天文はかせ序二段(仮)

天文はかせ序二段(仮)

仙台高専(旧・宮城高専)天文部の活動記録です

RASAの結露対策

先日の電子観望のテストでは、補正板が激しく結露しました。AC電源があったので、ドライヤーの風を吹き付けて除去しておりましたが、それがない場合の対策が必要です。

 

結露対策といえばフードですね。

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よくやられるのは、フードの中に乾燥空気を送り込むことです。しかし口径28cmとなると、空気の供給が追いつくかどうか・・・。

これまでの経験で、ダンボールの吸湿作用はなかなかバカにできないと言いますか、場合によってはシリカゲルよりも効果的なのではと思っています。そこでこのフードは、

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こんな風に、ダンボールの小辺をレンガ状に積み上げています*1。この方法は、ブログ

http://bokujin555.cocolog-nifty.com/blog/2018/05/925-b818.html

を参考にしました(追記)。

作業は部員たちがやってくれました。あと半分くらい!

*1:これはどなたかのブログで読んだ方法です。本来は引用すべきですが、どのブログだったか忘れてしまいました。思い出したらリンクを掲載します

電子観望用の望遠鏡と、そのファーストライト

今回の記事は、以前

にてアナウンスをしておりました件です。今年度、我々の部は財団からの助成金をいただくことができまして、市民向けの電子観望会を宮城県周辺で開催する体制を整えようというわけです。先日、それ用の望遠鏡が届きました。

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大きい!と言いたくて撮ったこの写真は、いまいちスケール感を伝えてくれません。「このくらいかな?」という漠然とした予想はあったものの、それを軽く上回っており私は不安でいっぱいになりました。ともあれ、開封して見ます: 

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セレストロンのRASAです。Kyoei大阪で購入しました。デザインは文句なくカッコ良いです。口径28cm、焦点距離620mmであります。

早速ですが、赤道儀に搭載してバランス感など見て見ましょう。

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NJPに載せて見ますと、それほど頭でっかちには見えませんね。バランスウエイトも三つで足りてよかったです。

そんなこんなで金曜日の夜、撮影テストをして見ました。

RASA 11inchのファーストライト

撮影テストは学校の屋上にて。ZWOのASI294MC Proと光害カットフィルターを組み合わせ、SharpCapで電子観望のテストをしました。日付は5月17日。空の透明度はなかなか高かったですが、ほぼ丸い月がガンガンに輝いていました。

はじめに、本校の位置する宮城県名取市の光害状況を確認しておきます:

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この数値は"Brightness"を見れば良いのかな?1.11mcd/m^2は、ふだん観望を行っているはやま湖の5倍、仙台中心部の1/3くらいです。

f:id:snct-astro:20190518154850j:plainテストは、新部長のヒヨリくんと行いました。遠くのビルに望遠鏡をむけてピントを合わせております。このあと日没を待っていたら、新部長は「ちょっと遅いんで。腹減ったし・・」と言って帰っちゃいました。あらら

 

そんなわけでいつも通り一人たぜ!元気出して、いきますよ!!まずは天頂付近のM51、ライブスタックによる結果です!

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すごい!渦巻きが見えるぞ!!完全に眼視を超えているではないか!つぎは、M81&M82を見てみよう。

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うーん。すごい!ヤッホーい!!

顧問は一人で興奮して、テストは日付が変わるまで続いたのでした・・・。

まとめと課題

1) 当夜は月明かりが強烈で、通常の眼視ではM51やM81といった銀河は、その存在すらわからないであろうコンディションでした。にもかかわらず、あれだけ鮮明な姿がディスプレイに現れたのは、本当に驚きでした。これなら観望会もなんとかなりそうです。散光星雲や惑星状星雲なら、もっと鮮明に観察できそうです。

2) SharpCapによるライブスタックはまだ使いこなせていなくて、いろいろ弄っていると急に画面が真っ白になったり真っ黒になったりと混乱しました。基本的には、画面右側のヒストグラムのピークが1/2くらいになるよう調整した後ライブスタックをおこない、そのあとトーンカーブを弄って画像を強調するという形をとりました。

3) うえのキャプチャをみてわかる通り、周辺減光がなかなかキツイので、フラット補正もできれば、さらにもう一段、星雲を強調できそうです。有料版を購入すればライブスタックをやりながらフラット補正もできるのだろうか?

