天文はかせ幕下

久しぶりの星空でした。

事の起こり

ほとんど成果が得られなかった天文部の夏合宿から1ヶ月弱。宮城県は、まったく晴れません。あれから星どころか月すら見ていません。そうして9月下旬の新月をむかえてしまいました。今日も朝から雨が降り、雲が垂れています。10月に入れば授業がはじまり、みんな忙しくなってしまうでしょう。

「最近なんも活動してないよなぁ、困ったことである。」

私は悩んでおりました。しかし、おなじみGPV天気予報をみると、

「明日の夜,沿岸部の北の方は雲が切れそう感あり」

と予報していました。最後のチャンスかもしれません。さっそく部員達にメールを打ちました。

「明日の夜、観測どう?」
「・・・。」

だれからも反応がありません。そこで1ヶ月前に入部したやる気マンマンの新入部員「阿部」を誘ってみました。

「あしたっすか?バイトあるんすけど」
「安い時給で使われてるんだろう?ドタキャンしたらよい。」
「はあ、それもそうっすね。うひひひ」
「うけけけ」

ということで、ふたりだけで観測に行く事になりました。

この雲はインドまで続いている

阿部も最近の天気に嫌気がさしているようで、今日ばかりはあまりやる気が有りません

「この雲、インドまで続いてるらしいですよ。今夜にひろがっている雲は、一ヶ月前にインドの空を覆っていたんですよ。」

なんて、出鱈目を言っています。どうせ晴れないと思っていたようで、サンダルに作業着姿で現れました。サンダルの男にNJP赤道儀を扱わせるのは危ないので、ほかの人手が欲しい所です。ちょうどコモンの研究室の学生「横山」が暇そうにしていたので、声をかけました。

「星ですか?行きたいです!」

となりで話を聞いていた、別の学生「鈴木」と「工藤」が

「あ、俺も行きたいです・・・」
「ぼくもいいですか」
「いいよいいよ、一緒にいこうではないか。諸君」

と、急ににぎやかになりました。なぜ彼らはついてきたのか?私の想像でちょっと説明すると、上記の「横山」「鈴木」「工藤」は卒業まであと半年をのこすあまり。来年度の進路も決まって「いままで俺はこの学校で4年半、何をしてきたのか・・・」と卒業研究も進捗が悪く、いろいろと考えるようになってしまい、星空でも見上げたいクサクサした気分だったのでしょう。

GPV予報がよい方にハズレた。

やたら前置が長くなってしまいましたが、GPV予報によると、三陸の方へいけば、夜中に2時間くらいは晴れそうです、といっていました。そこで、雄勝町の神割崎キャンプ場の駐車場を観測地に選びました。名取からはくるまで2時間弱ですGoogle マップ

夜の11時を過ぎると、雲が急に晴れて満天の星空に恵まれました。今回は「阿部」がε200でM31、M33、M27などを撮影しました(近日アップ予定)。明け方頃、オリオン座が上がってきたので、コモンはその周辺を撮影しました。

 f:id:snct-astro:20160930153800j:plain
2016年9月29日1:20 オリオン座周辺 宮城県雄勝
canonEOS40D 赤外改造 Zeiss Apo sonner 135mm F2.0->2.5 on SkyMemoR
ISO1600 90sec x 24枚,DF x 8枚, Flat flame処理なし
astronomik CLS CCDフィルター使用

ちょっと構図がアレですが、なかなか撮れたような気がする。今回の撮影場所は、リアス式海岸の一角で、東の海側が良い景色でした。

f:id:snct-astro:20160930162050j:plain

東の海から上ってきたシリウスの明かりが、たまたま静かであった入り江に指して、光の道をつくっていました。月光がこのように反射するのは良く有る光景ですが、恒星でこのような反射をみたのは、初めてでした。

 

そんなで、明け方まで観測しました。機材を撤収して、名取に着いた時はすっかり夜が明け、東の低い空に月齢0.7の月が上っていました。あんなに細い月を見たのも初めてのでした(疲れ果てていて、写真はとりませんでした。)。「横山」「鈴木」「工藤」を天文部にさそってみたところ、

「いや、それはちょっと・・」

という返答でした。ガク。

2016夏の合宿報告

現在の天文部が、ちょっとした休眠期間の後に活動を復活し、このブログを書き始めたのは4年前。当時、1年生であった新入部員のざわなかは4年生になり(i.e. 留年していない)いまでは部長を務めています。ことしも、「第四回:夏合宿」を行いました。

ちょっと振り返ってみますと:

  • 2013年 第一回(@蔵王ハートランド牧場、二泊):二日とも晴れ
  • 2014年 第二回(@花山青少年自然の家、二泊):二日とも晴れ
  • 2015年 第三回(@栗駒山、一泊):数時間の晴れ間

