天文はかせ幕下

梅雨入りじゃ

雲じいじゃ。ワシが東北地方の梅雨入りを宣言するぞぃ*1

いつもここに駄文を書いている顧問は

「ポチリヌス菌の予防接種を打ってきます・・・」

とか言って出かけていきおったわい。大した給料取ってるわけでもなし、余計な心配だと思うがのぅ、ウヒョウヒャ。

東北地方の連中よ、雨ばっか降るからって塞ぐでないぞ。

山瀬が吹いたら、蔵王へGO。
山瀬が吹いたら、蔵王へGOじゃ。

 

 

 

 

*1:雲じい独自の見解です

sharpstar15028とフルサイズカメラで、蒼い馬星雲

まずは結果

昨年導入したSharpStar 15028HNT、これを使って撮影したのはまだ2点しかなく、次の二つです。

The right (or left?) wing of the seagull negula__M38 and IC417

一つ目はナローバンドの習作で、お気楽ジョガーさんからお借りしているASI183mmとフィルターで撮影したかもめ星雲の右翼。二つめはのちに丹羽さんとの合作になる、ASI2600MCでのM37とIC417付近です。センサーサイズはそれぞれ1インチとAPS-Cです。

これに対して今回は満を待して、フルサイズセンサーでの撮影を決行しました。まずはリザルトです

IC4592 Blue horse

Date:2022-5-24 22:56~26:27
Location: Mt. Zao (1587m), Miyagi
Optics: Sharpstar 15028HNT(420mm F2.8)
Mount: iOptron CEM70G
Camera: Canon EOS 6D(HKIR)
Exposure: 120s x 92f + 10s x 20f (ISO1600)
Guinde: ASI120mm PHD2

天の川に近い微光星の多い領域、小さな星のシャープさを重視した仕上げを目指しました。さらに青の彩度を許容範囲ギリギリまで上げています。全体的にはとても満足のいく結果となりました!

撮影後記

15028HNTとフルサイズの組み合わせ

EOS6DでISO1600、1枚当たり120秒露光で撮影しました。それでヒストグラムのピークは半分くらい。標高1500m越えの蔵王では南の低空が十分暗いにもかかわらずです。これだけ露光が短いと、さすがに歩留まりもほぼ100%でした

 

こちらは1枚の撮って出し。

 

つぎに周辺400pxの切り出しです。

右下だけ星がオニギリ形状になっていて、主鏡の固定か光軸をもう少し見直すかで改善できるのかもしれません。

 

マスターフラットの等光度線。

上側はボックスケラレ。ピークはすこし左に寄っていて、これも調整の余地ありです。ちなみに、15028HNTのように明るい反射鏡筒では、斜鏡がオフセットされていますが、これによって輝度のピークが中心に、オフセット方向の左右で輝度の勾配は非対称になるはずだという理解です。だいたいそうなってますね

 

最後にこちらは、キャリブレーションとディベイヤー後の一枚画像をSTFで仮ストレッチしたものです。

フラット補正はこのくらいの精度で大丈夫で、DBEで十分補正できました。

今回の結果を得て、15028HNTはフルサイズでも十分に活用できる鏡筒だという感想をもっています。スケアリング調整はやっておらず、マウントにTリングを取り付けてカメラを固定しただけです。光軸の調整はあるていど習熟する必要はありますが、RASAとかに比べると断然使いやすいです。

遠征の記録

今回、遠征も楽しかったので書いておきます。

仕事を17時に終え、荷物を積んでGO。自宅から蔵王山頂までは車で1時間ほどです。

いやー、この夕焼けはテンション上がります。でも実はこの時、ちょっと仕事疲れを感じていました。

私は今年45歳です。

「これから徹夜で撮影するにしては、ふうー。ちょっと体が怠いなあ。」

車を走らせながら、つい深呼吸してしまいます。そこで今回、実は私の天文人生で初めての試みを実施したのです

そう、行きがけに蔵王ふもとの遠刈田温泉の公衆浴場に寄りました。44℃とめちゃくちゃ熱い神の湯に10分ほど浸かって、体の芯にわだかまっていた疲労感が吹き飛びました。たぶん血行が悪いんですね。この日の目標、蒼い馬星雲の撮影開始は22時ころ。到着後少なく見ても3時間は時間の余裕があるからこそできたことでした。