4) 光害カットフィルターは、IDASのNebula BoosterとLPS-D1をテストしました。銀河を観望する限りにおいてはそれほど効果は感じませんでした。次回、散光星雲を観るときに効果を期待。

 

 

 

星の"ringing"の補正法のメモ

先日にAくんからお借りした、Sigmaの”Bokeh master”こと105mm F1.4 Artですが、撮って出しのRawを見ると、星の周りにわずかな輝度の落ちくぼみが見えました。

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理由は不明。単にレンズを使いこなせていないのか?なんとなく6Dのセンサーとの組み合わせの問題のような気がします。どちらにしろ、ピクセル等倍にしなければわからない乱れであり、この後の強調を考慮しても無視できるレベルではありました。

しかしながら、そもそもこういった”ringing”は、星マスクを使った強調で失敗したときによく出てくるものですよね。それには経験があり、ちょっと思いついたこともあったので、練習がてらにこれを処理する方法を試して見ました。

ハイパスを使った"ringing"の補正

基本的な考え方は、ハイパスによるディテール強調の「逆」を行って、選択的にディテールを消すというものです。輝度の落ちくぼみは、特徴的に1〜2pxの大きさを持っているので、同じピクセル数でハイパスを掛けた画像を、元画像の上のレイヤーに置きます。

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ここでは大きさを1.9pxにしましたが、この値によって結果が大きく変わるので、微妙な調整が必要かもしれません。

次に、この画像を反転させます:

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反転は「イメージ>色調補正>階調の反転」で行えます。そうしたら描画モードを「オーバーレイ」にして元画像に重ねます。これは「ソフトライト」や「ハードライト」でも良いかもしれません。効果を見ながらいろいろ試します。

これで終わりでも良いのかもしれませんが、しかしこのままでは、微光星も一緒に消えてしまいます。そこでトーンカーブを用います

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反転したハイパス画像にクリッピングマスクで上の画像のようなトーンカーブを重ねます。すると、微光星だけが復活して来ます。

最後に、処理前と処理後の写真を並べて比較。

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おしまいです。

 

sigmaの”bokeh master”レンズ

本校の卒業生のA君は、在学中は写真部に属していて、われわれ天文部とも交流がありました。彼は大学院に進学後、ある大手のレンズメーカーに就職。連休の帰省のついでにレンズを持って遊びに来てくれました。

彼が持って来たレンズは、最近の界隈で話題の Sigma 105mm F1.4 art.

先日の蔵王では、これをちょっと拝借して、撮影をすることができました。どちらもSyMemoRでの3分露光放置撮影です。天の川の周辺を撮影した結果をご紹介いたします。

 

Sagittarius and surroundings

Date: 4th May 2019, 1:00~
Location: Miyagi,
Camera: Canon EOS 6D
Optics: Sigma 105mm F1.4 Art(F2.8)
Exposure: 180sec. x 30(ISO1600)
Guide: Kenko SkyMemo R

まずは天の川の中心部。105mmレンズは三脚座がくるくる回転するので、あえて「北が上」を破った撮影です。

 

Rho Ophiuchi cloud complex

Date: 4th May 2019, 1:00~
Location: Miyagi,
Camera: Canon EOS 6D
Optics: Sigma 105mm F1.4 Art(F2.8)
Exposure: 180sec. x 51(ISO1600)
Guide: Kenko SkyMemo R

次は、例の領域です。ここはこれまでで3回目の撮影ですが、一番うまくいきましたね。

 

drizzleでソンブレロ銀河の円盤の文様を写し出せるか?

前置き

 

M104、ソンブレロ銀河は、南に低く見えていて、また小さいためにちゃんと撮影するのは難しい対象です。

WikipediaのM104の項目には、ハッブル宇宙望遠鏡によるイメージが掲載されています。

この写真のようにまでは行かないまでも、中央を貫く暗黒帯の詳細と、円盤内部の文様をすこしでも映し出すことを以前から目標にしていて、先日の蔵王では満を辞して撮影しました。結果を再掲しますと:

Sombrero Galaxy M104

こんな感じでした。焦点距離1200mmのAPS-Cセンサーでの撮影です。小さい銀河です。クロップして等倍にした像は以下のとおり:

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まあ、広大な空間の中にぽっかり浮かんでいるような銀河の様子も好きですが、円盤の構造はほとんど見出せません。かろうじて暗黒帯がモヤモヤしているのがわかる程度でした。やっぱり無理かー、まあそんなもんだろうと、しかしちょっと落ち込んでおりました。

そういえばやり残していたことがありました

そもそもM104の円盤の構造まで映し出した写真は、日本ではあまりみたことがなくて、私の知っている範囲では別格のThe Skyの方(The SKY2016年5月ころのblog)を含めて数例ではないでしょうか?

とはいえ、先日のは空のシンチーレーションも小さく、また宮城では最も標高の高い蔵王での撮影だったため、今後何年間かを見通しても、M104を撮影するのにあれ以上のコンディションはしばらくないだろうと思われます。するともっと焦点距離を伸ばさないと無理なのだろうか?

