天文はかせ幕下

土星と火星、

この時期、東北だと夜中の1時ころに天の川が南西方向に垂直に立ち上がる。その中で輝く土星と火星を含んだ星景を撮影したいと思っていて、なかなかチャンスがない。

昨夜の金曜日も靄がかかったような天気で、蔵王に行けば上に抜けるかなと思いつつも、リスクを恐れて足が動かなかった。日中の暑さで疲れてもいました。

そのかわり、土星と火星を撮影しました。

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2018年7月20日23:15 土星
鏡筒:Meade LX200-30cm + Kasai 2倍バローレンズ
カメラ:ZWO ASI174MM CMOSカメラ
フィルター:kenko MC R1
gain:400, 露光:0.03sec*60sec
AutoStackkert!にて20%スタック x3Drizzle、Registax6.0でウェーブレット処理。

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2018年7月20日23:23 火星
鏡筒:Meade LX200-30cm + Kasai 2倍バローレンズ
カメラ:ZWO ASI174MM CMOSカメラ
フィルター:kenko MC R1
gain:250, 露光:0.008sec*60sec
AutoStackkert!にて20%スタック x3Drizzle、Registax6.0でウェーブレット処理。 

どちらもイマイチ。土星カッシーニの隙間が全周見えなくて、手前が潰れている。火星に至っては、ウェーブレット処理で浮かんで来たこの模様が、果たして本当の火星の模様なのかよくわかりません。

夜中に撮影しているので、おそらく筒内気流はそれほど影響していないと思うのですが、ピントを追い込む方法をもうしこし考えないといけない気がしています

梅雨の晴れ間の観測会 in 白石蔵王スキー場

前置き(読み飛ばし可)

顧問が学生であった頃の同級生に木門(バスケ部)がいた。普通の人間が1時間かかるところを、20分もかからずにパパッと理解してしまう、そういう頭のよい奴であった。そのスマートさゆえの嫌味ったらしいところもあって、例えばテスト週間。我々が寮の居室で一夜漬けの勉強をしていると、木門はふらっと現われて言う

「明日のザイリキ*1のテスト範囲どこまでだっけ?」
「65ぺーじまでだよ」
「ふーん・・・、余裕ダラァー?

と言いのこして、去っていくのである。今になって思うと、木門は別にテスト範囲を知りたかったわけではなかった。ただ単に「ヨユウダラー」という遠州弁を我々にぶっつけたかっただけだったのだろう。

テスト週間前の観測会

新月期の週末。運良く晴れ間が予想されていたので、顧問は観測会を企画。部員の参加を募りました。しかし、テストまで一週間という時期でもあって、集まりが良くありません*2。そんな中「テスト?ヨユウダラー」と言いながら、ノゾキド、ユリナ、班長、そして今回初参加のマレーシア人留学生、チョンが集まりました。 

チョンくんは、今年度から我々の学校で勉強を始めています。

「なんで、日本の寮のご飯は、朝ごはんも、昼ご飯も、晩ご飯も、みそしる出ますか? マレーシア違います。」

なんて質問で我々を当惑させたりしてくるところが、楽しいヤツです。

白石スキー場に到着すると、西の屏風岳ごえの雲が天頂付近に定在していて、北極星も見えません。あとからYさんが合流しても状況は変わらず、唯一晴れていた射手座・さそり座付近を双眼鏡で眼視しました。干潟星雲やオメガ星雲、M22などの見え味は素晴らしく、久しぶりにゆっくりと星を見た気分です。晴れていると撮影にてんてこ舞いで、PHD2のグラフばっかり眺めて星を見なかったりします。

こんな写真も撮影しました。

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Sigma 70mm Macroでアンタレス付近

カミソリマクロ(旧式)は、鋭いながらも青ハロの強いレンズです。L42フィルターがそれを程よくカットしてくれるとのことで、今回それをテストして見ましたが、盛大なゴーストがでて、ダメでした。それでまあ、フィルターを外して、この日唯一晴れ続けていたアンタレス付近を撮影しました。

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7月13日 アンタレス付近、白石蔵王スキー場
camera: Canon EOS 60Da
Lens: Sigma 70mm F2.8 EX DG Macro (F4)
Mount: Kenko SkyMemoR(ノータッチ)
撮影条件:ISO1600, 210sec, 18枚スタック 

撮影時はだいぶん高度が低く、白石市の光害カブリもかなり強かったので強調はこの辺が限界でした。青ハロの処理にさえ気をつければ*3でもこのシャープさは、3万円くらいで手にはいるレンズとは思えませんね。夏は白鳥座付近を撮影したいぞ。 