こんなたっぷりの時間の余裕が、楽しい遠征の秘訣だと最近は確信しています。

撮影時も無理はせず、赤道儀をたくさん並べることは避けメインの一台に加えてスカイメモRを出す程度にとどめています。撮影し損ねた対象は、また来年撮ればいいやというスタンスです。自分の場合、よっぽど気合いを入れないと、2台の赤道儀にオートガイドを使うことができません。

撮影地の刈田リフト駐車場では、いつも一緒のそーなのかーさんと、今回はお久しぶり柊二☆ (@shuji_acure) | Twitter さんとご一緒し、コーヒー飲みながらゆっくり談笑しました。

不思議と星が多く流れる夜でした。

5月連休の仙台平遠征

2022年の5月連休は新月と重なりました。

ぐらすのすち君、そーなのかー さんと私、3名の予定が合致したのは5月3日。この夜、空は雲に覆われ天体写真の成果はゼロ。しかし顧問の心に不満はありませんでした。

なぜなら動画の撮影をしていたからです。

youtu.be

動画の撮影記

撮影地は阿武隈高原に位置する仙台平(せんだいひら)駐車場。今回はめずらしく「昼間の映像」があるのがアピールポイントです。今までは,暗くなってから撮影地に到着する場合がほとんど.遠征動画も真っ暗で判然としない映像ばかり並べていました.

最近は顧問の子供たちも大きくなり,撮影に行く時も快く無関心に送り出してくれるようになりました.ありがたいことです.この日も昼過ぎに自宅を出ることができて,明るいうちに撮影することができました.

仙台平への到着は5時過ぎころ.ねらいのさそり座が登ってくるまでたっぷりの待ち時間があります.ひたすら動画を撮ってました.

カメラを回すワタクシ,ぐらすのすち君の動画よりキャプチャ

笑顔のそーなのかーさんとぐらすのすちさん

暗くなってからも,3人並んで良くわからないトークを展開したり.星沼会のメンバー(丹羽さん)の誕生日を祝う小芝居をうったり,ぐだぐだと時間を過ごします.

ふと空を見上げると,夜空が全面曇っています.

「ありゃー」

しかし顧問は気づきました

「ぐらすのすち君が,曇ってもニヤニヤしているのは,こういうことであったか」

と.つまり動画の撮れ高が上がっていれば,天体写真が撮れなくても,ある程度満足できてしまうのです.これは遠征撮影のとても良い保険になります.皆さんにもお勧めします.

結言

遠征動画.youtubeにアップするのはちょっと気恥ずかしくもあったり.また第3者からみて果たして面白いのかどうか?不安になったり.そんな気持ちを振り払いつつ「楽しそうだな」と思ってもらうことを目標に,今後も編集技術も磨いていきたい所存です.

 

同日に同じ場所で収録したぐらすのすち君も動画もご紹介.ただクリップを時系列に並べただけの顧問の動画と違い,映像制作のセンスの差が見て取れると思います.

youtu.be

星沼会メンバーのAramisさんの最新動画もどうぞ.こちらも同じ日に小山ダムでの収録されたもので,楽しそうです.顧問とぐらすのすち君も音声だけ出演してます.

youtu.be

 

天文リフレクションズの編集長も遠征動画の重要性に着目されているようです.最近「星空遠征記」の連載が開始されました!

youtu.be

youtu.be

360度カメラでの車載動画が楽しくてワクワク! もう一人カメラマンがいるかのような映像もあってかなり凝った作りになっています.

 

アイキャッチ用,撮影ぐらすのすちくん.