とこれまでかなりの晴天率を誇ってきました。今年は、宮城・福島・山形の県境ちかく、七ヶ宿スキー場きららの森を観測場所に選びました。結果的には、ずーっと曇り空で全く成果が得られませんでしたが、とりあえず報告いたします。

9月5日(月)

九州あたりに動きの遅い台風がわだかまっっているらしく、9月というのに、夏の盛りのような湿った南風が吹く日でした。空は晴れているものの、雲が多い。GPV予報は絶望的な感じ。それでも忘れ物がないか入念にちぇっくして、機材をハイエースに詰め込みました。

f:id:snct-astro:20160905132757j:plain

二泊三日、8人分の荷物と合わせるとトランクはギュウギュウで望遠鏡MT200を安定的に置けるスペースがない。仕方がないので、中村&田中の膝の上に置いてもらうことにしました:

f:id:snct-astro:20160905142718j:plain

この筒は14.5KGあり、まるで江戸時代の拷問「石抱」です。しかし二人はMなのか、満面の笑顔。この体勢のまま1時間半頑張ってもらいます。おかげで光軸がずれる心配もありません。一路、七ヶ宿へ・・

f:id:snct-astro:20160905154558j:plain

一般的には「晴れ」といえる天気。天体観測としては嫌な感じの巻雲が広がっています。前方の山の方向が今回の観測地。

f:id:snct-astro:20160905170007j:plain

今回、8名で宿泊するコテージ。立派でしかも旅館などに比べれば格安です。ただしもちろん自炊。曇っているので焼肉パーチィです。夕刻には、軽く雷雨がありました。雷の写真をゲットしました。

f:id:snct-astro:20160905185015j:plain
そしてバーベキュウ。


タイムラプスのテスト

そんな感じで、初日の夜は更けていくのでした・・・。つづく!

9月6日

二日目、昼間は近くの蕎麦屋で蕎麦を食べたり、買い出しをしたりして過ごしました。怪しい雲行きの中、駐車場に望遠鏡をセットします

f:id:snct-astro:20160906174422j:plain

偏光フィルタを使うと、青空が印象的に写りますね。

昼間はよく晴れていたのですが、日没後は曇って話になりませんでした。しかしこの夜、我が天文部が朝日新聞から取材を受けたのです。9月16日づけ宮城県内版の朝刊にその記事が掲載されていますので、謹んで紹介いたします:

f:id:snct-astro:20160917001705j:plain

すこしは星の写真も撮ったので、それは後ほど紹介いたします。

 

 



 

 

 

 

仙台市天文台にて観測をしました。

仙台市天文台には口径が1.3mの「ひとみ望遠鏡」があります。ふつうは観望会などで、覗かせてもらえるだけの望遠鏡ですが、ちゃんとした観測提案書を提出して採択されると、使わせてもらえます。

今回、東北学院大の先生方と協力して「撮像観測による惑星状星雲の系統的探索」なるタイトルの提案書を提出し、採択されました。目的としては、M57,M27,M97NGC7293...といった夏の時期に観測できる惑星状星雲を片っ端からひとみ望遠鏡で撮影し、中心の白色矮星のスペクトルを測定して分類するといった内容です。

10日と11日の二日間望遠鏡を使わせていただきました。

30mm*60mmのとても大きいCCDチップが液体窒素で−80度ちかくまで冷やされて、1.3mの望遠鏡に据え付けられています。こんかいはそれを使って撮影しました。アマチュアからすれば信じられないような環境です。今回の観測は「きれいな写真を撮る」ことが目的ではないので、得られた像がどうなのかわかりませんが、近いうちにここで紹介します。

観測の様子はこちらです。

f:id:snct-astro:20160815002005j:plain

f:id:snct-astro:20160811210120j:plain

北アメリカ星雲もう一回

 

昼間は酷暑が続いていますが、10日は空気も乾燥して透明度の高い夜空でした。深夜には名取市内で天の川も見えました。先日の撮影は反省点も多かったので、もういちど北アメリカ星雲を撮影してみました。

反省点は二つ。

  1. スカイメモRに自由雲台を取り付けて300mmレンズを載せていましたが、この自由雲台は「百害あって一利なし」とあるサイトでベテランの方が書いていて、その通りだなと思いました。まず構図が定めにくい。雲台を緩めるとレンズがガクンと動いたりします。そんなことをごちゃごちゃやっているうちに、極軸がずれたり。今回から、自由雲台は廃止することにしました。そうすると、写真の上が天球の北になること、という天体写真のルールも自然に守れます。いままでは無視していました。
  2. ピントのもっと追い込むこと。300mmでの撮影では、これまでライブビューでの見た目でピントを合わせていました。これからはピントリングをわずかに動かしながら画像を見比べてピントを追い込んでみます。