 

 

*1:材料力学のこと

*2:東北大に通っているOBのアベにも声かけしましたが、なんと大学院生にもなってテスト週間に苦しんでいるそうです。顧問が院生の頃は、テスト週間なんてなかったけど。

*3:拡大すると、青ハロ除去の影響で星の周りが黒く落ち込んでいるのがわかります。

過去画像の再処理してます・・

先日、DeepSkyStackerでスタックする前にraw現像を施したほうが、色が引き出せやすいという記事

raw現像を取り入れた画像処理の流れ - 天文はかせ序二段(仮)

を載せまして、当ブログとしては、あれだけブックマークがついたのは初めてのことでした*1。7月の新月期に入っても、宮城県は曇り空が続いていますので、ここは自宅にこもって、これまでに撮影した画像の再処理をいくつか試みていました。

M16の再処理

まず、今年の6月13日に撮影したM16ワシ星雲の画像の従来の方法による処理結果です:

M16_eagle nebula

2018/6/13 22:00-25:30
カメラ:
Canon 60Da 

光学系:Nikkor 300mm F2.8 ED (->F4)  with Astronomik CLS CCD filter
露光:ISO1600 360sec x 22 
マウント:NJP赤道儀、PHD2ガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。PhotoShopでレタッチ。

これは、見た感じ「うーん、赤いね・・」という感じしか出ない感じです。新しい方法なら、色が引き出せるかもしれません。ところが結果は大して変わりませんでした(なので掲載も省略します。)。そもそも元画像には青の情報がほぼ存在していないようです。もともと赤が一方的に強い領域なのか、それともこの撮影で使用していた光害カットフィルター(Astronomik CLS CCD)が原因の可能性もありそうです。

M8,M20から「バンビの横顔」

もう一つ、干潟星雲、三裂星雲から「バンビの横顔」にかけての画像を再処理しました。

まずは従来の方法による処理結果:

lagoon_HDR_ps2

カメラ:Canon 60Da 
レンズ:Apo-Sonner 135mm F2->F2.8
露光:ISO1600 90sec x 22 + 45sec x 6 + 20sec x 6
マウント:SkyMemoRノータッチガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。HDR EflexProでHDR合成。PhotoShopでレタッチ。

そして新しい方法による処理結果:

around M20 and M8

カメラ:Canon 60Da 
レンズ:Apo-Sonner 135mm F2->F2.8
露光:ISO1600 90sec x 22
マウント:SkyMemoRノータッチガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。PhotoShopでレタッチ。

Photoshopによる画像処理も、我々の場合はまだまだ発展途上の状態で、うえの二つは全く同じレタッチをしているわけでなく、単純な比較はできないということをあらかじめお断りしつつ、新しい方法のほうが色がよく出ていると思います。とくに三裂星雲の青いほうの部分、干潟星雲の左側のNGC6559(猫の手星雲)、バンビの首元あたりのNGC6595あたりを見比べてみるとわかりやすいですね。

これから夏の撮影が、ますます楽しみになってきます。

*1:天文リフレクションのかたが、我々がアップするような小ネタについても丁寧にピックアップしてくださるおかげだとおもいます。素晴らしい活動ですね、ありがとうございます。

raw現像を取り入れた画像処理の流れ

新しい画像処理フロー

多少なりに考えるところがありまして、天体写真の画像処理のフローを以下のように変更しました。

  1. (入力:デジカメのraw画像のライトフレーム)
    --> RStacker(フリーソフト)でそれぞれをダーク・フラット処理--> (出力:raw画像)
  2. (1.の出力データ)
    --> Photoshop(1000円/月)で黒レベル・ハイライト調整 (具体的には,ハイライトや白レベルを下げて星の白トビ部分の輝度が255未満になるように調整,ヒストグラムのピークが1/3よりも大きい場合は,黒レベル・シャドウを下げて,ピークがだいたい1/3くらいになるように調整),フリンジ処理・彩度強調 (<-これは必ずしもやらなくて良い)をしつつRAW現像--> (出力:16bit tiff, カラースペースはAbode RGB color)
  3. (2.の出力データ)
    --> DeepSkyStacker(DSS) (フリーソフト)でコンポジット
    --> (出力:16bit tiff画像)
  4. (3.の出力データ)
    --> Photoshop(1000円/月)でレタッチ
    --> 最終画像