 

 

 

f=250mm付近激戦区レンズ。星像対決の巻

後日追記:このエントリ、ピクセル等倍マニアの皆さんから反響いただき、画像を提供いただいています。今後、比較する光学系を増やして随時更新しますので、チェックしてみてください。
-Sigma 300mmF4 apo tele macroのデータを追加しました(2022/5/31)
-Askar FRA400mm + reducer 280mm F3.9のデータを追加しました(2022/7/6)
-Askar FRA400mm + 直焦点、AskarFRA300mm F5のデータを追加しました(2022/7/9)
-CanonEF300mmF2.8 + CanonEOS6Dのデータを追加しました。(2022/7/25)
-Born55FLとVixenFL55ssのデータを追加しました(2022/7/26)

 

全国津々浦々に点在するピクセル等倍マニアの皆さま、こんばんは。今回はF=250mm付近の3種類の光学系について、その星像比較をやってみたいと思います。よろしくお願いいたします。

比較の対象は以下の通りです:

  1. William Optics RedCat51II 250mm F4.9
    まずは優勝候補のRedCat51IIです。天体写真専用の設計で非常にシャープと評判のレンズです。最近は使用されている方も多いのではないでしょうか。ちなみにお値段は税込み121000円98000円です(2022年5月現在)。


    画像はKyoeiOsakaのサイトより引用

  2. Takahashi FS60CB+C0.72xレデューサー 255mm F4.2
    次はベテラン選手。タカハシ製ながら実はリーズナブルなFS60CBです。レデューサーを組み合わせて焦点距離255mmとなります。トータルでおおよそ130000円のお値段です(2022年5月現在)。


    画像はKyoeiOsakaのサイトより引用

  3. Mamiya Apo-Sekor 250mm F4.5
    顧問が数年前から愛してやまない往年の中判カメラ用レンズです。現在は販売されていませんが、ヤフオクで数万円で手に入り、3万円ほどのマウントアダプターと合わせて利用できます。ただし当時の価格は30万円くらいだったとのことです。
    f:id:snct-astro:20180908153136j:plain
  4. Canon EF200mm F2.8L USM @F4
    キヤノンのフルサイズ用単焦点レンズで、こちらも多くの方が使われている評判が高いようです。F4に絞っての使用です。発売当時(1996年)の定価は129800円、現在では中古市場で3万~4万前後で手に入るようです。
  5. Sigma 300mmF4 apo tele macro
    シグマ製の単焦点マクロレンズです。これも検索すると、天体写真目的で使用されている方が多数いらっしゃるようです。30年ほど前に販売されたレンズで、現在では中古価格1万円前後で取引されており、ここのラインナップでは最もリーズナブルな光学系です。

  6. Askar FRA400 + Reducer F3.9 280mm
    最近、導入する方が増えているAskarのフォトビジュアル鏡筒です。専用のレデューサーを取り付けると280mmF3.9の光学系になります。この鏡筒はスポットダイアグラムが公表されていて、中心像は20~40マイクロメートルの星像です

    シュミットのサイトより引用

  7. Askar FRA300mm F5 pro
    日本の代理店では販売されていない鏡筒。一連のシリーズのなかでこれだけ”pro”と銘打たれているのはどういう意味なのかわかりませんが、公開されているスポットダイアグラムは、中心部で20μmと、シリーズの中で最も小さくなっています。


    Askarのサイトより引用

  8. Canon EF300mm F2.8 @F4
    こちらは言わずと知れた憧れの「サンニッパ」。一時期は、これを使って天体を撮影していた方も多かったと思います。現在は販売終了とのことで、中古でも高値が付いています。今回はF4に絞って比較します。


    サイト”キャノンカメラミュージアム”より引用

  9. Borg55FL 250mmF4.5
    コチラは国産のフローライトレンズです.フルサイズで使用する場合は専用のレデューサーが必要なようですが,今回はフォーサーズでの比較なので補正レンズなしです.Borgは顧問も昔使ってみたいと思っていたのですが,レンズやヘリコロイドの組み合わせの難解さに根負けした覚えがあります.


    トミーテックサイトより引用)

  10. Vixen FL55ss + flattner+ reducer
    コチラも国産の望遠鏡.記憶に新しい比較的最近販売されたフローライトの光学系です.フラットナーとレデューサーを装着した構成で比較します.

60CBとRedCatのデータはそーなのかーさんから、EF200mmF2.8LのデータはRambさんから、Sigma300mmF4とAskarFRA400のデータはかのーぷすさんnabeさんから、AskarFRA300のでーたはおののきももやすさんから、EF300mmF2.8のデータはタカsiさんから提供いただきました。Borg55FLとVixenFL55ssのデータはMarshallさんからいただきました。ありがとうございます。

 