そんなで撮影したのが下の写真です。

f:id:snct-astro:20160811141433j:plain

8月9日21:20 北アメリカ星雲 宮城県名取市
canonEOS40D 赤外改造 Nikon ED 300mm F2.8 on SkyMemoR
ISO1600 90sec x 21枚,DF x 10枚, Flat flame処理なし
astronomik CLS CCDフィルター使用

前回よりすこしよくなったように思える。星像もほんの少し小さくなりました。

 

北アメリカ星雲

ようやく晴れたので、先日アップした機材のテストをしてみました。自宅の庭の脇で、とりあえず天頂にあった白鳥座の近くを撮影しました、スカイメモRにニコンの300mmを載せて。極軸合わせのために、kyoeiの微動装置を導入したので、だいぶん楽にはなったものの、自由雲台にのった300mmのレンズで構図を決める作業はかなりしんどい。汗をダラダラたらしながらの作業になりました。

f:id:snct-astro:20160806222755j:plain
8月3日22.30 北アメリカ星雲 宮城県名取市
canonEOS40D 赤外改造 Nikon ED 300mm F2.8->4.0 on SkyMemoR
ISO1600 80sec x 32枚,DF x 10枚, Flat flame x 10枚
astronomik CLS CCDフィルター

*庭先で撮影して、これだけ移ればよしとするべきかもあいれませんが、それでも赤外改造の40Dを使いこなせていない気がします。まず、液晶画面がいかんせん解像度が低いので、ピントがうまく追い込めません。今回は、フードに竹ひごを十字にはって、その回折像をみてピント合わせをしようと思いましたが、うまくいきませんでした。やっぱり専用のばーてぃのふマスクを使うべきでしょうか。

それと、赤ハロ(?)がどうしても出ます。これはレンズのせいなのか公害カットフィルターのせいなのか、よくわかりません

梅雨が明けましたね

この土日、本校ではオープンキャンパスという中学生を呼び込むためのイベントがあり、天文部もPR活動を行いました。こんな活動をしてますよーとか、こんな写真が撮れるのですよーなどと。それを端から見ていた物理の教員に

「それでは、その惑星状星雲はどうして光っているのか?」
「天の川とはそもそも何なのよ?」

などという質問をされ、部員達はいびられていました。

さておき、梅雨の間に学校から「文化部応援予算」というのがどこからか支給され、ちょっとした買い物が出来ました。よかったじゃん、やったじゃん。

そのお金を使い、まずはPoleMasterというものを購入しました。

f:id:snct-astro:20160731171716j:plain

これは何かというと、赤道儀の極軸を合わせるための機材です。ただそれだけの機材なのです。しかしこれを我が部の主力であるNJP赤道儀に使えば、それはすばらしい追尾精度が期待できるはずです。あくまでオートガイドには手を出さないつもりです。

さらには、ポータブル赤道儀のスカイメモRにも、このpoleMasterを利用する方法を考えました(参考リンク)。そのためには、すこし機械工作が必要です。まずは旋盤をつかってこんな真鍮製のリングを作製。

f:id:snct-astro:20160731174140j:plain

これを下の写真のように、スカイメモRに取り付けます。かちゃ。

f:id:snct-astro:20160731174905j:plain

この穴に、PoleMasterがぴったりハマるようになっている分けです。全体像はこんな感じです。

f:id:snct-astro:20160731171542j:plain

極軸合わせの際には赤道儀赤経軸を回転さす必要がありますが、スカイメモRのときは、真鍮リングの横ネジを緩めて、カメラを直接廻します。それでどのくらいの精度で極軸を併せられるか、近いうちに検証予定です。

 

NJP赤道儀 ウエイトの改造

部のNJP赤道儀のウエイトシャフトには角ネジのがきってあり、ウエイトをねじ込む仕組みになっています。このタイプは、取り付ける時もねじ込むのが難しく、また取り外す時はネジの終端でいきなりウエイトが脱落したりするので、キケンが危ない感じです。

 そこで梅雨時、良くやられている改造をやってみることにしました。

f:id:snct-astro:20160624161150j:plain

さびた棒が、従来のウエイトシャフト。直径25mmの金属棒を購入。これは3000円くらいでした。

f:id:snct-astro:20160624173041j:plain
学校にある旋盤をつかって、先端を加工。M15のネジをきります。

f:id:snct-astro:20160627165943j:plain
ウエイトに切ってあるメネジは、26mmのドリルで削り取ります。さらに6.8mmの横穴をあけて、M8のネジを切り、長さ5cmの金属棒とM8の蝶ボルトで固定する仕組みです。

f:id:snct-astro:20160627164236j:plain
こんなふうになりました。残り二つのウエイトにも、同じ加工をします。