 これは、海外の掲示板サイト

Astro Image Processing Work Flow, Clarkvision.com

を参考にしました。ちなみに従来の画像処理フローは

  1. (入力:デジカメのraw画像のライトフレーム)
    --> DeepSkyStacker (フリーソフト)でダーク・フラット・スタック処理
    --> (出力:16bit tiff画像)
  2. (1.の出力データ)
    --> Photoshop(1000円/月)でレタッチ

という単純なものでした。

もっとも重要と考える改善点は、赤字でしめしたRAW現像です。これをDSSでのスタック処理の前に行うようにしています*1(RStackerを取り入れた理由は後述*2しますが、便宜上のことにすぎません)。

まずは結果の比較

昨年の12月に五枚沢というところで撮影していたバラ星雲とコーン星雲の写真を比較して見ます。EOS60DaとSigma 70mm Macroでの撮影です。

旧来の方法(下)

rossetta_for_comparison

新しい方法(下)

rosette and cone nebula

今までよりは、photoshopのレタッチで、色が引き出せるようになったと思います。

理由とか背景とか

これまで何枚か天体写真を撮影していて、もっとも不満だったのは画像の「色が貧しい」ことでした。特に青色が。輝星や銀河の淡い部分の青が出ないのです。これはいままで何回か考察していて

  1. そもそもデジカメは青が出ない(冷却CCDでのLRGB合成と比較して)
  2. 光害カットフィルターが青を落としている
  3. そもそもDSSの内部処理は、色が消える傾向がある(?)
  4. 輝星の青は、白飛びして消えている

などが原因かなと考えていました。

この中の4.の要因を抑えるために、RAW現像内のハイライト処理で星が白飛びしないようにパラメータを調整したかったというのが、今回の変更の主な動機です*3

そもそも、RAW現像というのは、RGGBの4つベイヤーから得られたモノクロ画像を合成してカラー画像(tiffやjpg)にするプロセスです。旧来の方法では、DeepSkyStackerがこれをやっていたわけで、そこには何の恣意的な操作もありませんでした。RAW現像によって画像の情報量は落ちるので、そこに何らかの調整が必要なのは確かだろうと思います。

今後は、RAW現像でのパラメター調整を最適化して行きたいのですが、なにか参考になるサイトはないかと探しています。

*1:有償ソフトのステライメージを使っていた(いる)人たちにとっては、RAW現像をしてからスタックするというのは常識かもしれません。しかし我々はDSSから天体写真に入ったためか、RAW現像の位置付けがよくわからないまま現在に至った次第です。

*2:RStackerを取り入れた理由ですが、私の環境ではPhotoShopのRAW現像によってなぜか画像サイズが微妙に変わってしまって、DSSでのダークフラット補正の一括処理ができなかったためです。RAW現像したtiffをDSSに放り込んで今まで通り処理できれば簡単なのですが。

*3:できればFlatAideProの対数現像を、輝星の白飛び抑制に取り入れたいのですが、具体的な処理の仕方がわからない。そもそもFlartAIdeはRAW現像ができるの?

木星(22日)

先週金曜日の夜。宮城県名取市では透明度の高い空ながら、一等星のアークトゥルスなどもチラチラ瞬いていました。Windytyでは、3000m付近での寒気と暖気の境目がちょうど宮城県あたりに停滞しています。この寒気がもうちょっと北上してくれると、シーイングも良くなるような気がします。

あまり期待せず部長のハタナカと木星を眼視してみると、それほど見え味も悪くなさそうだったので、撮影をして見ました。

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2018年6月22日21:07 木星
鏡筒:Meade LX200-30, 直焦点 F10 Kasai trading 2inch x2バローレンズ(F20相当)
カメラ:ZWO ASI174MM CMOSカメラ
フィルター:kenko MC R1
gain:300, 露光:0.01sec*60sec
AutoStackkert!にて20%スタック x1.5Drizzle、Registax6.0でウェーブレット処理。

バローレンズを使ったファーストライトでしたが、それほど良い結果にはつながりませんでしたね。こればっかりは天気だのみです。

イクラ状の星への対策

Nikkor 300mm F2.8 EDと光害カットフィルター(Astronomik CLS CCD)で撮影すると、星像が「イクラ状に」なる

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写真1

は、古いEDレンズの軸上色収差が原因と、「天文リフレクションズ」というサイトを運営されている山口さんからTwitterで助言をいただきました。我々の「イクラ状」は、光害カットフィルタによって特定の波長がカットされたことで、元々あまり目立たなかった収差の影響がより顕著に見えるようになったのかもしれません。