比較の条件

以下の撮影データで比較を行います 

それぞれ前処理無しでディベイヤーを行った後、カラーバランスのみ整えてからPixinsightのSTFで仮ストレッチした画像を比較します。

ピクセルサイズとセンサーサイズの異なるカメラは、294mcを基準にして、ピクセルサイズの比の分だけ拡大縮小したあと,4/3センサー相当にクロップして比較しています。

そして結果

まず全体像です。(すべて4/3センサー相当にクロップしています)

 

 

次に300x300の中心と、4/3センサー相当の周辺像です

以下、中心付近の像のみの比較です(小センサーでの使用なので)。

RedCat 星も小さく丸く、収差もほとんど見えません。ピクセルサイズ4.63㎛の294mcでは偽色が見えるくらいにシャープです。

60CB 星の形はきれいな円形ですが少し肥大していて、赤ハロ・青ハロも強いです。偽色は見当たりません。

MamiyaAposekor FS60CBに比較して星は小さいですが、RedCatよりは大きく見えます。また形が丸くなく歪んでます。偽色が見えるくらいにはシャープな星像が得られています。若干の緑色のハロが出ているようです。

EF200mmF2.8L@F4 カメラレンズとは思えないくらい相当にシャープです。星の大きさはApoSekorと同等か若干劣るか? ほぼ同等です。赤ハロが少し目立ちます。このレンズも入手できる価格を考えると相当に優秀ですresampleによる劣化の影響が出てしまっているかもしれません。

Sigma300mmF4 macro はシャープさにかけるようですが、色収差はとても小さいことが分かります。星の形は若干円形から乱れているように見えます。価格を考えるとかなり優秀です

AskarFRA400+reducer はレデューサー装着ですが、公証のスポットダイアグラムどおり、最も小さい星が4pxほどで写っています。星は丸くて色収差はほぼ見当たりませんでした。星像はRedCatなどと比べると若干大きいように見えます。

AskarFRA300mm Pro これもかなりシャープです。いただいた画像はフルサイズカメラので撮影ですが、周辺と中心部の星像にほとんど差が見られません。

CanonEF300mmF2.8@F4 中心の星が少なくわかりにくいですが,星像はかなり小さいです.色収差も確認できません.一方で周辺像は倍率収差が目立っているようです.

Borg55FL 中心の星は,ほかの光学系と同様にシャープですが,ほんの若干青ハロの影響があるようでした.周辺はわずかですが星が肥大しているように見えます.

Vixen FL55ss+reducer+flattner 中心の星はほかの光学系と同等にシャープで,この画像では真ん中に明るい星が入ってますが,形はきれいです.周辺は,星が若干肥大している様子が分かります.

 

以上を勘案して、

星像:Redcat>EF200mmF2.8L≒Aposekor>FRA400+Re>FS60CB>sigma300mmF4

色収差:RedCat>ApoSekor>EF200mmF2.8L=FRA400+Re>sigma300mmF4>FS60CB

皆さんに画像を提供いただいてから、正直にいうと差が分からなくなってきたので、ランキング付け中止しました。

ここに紹介した鏡筒は、どれも性能において評判の高いものばかりです。直接に比較してみて感じたのは、公証のスポットダイアグラムほどの差が、実際の画像では確認できない、ということです。

たとえばFRA300中心の星像は20㎛、FRA400は40μmとされていますが、上の画像を見る限り、星像の大きさに2倍の開きがあるようには到底見えません。シーイングの差が顕著に表れるような焦点距離ではないですし。

スポットダイアグラムはあくまで幾何光学的な計算からなされたものなので、あくまで目安程度に見ておくのがいいのかもしれません。

蛇足、戦い終えて

全般的にみて、RedCatの性能が素晴らしいのかな、と感じました。

顧問が愛用するMamiyaAposekorはまあまあ善戦したのではと思います。もしフルサイズでの比較だったら中判レンズの優位点が表れたかもしれません。

FS60CBはさすがに設計の古さが出てしまったようです。でも星の形はきれいで、ピントを合わせたGチャンネルだけに限定すれば下の写真のように鋭い星像になります。モノクロRGB合成を前提にすれば、非常にシャープな画像が得られると思われます*1。。

