天文はかせ幕下

SharpStar15028HNT のレビュー 第1弾

この度、シュミットにて表題の鏡筒を購入しました!焦点距離420mm、F値2.8の反射望遠鏡です。

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最近の天体写真撮影では、f=620mmのRASA11"とf=250mmのMamiya Apo-sekorが主力になっていました。二つの中間の焦点距離が欲しかったのです。そんな時、先日のサイトロンジャパンのフォトコンで準大賞をいただき、その副賞を利用して15028HNTを購入した次第です。

気が付けばカメラレンズ以外、天体望遠鏡はすべて反射鏡になってしまっております。遠征スタイルの撮影ではどうしても明るさ重視なりますので、これは必然的です。

ちなみにこの鏡筒については偉大な先人がいて、ブログ”ASTERISM”のvoyager_cameraさんが詳細な報告をされています

氏が購入されたのは中国のOEM製品で、中身は私の手元の15028NHTとまったく同じ。内容からすると、買ったそのままの状態では撮影に使えそうもなく、ある程度の調整が必要なことは確かです。シュミットの製品ページにも

「※この商品はご自身で光軸調整ができる方におすすめいたします。」

とありますし。

そこでこのエントリでは以下の三つ、顧問が

  • 買った直後に行った調整
  • 調整後に行ったテスト撮影の結果
  • テスト結果などを受けて、今後行うべき対策と行わなくてもよさそうな対策

ついて纏めます。

初期調整後のフラット画像と星像

「結論から先に述べよ。」ということで、まずは初期段階の調整(内容は後述)を行った後の星像とフラットの等高線をご覧いただきます。ミラーレス改造を施したEOS6D(フルサイズ)を取り付けての撮影です。

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次に中心と周辺300pxの切り出し。

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月夜で星の数少なかったため、コントラスト上げています。周辺減光は参考にしないでください。

次はフラット画像です:

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中心に対する最周辺の光量は約77%。上下はミラーボックスケラレで、これは明るい光学系だと仕方がないのかも。ちなみに本題からそれますが、ミラーレス改造*1を行った6Dでフラットを取得したところ、ケラレの片側は大幅に改善します。

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では顧問が行った調整について、以下で紹介します。

買ってすぐに行った調整

主鏡固定の補強

一番重大だったのは、主鏡セルの中で主鏡が完全に固定されていないという問題です。これはブログ”ASTERISM"内の記事でも指摘されており、また次の動画は結構衝撃的です

これは13028HNTの例です。顧問の15028HNTも受け取り時の主鏡の固定に遊びがある状態でした。(2023年4月追記:コメントでtowagawaさんから情報いただき、現在ではこの主鏡の固定は改善され動かないそうです)

そこで早速、鏡筒から主鏡セルを取り外します

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押引きネジで固定されている上側のリングは、ネジを限界まで締め付けても主鏡に接触しません。その状態で、側壁と主鏡セルの間には0.5mm弱の隙間があります。セルをもって振ると、主鏡がカタカタ動きます。ちなみにリングを固定しているネジにはゆるみ止め剤が封入してありました。緩めるとポロポロとカスが出てきます。

すべてバラバラにしました:

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主鏡セルには銅製のポチ突起が施され、3点で主鏡と接する形です。voyager_camera氏は、このポチの上からコルクシートを張り付け、主鏡をかさ上げすることで、リングでしっかり押さえつける対策を取られていました(コチラ参照)。しかしこの方法ですと、主鏡の圧迫が気になります。そもそも抑えリングに押引きネジが採用されているということは、「主鏡を上から圧迫しないように」という設計思想の表れなのではないかと考えました。

そこで、黒いケント紙を用意して、主鏡と側壁の間に挟んで固定するという単純な方法をとることにしました。

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それぞれの側壁との間に1枚ずつはさんだところで、ある程度主鏡が固定され、これで「ヨシ!」としました。上側のリングは浮かせたままで、ε-200などの主鏡の固定方法と比較するとまだまだ緩い状態ではあります。

光軸調整の押ネジの交換

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これは主鏡セル底部を横から撮影したものです。主鏡の傾き調整のための「押ネジ」が飛び出ています。そのため鏡筒を立てて置いたり、付属のアルミケースに収めたりするたびに、押ネジが簡単に回ってしまい、光軸がズレてしまいます。(2023年4月追記:コメントでtowagawaさんから情報いただき、現在ではネジが交換され、飛び出ていないようです。)