そういえばやり残していたことがあって、それはDSSの”drizzle”処理です。これはディザリング撮影などをしている場合に、スタックするそれぞれの画像からサブピクセルの情報を補間して、解像度をあげるというものです。これで焦点距離の短さをカバーできるかも。

さっそくやってみました。

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DSSからの出力。左は通常のスタック方法,右はx3 drizzleのスタック後画像を1/3に縮小したもの

左が通常のスタックで中心部をクロップしたもの、右が3xdrizzle処理をした後、1/3に縮小して同じようにクロップしたものです。ほとんど変わらないじゃん、と思われうかもしれませんが、私は3xdrizzleのほうはわずかに円盤に構造が明瞭であると思いました。。。。いや、見えます!

 

でてこい!と案じながら強めのシャープ処理を施して強調してみました。

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うん、確かに円盤の構造が見えているではないですか。やったぜ。

次回はもっと焦点距離を伸ばして、フォーサーズのカメラなど導入して再挑戦したいですね。ともあれ、長年の目標は達成したとしておこう。

 

ちなみにdrizzle処理を施していない画像に、同じようなシャープ化処理を施した結果がこれ

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まあ、これも円盤の構造が見えなくもないですね。でも拡大して見るとdrizzle処理をした方がわずかに構造が見えている気がします。

Drizzle処理そのものが、サブピクセルの情報を引き出すから構造が見えたのか?

別の可能性としては、シャープ化処理では円盤の構造を出すために10pxくらいのハイパスをかけていましたが、3xdrizzleではそれが25~30pxくらいになるので、ピクセル数が大きい方がハイパスの効果が出やすかったという可能性もありですね(ハイパスってのは微分だから?)

台風と渦巻銀河

気の抜けた内容で恐縮ですが、先日にM101を画像処理をしていて、台風の雲と銀河には類似点が多いなとつくづく思いました。

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2013年台風27号とM101(台風写真はhttp://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/より)

上の写真は、特にM101に形が似ていた2013年の台風27号です。ずーっと眺めていると、ただ形が似ているというだけでなく、様々な箇所が対応しているように見えて来ます。思いつく限り並べてみますと:

  • 台風の雲の分布密度と、銀河の星の分布密度の対応
  • 台風の特に雲が分厚くなっている中心部と、銀河の黄色っぽい部分の対応
  • 台風の目と、銀河中心核の特に星が集中して明るい部分の対応
  • 台風の局所的に発達している積乱雲(腕の周辺部でモコモコしている部分)と、銀河のHII領域(赤く光っている部分)の対応

特に積乱雲の分布の仕方は、HII領域のそれと驚くほど似ていると思いませんか?

台風では、水蒸気が圧力による中心力で回転しているのに対して、銀河は質量が重力による中心力を受けて回転しているわけです。そう見ると、似ているのも当然かもしれません。

すると、台風の形がどれも似通っているのに、銀河の場合は実に様々なことがかえって不思議に思えて来ます。

 

 

5月:蔵王山での観測遠征記 その2

 以下の記事の続きになります;

当夜の夜空は透明度も良くてシンチレーションも良好ながら、時折強まる風のせいでM104の撮影時にはガイドが荒れまくり、

「なんでよー(泣」

と半ベソ状態でした。連夜の遠征で精神的な疲れも溜まっていて、長焦点は諦ようかと弱気になりましたが、一緒に観測していたカノープス氏に勧められてM101も撮ってみました。するとなぜかよく分からないけれども急にガイドが安定。風が吹いても歩どまり100%で星が点像になるではないですか。

どうも、シンチレーションや風以外に、赤道儀の体勢もガイドの精度に大きく影響するようです。「オートガイドは運ゲーム」と思っておいた方が精神衛生上良いのかもしれません。

M101

M101

Date: 4th May 2019, 0:00~
Location: Miyagi, Zao
Camera: Canon 60Da
Optics: Takahashi MT-200 1200mm F6, MPCC Koma corrector
Exposure: 360sec. x 18(ISO3200)
Guide: Takahashi NJP with MGEN

これは結構「きたー」と言って良い映りではないかと自惚れています。いやー、撮影して良かったです。

しばらくしてカノープス氏も帰宅され、高専関係者だけでうだうだと撮影を続けました。

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こんな記念写真も撮ってみました。左から、顧問ナガヒロ、A氏、ハタナカです。

天の川もだいぶん立ち上がって来て、そろそろ薄明となり、解散しました。顧問は、ハタナカを自宅まで送迎して疲れ果てましたけれど、おかげで帰り道にとても美しい阿武隈川の朝焼けを見ることができました。

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それではまた(Sigma105mmArtでの撮影結果は、後日ご紹介いたします)