EF200mmF2.8L@F4も中古価格を考えると相当にリーズナブルですね。

カノープスさんに提供いただいたFRA400にレデューサーを付けた光学系の聖像についてですが、その後nabeさんから

「FRA400は直焦点が至高なんですよ・・・」

とそっと教えてもらいました。レデューサー無しですと焦点距離は400mmとなって、ここに紹介した光学系と同列には比較できませんが、参考までにその製造を掲載いたします。撮影鏡筒はASI2600MC、300秒露光です

そして300x300ピクセルの切り出しです。

焦点距離が2倍近く伸びている分、シンチレーションの影響で光学系の性能と関係なく星が大きく写る傾向があるはず(&冬の対象なのでなおさら)ですが、星像は上と比べてあまり変わりません。これもかなり素晴らしい鏡筒ですね

 



250mm前後のレンズには、ほかにもAskarのACL200など魅力的な光学系があります。それらも使う機会があったらここに加える形で、比較してみたいと思っています。また、近くAskar FRA300+レデューサの画像を提供いただいて、ここに載せる予定です。

 

サムネ用





*1:ただしLRGB合成ではやはり星像は肥大してしまうと思われます

新たな部員を迎えて

こんにちは。
天文部3年のAです。久しぶりに部員がブログを書いています。
(最近ほぼ先生の個人ブログだったと思います...)
春になり、天文部にも新入部員が入りました!嬉しい限りです。
今回は1年生を含め9人で行った観測についての話をまとめたいと思います。

ー4月22日(金)ー

天気は晴れ。春の穏やかな風が吹いている。
目的地は「はやま湖」。
バス釣りの名所の1つで、多くの人が訪れる。
自然に囲まれた場所で、秋は紅葉が美しい。
行ったことのない場所は、とてもワクワクする。

出発時刻は17時頃。学校から「はやま湖」までは車でだいたい1時間。
移動中は和やかな雰囲気である。1年生も会話に花を咲かせていた。

先生が唐突に言った。
「そういえばですね、はやま湖には1人で行きたくないんですよ。」
(⁉)
どういうことなのかと思い、続きを聞いてみた。
要約すると、20時頃になると道を明るく照らしていた街灯が消え、周囲が暗くなる。橋の前に置いてあるオブジェ?のようなものが「人」に見えて大変紛らわしい。とにかく不気味に感じる場所ということらしい。
言われてみれば確かに、道幅も狭く曲がりくねっていて、民家は少し離れた場所にはあるようだったが人の気配はあまりない。
私も少し恐ろしくは思うが、それよりも、先生が「1人では行きたくない。」と言ったことに驚きである。個人的に先生に抱いていたイメージは「撮影のためならどこへでも行き、暗闇も怖くない。撮影にかける熱量がすごい。」という感じだった。言い過ぎたかもしれないが、少なくとも幽霊という非科学的なものは信じていないと思う。実際、幽霊を完全に信じているといった様子はない。それでは一体、何が怖いのか。
暗闇というだけで既に怖いと思ってしまう私としては、不思議である。
しかし、この後の出来事を考えると、この謎は解決?するのかもしれない...。

ーAZ-GTiー

動画でも軽く紹介したかもしれないが、新しく部費で買った、自動導入経緯台である。
「制御をスマホアプリで行うことができ、セッティング作業さえしてしまえば、目標とする天体の導入や追尾も簡単で、初心者にも使いやすい。」という商品のようだ。
今回の観測で初めて使う機材で、大変楽しみだ。
しかし、このスマホアプリというのがなかなか曲者らしい。
(私は興味はあるものの機械に疎いため、邪魔にならないよう端に避けつつ、頼もしい仲間に任せていた。)
結論から言うと、1回目から使いこなすということはできなかったようだが、次回はAZ-GTiを用いての観測を楽しめるよう、解決策を考えつつ対応していきたい。
私も使ってみたいという気持ちはあるため、徐々に使い方に慣れていきたいと思う。