けっこうアカンので、飛び出ないような短いネジに交換しました。

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使われているのはM4のローレットネジで、ネジ部の長さは30mmほど。手元にあった25ミリの六角ネジに差し替えます。そのうちちゃんとしたローレットネジを用意しよう、いまは急場しのぎ。

光軸調整

光軸調整は、センタリングアイピースとセンタリングチューブを使って行いました。調整の手順は別記事

にまとめているので良ければご覧ください。

さて下の写真は、15028HNTの購入直後の何も触っていない状態でのセンタリングアイピースからの像です。

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この状態で接眼部の回転機構を回すと、十字線の中心が円を描き、その円の中心が黒丸の中心にほぼ一致してました。つまり光軸はかなり合っている状態です。

ASTERISM”を見てみると、出荷時に光軸は「しっかりズレていた」とあるので、このへんは個体差があるようです。しかし、なんにしても主鏡が動くのであまり意味はありませんね。

主鏡を固定した後に、光軸を再調整し上の写真と同じ状況まで追い込みました。センタリングアイピースを覗きながら筒の姿勢を色々変えてみても光軸が動く様子はなく、これで「ヨシ!」としました。

ちなみに主鏡セルの押引きネジが当たるところは下の写真のように出っ張っています。

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アルミ板は6~7mmほどの厚さがありますし、ここに強い圧がかかったとしても主鏡への影響はほとんど心配なさそうです。ですので調整ネジは程度強く締め付けることにしました。

なんだか熟慮された設計とあやふやな設計が混在した、不思議な鏡筒ですね。

フードづくり

フードはこんな感じで製作しました(裏面塗装前)

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取り付けで少し悩みました。といいますのも15028HNTの対物側の「はめしろ」を大きく撮れないのです。

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2センチほどはめ込むとピントノブとフードが干渉してしまいます。仕方なく、下のようにフードの一部に切り込みをいれてしっかりはめ込むようにしました

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ただこのままでは接眼部が回転できない。もう少しどうにかならないか検討中。

これから行うべき対策

斜鏡とドローチューブのコバ塗

斜鏡の側面は塗装されておらず、またドローチューブの底面も少し光っています。

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斜鏡はコバ塗して、ドローチューブには植毛氏貼り付けたいけど、斜鏡のスパイダー外すのがちょっと怖いです。

主鏡のセンターマークの変更

主鏡のセンターマークには、あまり光を反射しない塗料が塗られています

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光軸調整時にほとんど視認できないので、これは黄色いシールに交換する予定です。

行わなくてもよさそうな対策

補正レンズの取り付けの調整

15028HNTの補正レンズは下の写真のように、M63のメネジが切られたドローチューブ内に埋め込まれていて、付属品のカニ目レンチで着脱します。

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で、この補正レンズが傾いているという話がブログ”ASTERISM”で報告されていました。

ASTERISM(アステリズム) 補正レンズの位置調整で星像改善 (fc2.com)

補正レンズを一番奥までねじ込んだ状態で、写真の高さLを測定すると、円周上で6.65~7.10mmと0.45mmも傾斜しているとのことでした。

ところが私の個体ではL=3.5mmで、傾きはほとんど確認できませんでした。この点は、改善されているのかもしれません。

接眼部のスケアリング調整

接眼部にはスケアリングの調整機構が施されています。しかしこれは出来ればやりたくない。うえの星像を見る限り、手を付けなくてもいいかなと思っています。たすかった。

斜鏡のセンター出し

15028HNTの斜鏡にはセンターマークがありません。斜鏡は平面鏡なので、主鏡からの光束を全て受け止めてさえいれば、センター出しは関係ないだろうということで、こいつも弄らないでおきます。

おわりに

現段階では「満足した」とか「いいんで内科医」とか書かないようにしておきます。自分で購入した鏡筒はただでさえかわいいですし、ましてや初めて頂いた副賞で購入した筒ですので、愛着もあります。どうしてもレビューにバイアスがかかってしまうでしょうから。

ファーストライトの予定は12月の初旬。ASI2600mcかEOS6Dを取り付けて撮影する予定です。何を撮影するかは、まだ考え中。どうしようか。。(つづく)

 

*1:EOS6Dのミラーレス改造については、タカsiさんのブログ

をご覧ください