならないかもしれません。

そこで,今回は新しい兵器を買ってきました。 

Sightron Japan製の「IR720 PRO フィルター」です。
これは720nm以上の近赤外光をパスして,それより短い光をカットするフィルターです。これを174mmあるいは294mcに取り付けて撮影し,すこしでも低空でのヌケの悪さを改善しようという考えです。

赤外観望の可能性については,最近ではシベットさん

が積極的に進められています。私は以前,天童高原へネオワイズ彗星を撮影しにいった際,現地でIDASの社員の方とお話しする機会があって,このテクニックを知りました*1

テスト

12月10日の夕方に,このフィルターのテストをしました。時刻は17時過ぎ,木星土星の高度は約20度です。

まずは,通常のUV/IRカットフィルターで撮影した結果をご覧ください。木星から。

f:id:snct-astro:20201214142511j:plain
Date: 2020-12-10 17:23~
Camera: ASI174mm
Optics: Meade Lx-200-30 F10, Baader L Filter
Exposure: gain200, L:8msec x 1000f
Processing: Autostackkert!3(stack), Registax6(wavelet)

小さいのは,本番の画角に合わせてのことです。顧問が下手くそというのもありますけど,お団子に一本線でひどい画像です。

次にIR720フィルターを取り付けて撮影した結果です。

f:id:snct-astro:20201214142922j:plain

Date: 2020-12-10 17:25~
Camera: ASI174mm
Optics: Meade Lx-200-30 F10, Baader L Filter
Exposure: gain200, L:75msec x 1000f
Processing: Autostackkert!3(stack), Registax6(wavelet)

おお,これは見違えました。かなり暗くなるので1フレームの露光時間は10倍くらい伸ばす必要がありました。それでもIRの方がずっとはっきり見えます。

これは戦えるかもしれません!  

*1:その方は,通常のカラーのデジカメに単純なRフィルターをつけて彗星を撮影されていました。そのままだと真っ赤な写真になってしまいますが,昼間のうちにアスファルトを撮ってそれをホワイトリファレンスに色温度を調整しておくと,そこそこカラーバランスが整うのだそうです。低空に霞がかかるコンディションの中,非常にヌケのよい結果をえられていました。