https://twitter.com/tenmonReflexion/status/1007563934704910336

解決策として「赤と青(緑)のボケ量が同じになるようピントを調整すれば解決するかも」とのことです。

たしかに、イクラ状になるのは主に微光星で、その元々の色に関係ないようなので、ピントの微妙なズレが原因そうです。しかし、なかなかに曲芸的なテクニックですよね。

下の写真は、当日撮影していたバーティノフマスクの回折像です。

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写真2:バーティの不マスクの解説像

これを見ると、全体としてはピントがあっているものの、赤と緑のラインに注目すると、それぞれの光はピンずれしているように見えます。しかし実際の星像は、写真1のように赤にピントが合って緑がボケている状態でした。ということは、通常のバーティノフマスクのジャスピン回折像をよしとするのではなく、これよりも緑のラインをもう少しジャスピンへ近づけて、赤をズラすということになりますか。

Nikkor 300mm F2.8 EDのピントリングは手で動かすしか無いので、ちょっと難しいかもしれませんが、今度検証してみます

 

 

 

Nikkor 300mm F2.8 ED と M16わし星雲

先日の13日は梅雨の晴れ間に恵まれました。平日でしたし、学生たちは

「レポートの提出があるので」

といふので、今回はコモンひとりで撮影に出かけて来ました。

この時期、日没後に東から昇ってくるいて座周辺の星雲を撮影しようと思いまして、東の空が暗い福島県霊山の登山口駐車場へ出かけました。

17時半くらいに学校を出発して、薄明が残る時間帯に現地に到着。少し雲が出ていました。この場所、周辺の気流の影響なのか、西風が吹くときは山越えに雲が発生しやすいようなので、冬の時期は避けた方がよさそうです。幸運なことに、この日は雲もじきに晴れて、22時くらいから撮影を開始しました。

夜半を過ぎた頃、山形大地学研究部の天文班の方々が、やって来ました。プラネタリウム作りのアドバイスをいただいたり、持参されたC8でいろんな星雲を見せてもらいました。C8があんなによく見えるとは思いませんでした。またお会いしたいですね。

M16わし星雲

いて座付近のわし星雲を撮影してみました

M16_eagle nebula

2018/6/13 22:00-25:30
カメラ:Canon 60Da 
光学系:Nikkor 300mm F2.8 ED (->F4)  with Astronomik CLS CCD filter
露光:ISO1600 360sec x 22 
マウント:NJP赤道儀、PHD2ガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。PhotoShopでレタッチ。

まあ、そこそこ満足いく仕上がりになりました。今回はオートガイドがバキバキに決まりました。カメラとオートガイダからのケーブルを赤道儀本体に固定したのがよかったのかもしれません。歩どまりも100%。DSS上でのスコアも見事に安定しています。

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それと、撮影やレタッチに新しい試みを加えました。小出しに書いていきます。

Nikkor 300mm F2.8 EDの青いコマ収差問題

これまで何回か書いていますが、使用したニコンサンニッパレンズは、部での購入が平成3年。設計が古いため、コマ収差がでます。開放で使用するのはかなりきつくて、F4まで絞っても以下のような周辺像です。

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スタック後にレベル補正だけを施したものですが、周辺ではコマ収差が強く、青のにじみが目立ちますね。このまま強調すると、青にじみも強まって、ひどいことになります。だからといってphotoshopで青にじみを消してしまうと、いっしょに星の色も全部消えてしまうのでよくありません。

これを何とかしたいです。青ハロに対してはL42紫外シャープカットフィルターを使うと軽減できると

ASTERISM(アステリズム) SIGMA AF 70mm F2.8 EX DG MACRO

にて紹介されてました。L42はおおよそ波長400nm以下の光をカットするフィルターです。そういえば光害カットフィルターの透過特性のグラフを見て見ますと、同じように400nm以下をカットする仕様になっていることが多いです。というわけで、今回のわし星雲はNikkor 300mm F2.8 EDと光害カットフィルターの組み合わせで撮影しました。その中心と周辺像は以下の通り。

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なんと、青いにじみがほとんど見えません。これはすごいと思ったのもつかの間、強調処理をしていくと、星(特に微光星)の色バランスが大きく崩れていることに気づきました。拡大してみるとこんな感じ:

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比較的明るい星には緑のハロ、暗い星は芯が赤くなった上に周辺が緑で気持ちが悪いことこの上ないですね。

光害カットフィルタが星の色に悪影響というのは、

などでも触れられていましたけども、上の写真のようにひどくなるという話はあまり聞いたことがなくて、これは多分レンズとフィルターの相性が悪いのでしょうね。次回はL42フィルターを手に入れて撮影して見ます。