底なしの黒い水の上に、闇へ消えゆくように橋が架かっている。渡ってすぐ右手に30m四方ほどの不明な広場。我々が冬シーズンによく使う、はやま湖の撮影地。夜中に巡回してきた警察官の話によれば、自殺の目的で訪れる人も多いのだとか。。。
(はやま湖についての記述、過去記事より引用)
はやま湖から足が遠のいているのは、あまりに不気味で一人で撮影するのが怖いからです。よっぽど「ここしか晴れない」という時しか訪れません。28日はそんな夜でした。
やっぱ、はやま湖だな
— だいこもん (@pochomskii) 2022年1月28日
事前につぶやいても同行してくれる人はなく、「一人はやま湖」に追い込まれてしまったのです。なんということだ。
到着後、撮影地はやっぱり無人。風が強く「ゴウンゴウン」と大気が鳴っていました。よく見ると奥の方にハイエースが一台停まっています。撤収まで終始無言で、人が乗っているのかどうかも定かでなく、かえって不気味。
「一人はさみしいなー」
落ち着かない気持ちで機材をセッティングし、今夜の狙いカモメ星雲を指定したらなぜだかプレートソルブが動きません。APTやパソコンを再起動してもダメ。いつもなら、隣にそーなのかーさんが居て、すぐに解決してくれるのに。堤真一の気持ちでした、「だれかー!」
このトラブルは凡ミスで15分くらいで解決できたのですけど、その後も撮影自体あまり上手くいきませんでした。RASAの星像を犠牲にして疑似スパイダー付きのフードを外し、露光も120秒に抑えます。それでも夜中も吹き続けた強風の所為で歩留まりが上がりません。3枚中2枚は使えない結果でした。
21時撮影開始。カモメが南西側の丘に隠れる25時過ぎまで4時間撮影し、使えたのは1時間ちょっとでした。遠征撮影の不利をひしひし感じます。
そんな風に格闘した今回の結果です
IC2177 Seagull Nebula
Date: 2022-1-28
Location: Hayama lake, Fukushima, Japan
Optics: Celestron RASA11’’, ASI120mm(guide)
Camera: ASI2600MC-pro
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 120s x 16f(left) + 120s x 13f (right), gain 100, 2x1 mosaic
Processing: Pixinsight, Astropixelprocessor, Photoshop
撮影は2枚モザイクです。RASAと2600の組み合わせでは初のモザイク。露光時間の割には解像感や淡いところがよく出てくれて、満足できる結果になりました。うまく出来た時のお約束、各部のアップでニヤニヤします。もしよければお付き合いください:
- カモメ頭部
正確にはここにIC2177の番号が振られているようです。ギザギザの暗黒帯まわりに青と赤のガスがよく写りました。
- バウショック?
画面ちょい左の最も明るい星はβ328の番号が振られた脈動変光星だそうです。その右方向に星ハロみたく見えているのは、オリオンの「バウショック」にも似ています。たとえばナローバンドの画像An artistic impression of IC2177 (The Seagull nebula) | Flickr
をみるとよくわかります。 - Sh2-293からNGC2327にかけて
ここが一番のお気に入りです。Sh2-293の青やマゼンダ、NGC2327のグレーの分子雲の構造が見ていて飽きません。より長焦点で狙ってみたくなる領域です。 - NGC2423の周辺
画面右の横を向いたV字型をしている星の集まりがNGC2423。周辺には褐色の暗黒帯があります。この辺りは露光時間の短さが露呈していて暗黒帯の構造がつぶれているようです。
お付き合いいただきありがとうございました。今回で冬の撮影シーズンはおしまい。次回は銀河ですね。かみのけ座のニードル銀河撮りたいと思ってます。