ー?ー

ここまで何事もなく、のんびりと観測を続けていた。
しかし、事が起きたのは先生が席をはずしたときのことである。

「ウワァー...!!!」
「(?)今、何か聞こえなかった?」1年生が尋ねた。
聞こえなかったことにしたかったが、その場にいた部員全員が聞いたようである。
そう、確かに男の叫び声が聞こえたのだ。先生の声かということまでは分からなかったが、さすがに心配だ。みんな肝が据わっているようで、面白さ半分、不安半分といった様子で見に行こうと言い出した。
さすがに全員行くのもおかしいと思う。私を含め4人はその場に留まった。
・・・
少しして、様子を見に行った部員たちが戻ってきた。先生も一緒である。
先生は平然としていて、特に何かあった様子はない。無事で何よりだ。

後で聞いた話だが、先生もあの時、叫び声を聞いたらしい。
だが、「あぁ。部員がいたずらでもしているのかな。」と思ったそうだ。
少し不思議である。部員全員が聞き、先生も聞いた叫び声。
私は先生が何かにつまづいたとかそんなことだろうと思っていた。
でも、話を聞いた今は違う。私たちの誰も叫んでいない。

もちろん、ここで霊的なものだろうと決めつける気はない。
最初に書いたとおり、「はやま湖」から少し離れたところには民家がある。
そこの住人が叫んだだけという可能性もあるのだ。

夜の静かな自然の中、人の声はどこまで届くのだろう。

暗闇の中、私たちの乗った車は古びた案内板の横を通り過ぎていく。

4月22日観測での集合写真

ーまとめー

ここまでお読みいただきありがとうございます。
書きたいことが多くて長くなってしまいました。
(これでも短くしたつもりだったのですが...)
今回の観測はこのような感じです。読み返してみると、なんだか天文部ではなく、オカルト部のような感じがします。内容に偏りが生じてしまいました。もちろん天文部なので、天体観測もしています。途中不思議なことも起きましたが、1年生も「初の天文部としての観測」楽しんでいたようで嬉しいです。
頼もしい仲間が増え、天文部としての活動も今後より活発になっていけたらいいと思います。

 

ー追伸ー
とても個人的なことではありますが、4月は私の誕生月です。今年18歳になりました。18歳になったということは、親に連絡しておけば、夜も時間を気にせず、天体観測を楽しめるのかもしれません。嬉しいです。

 

「淡いよ!」な天体の呼び名の分類

星雲を分類する名称は、重複していたり、厳密に区別できなかったり、専門用語とアマチュア用語が混じっていたりで、混乱しやすいなと思っていました。先日のM63のエントリでも、銀河周りの恒星ストリームを「IFN」と書いてしまって、指摘をうけました。

名前は大事ですので、ここでアマチュア用語も含めて整理し、できれば皆さんの指摘をいただきながら更新していきたいと思います。以下は主に「天文学辞典」やを参考にしています。

淡い天体の呼び名の分類(2022年4月 Ver. 0.2)

分子雲/暗黒星雲

主に水素が分子の状態で分布していて、かつ低温なのでHα輝線などを出していないもの。次いで一酸化炭素(CO)を多く含む。低温であるためには、周辺の星の光を十分に遮るくらいに密度が濃い必要がある。なので周囲よりも暗く見えている。COの回転に伴う励起状態基底状態に落ちる時の電波(波長3mmほど)によって観測できる*1。特に完全に星を遮るくらい密度の濃い領域は暗黒星雲と呼ばれる。「星雲」といっても星ではない。

分子雲 / 暗黒星雲

銀河巻雲/IFN/H1ガス雲

密度が薄い水素は、星の光をモロに受けるので高温になり、分子として安定できず、原子の状態で宇宙空間に分布する。よって「分子」雲とは区別する。写真では向こう側の星が透けて見えるくらいに写る(?)。あくまで天の川銀河内に分布しているもので系外銀河の周りの恒星ストリームや銀河ハローとは違うことにも注意する。天の川銀河全体の光を集めて(≒Integrateして)て淡く光っていることから、Integrated Flux Nebua (IFN, アマチュア用語?)と呼ぶことも。天文学では、中性の水素原子をHI書くことから、これらをH1ガス雲と呼ぶこともある。

