天文はかせ幕下

光害地で縮緬が出やすい理由

先日のエントリで、縮緬ノイズの処理について報告しました。

そこで、コモンは

「どうも光害地で撮影したとき、縮緬が出やすいような気がする」

と書いたところ、ほしぞLoveログのSamさんから鋭いコメントをいただきました。それが目から鱗で、コモンはガッテンボタンを10連打したいような実に清々しい気持になりました。

その内容を簡単にまとめて、皆さんと共有したいと思います。ポイントは、ダーク減算で消せないクールピクセルの存在です。

 

まずは、空が暗い遠征地での撮影を考えます。下の図は、一枚のライトフレームの輝度分布と、消え残ったクールピクセルの深さを模式図に表しています

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天体写真の輝度分布(光害が小さい遠征地の場合)

光害成分は一様に分布していると仮定して、それをオレンジのラインで表しました。白いカーブが天体の情報で、ダーク減算で消せなかったクールピクセルの輝度の落ち込みを、ブルーの線で表しました。以下では、この落ち込みの深さが輝度に対して一定の割合を持つと仮定して話を進めます*1

さて、同じ対象を光害地で撮影したとします。輝度の分布は次の図のようになっています

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天体写真の輝度分布(光害が強い市街地の場合)

光害で輝度が増えた分だけ、クールピクセルの輝度の落ち込みも深くなっています。

この画像に対してレベル補正を行い、背景の輝度が遠征地での撮影データと同等になるまでダーク側の輝度を切り詰めたとすると。。。

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光害地での撮影データをレベル補正した場合

このように、クールピクセルの輝度はほぼゼロに落ち込んでしまうはずです。

つまり光害成分をレベル補正によって取り除く画像処理によって、あまり目立たなかったクールピクセルが強調される結果になると。これに一定方向のガイドエラーが加われば、暗い線の縮緬ノイズになるわけです。

 

samさん、有益なコメントをありがとうございました。縮緬ノイズ、その正体がだいぶんつかめてきたような気がしています。

*1:クールピクセルの輝度の落ち込みの深さ、実際はだいぶん難しい問題みたいです。Twitterであぷらなーとさんから頂いたコメントによると、クールピクセルの深さは輝度の大きさに対して非線形に変化し、撮影対象によっても変化するなど、なかなかとらえどころがないとのこと