IFNの例1

黒目銀河近くのIFN

輝線星雲/HII領域/赤ポチ

周辺の星からの放射線をうけて電子が引きはがされ(電離して)た水素が集まっている領域。これら電子と水素が再結合するときに発するHα線を「輝線」というので「輝線星雲」と呼ばれる。「星雲」といっても、星ではない。また、天文学では、電離した水素のことをHIIと書くので、HII領域とも呼ばれる。系外銀河に分布する赤ポチ(アマチュア用語)も起源は同じ。

H2領域

赤ポチ

反射星雲

周辺の星のから受ける光のエネルギーが低くて、電離して輝線を発することはできないが、その光を反射したり散乱したりして見えている星雲。星雲というけど星ではない。主に炭素や鉄ニッケルから成るとのこと(wikipediaによる)

反射星雲の例

銀河ハロー

渦巻き銀河の円盤部分のさらに外側に分布していて、銀河全体包むように丸く分布している。星や球状星団から構成されている。

銀河ハロー

恒星ストリーム/潮汐(tidal)ストリーム

銀河の過去の衝突によって、小さな銀河が崩壊して大きな銀河から受ける重力によって引き延ばされ、周辺に分布している構造。銀河ハローと区別されるのかどうかはよくわからない*2

恒星ストリームの例1

恒星ストリームの例2、見えます?



*1:丹羽さんからの指摘で追記

*2:恒星ストリームの名は、ぐらすのすちさんに教わりました

M63とそのハロ

トータル800分のデータを一つにまとめて処理しました。2022年版ひまわり銀河最終バージョンは、そーなのかー氏との合作です。その内訳は以下の通り

  • MT200(1200mmF6)で4時間露光(4月4日)
  • 4RASA11''(620mmF2.2)で4時間露光(4月12日)
  • R200SS+externderPH(1120mmF5.6)で5時間露光(4月12日)そーなのかー氏から提供

https://www.flickr.com/photos/160877569@N03/52007348411(←高解像度画像)

Date: (a)2022-3-29, (b)2022-4-2
Optics: (a) Takahashi MT-200, (b1) Celestron RASA11", (b2) Vixen R200ss with extenderPH
Camera: (a) ZWO ASI294mc Pro, (b1)ZWO ASI294mc Pro, (b2) ZWO ASI294MM Pro
Exposure: (a) 180s x 79 gain120, (b1)180s x 86 gain288, (b2) 60s x 183 for L and 120s x 63 for Hα, total 804min 

 

こんなにひたすら露光を重ねたのは、銀河の周辺に分布している極めてかすかな構造を写し出したかったから。上の写真でお判りいただけるでしょうか・・・? わからない?でしたらスマホやパソコンのディスプレイの輝度を最大にして、部屋を暗くしてみてください。下の図のような形のうすーい雲が見えると思います

これは実際にM63銀河本体の周辺に分布している星からなっているそうで、(分子雲? - もりのせいかつ 別館)。ただし後者のIFNはアマチュア用語とのことで、分子雲との区別もあいまいでわかりにくい。かといって「銀河巻雲」もあまり耳慣れなくてちょっと抵抗があります。

(22日追記:こもんが誤解していたので上記は一旦削除します.まだ用語について整理がつかないので後日まとめます)
これは実際にM63銀河本体の周辺に分布している星からなっていて、恒星ストリームちか潮汐ストリームと呼ばれています。M81などの方向に見えているIFNと混同しやすいですがそれらとは違う存在とのことです(分子雲? - もりのせいかつ 別館)。(24日加筆)

 

先日のエントリではIFNと書いちゃってましたが、今後は比較的使われている「ハロ」を採用したいと思います

M63のハロは、いままで撮影した中でも随一の淡さでした。スタック直後のリニア画像で測定してみたところ、銀河中心近くの輝度に対して、ハロ自体の輝度は0.33%くらいしかありません。ちなみに何もない背景の輝度が、銀河中心ちかくに対して0.28%ほどでした。そんなわずかな輝度差をあぶりだしています。

 

ちなみに以前、M64黒目銀河付近のこんな写真

https://www.flickr.com/photos/160877569@N03/51118359967

を撮影しました。下のほうに見えている帯状の淡い構造は、その分布からして銀河本体とは関係なさそうです。おそらく我々の天の川銀河内に存在しているガスが同じ方向に見えているもので、こっちは分子雲(=IFN?)と呼ぶべきなんでしょうね。