天文はかせ幕下

春の銀河シーズン、ラスト遠征

ここ数年、東北の春は条件の良い好天に恵まれるような気がします。春休みも終盤、新学期へのプレッシャーがひたひたと迫る最後の週末に撮影に出かけてきました。

いやー、楽しい撮影だったっすー

まだ明るいうちに神割崎の駐車場にきてみると、すでにほぼ満員。いつものメンバー(私、そーなのかー氏、カノープス氏)に加えて、N氏、さらに関東からの3名の天文ファンを迎えて、神割崎は過去一の賑わいでした。

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大賑わいの神割崎、上段駐車場

天候の問題もあって、関東からの遠征組のみなさんは、片道8時間くらいかけて神割崎までいらしたそうです。その中でもOさんは、5台もの赤道儀を並べておられて、そのバイタリティに驚愕しました(コモンは赤道儀1台+ポタ赤)。皆さんマナーも見習うべきほどで、その言動から本当に星が大好きなんだなということがひしひし伝わってきました。

 

 眼視も楽しみました。関東からのSさんと7cmの双眼鏡で銀河を散策。見えるか見えないか、ギリギリを狙うのが楽しかった。しし座の三つ子銀河は、ハンバーガー銀河だけが影も形も見えないんですねえ。あと、下段には東北大の天文同好会の皆さんがいらして、そこなんと40cmのドブソニアンが!アイピースも広視野の素晴らしいもので、M51の渦巻きが視認できたのは衝撃的でした。そーなのかーさんなんかは、「もう撮影やめて、眼視派に転向しようか」って言ってましたね。

 楽しい夜はあっという間。薄明が迫るころ

「ありゃ、東から雲が湧いてる?」

と思ったら、天の川でした。これは東の空が暗い「神割崎あるある」なんです。

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N氏のCCA250から延びる夏の天の川

今晩の撮影

先日撮影していたM63ひまわり銀河を再掲載。

M63 Sunflower galaxy

このスタック後の画像をPixinsightのSTFでストレッチしてみると、周辺の淡いハロがかすかに写っていました

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とくに銀河の左上方向にかすかに見えている(?)ループ状の構造。これは3年ほどまえ、N氏と飲み会したときに、パソコンで見せていただいて初めてその存在を知り、衝撃をうけたのでした。

今回はこの構造を写し出すことを目標に、RASA11"にASI294MCを取り付けて追加撮影しました。さらにそーなのかー氏もR200SSにASI294mmの組み合わせで協力してくれました。合作です。先月の撮影データも合わせてトータル804分の露光データを集めました。

そうして得られたL画像をSTFでストレッチしたのがコチラです

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Celestron RASA11”(620mm F2.2) ZWO ASI294MC Pro gain288 (180s x 86 + 60s x 10)
Takahashi MT-200 (1200mm F6) ZWO ASI294MC Pro gain120 (180s x 79)
Vixen R200SS with extenderPH (1120mm F5.6) ZWO ASI294MM Pro gain120 (L:60s x 183)

なんとか、ハロの構造をとらえることが!

あとはこの超絶淡い周辺部と、輝度の高い銀河中心部の構造を両立する画像処理を頑張るだけです。結果は後日。現在鋭意処理中であります。(ちなみにRASAのgainが288になっているのは、単なる操作ミスです)

 

今回の遠征をもって春の銀河祭りはお開きとしたいと思います。来月の新月期はGW。15028HNTにEOS6Dで天の川付近の対象を狙ってみようと思ってます。

ひまわり銀河 ver. 1.0

3月29日の夜は一人で神割崎へ出掛けて,ひまわり銀河M63を撮影してました

M63 Sunflower galaxy

Date:2022-03-29 21:05~26:32

Location: Kamiwari-saki, Miyagi

Optics: Takahashi MT200, 1200mm F6, Heuib2 filter

Camera:ASI294mc-pro

Exposure: 180s x 87frames, gain120

Processing: Pixinsight, PhotoShop

シャープで控えめな強調で色を重視.中心部の光芒はキラッと強くしたいけれど,あまりやりすぎるとディーテールと色が潰れるのでギリギリを見極めて.そのあたりを気をつけて処理しました.

とはいえ,一人で深夜に目をギンギンにして処理していると迷子になります.今回は星沼会の皆さんにレビューをお願いし,忌憚のないご意見をいただきました

ちなみに,撮影の様子はYoutubeにまとめましたので,よければご覧ください


www.youtube.com

 

星沼会のレビュー

「どうぞ忌憚のないご意見をお願いします」

と言っておいて,でも本当に忌憚ない意見がくると傷つきますよね.ひまわり銀河,こもんが処理した直後のver. 0.9はこんな感じでした

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ひまわり銀河 ver.0.9

これに対して,皆さんから頂いた意見は以下の通りです(こもんによる意訳)

  1. 全体に黄色っぽいですよ(ぐらすのすちさん)
  2. 最近の処理,シアンに転びがちですよね(そーなのかーさん)
  3. 星像が変です(そーなのかーさん)
  4. PCCでの色調整があまりうまく行ってないのでは(丹羽さん)
  5. Drizzleはした方がよい(ぐらすのすちさん)

う!ビシビシくるじゃないか,心臓がくるしい..

色がおかしい

ハイライト部にSNCRを作用させよというアドバイスをいただいて,やってみます.

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ほう.確かにこっちの方がいい感じかも.ですがPCC->SNCRという色決定はちょっと乱暴な気がします.実は,PCCの事故調査委員会でのパラメータ指定がうまくいかない場合もあるようで,デフォルトパラメータでやり直したら,うまく行って冒頭の写真のようになりました.

「うまく行った」とか書いているけど,何を基準にうまく行ったと判断するべきなんでしょうねえ.

星像が変です

これもご指摘の通りでして.拡大するとこんなことになってます

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じれはなんでしょうね.星については特に何もしていなくて,StarnetもStarReductionもしておりません.オフアキプリズムの回折とかの影響かなと思ってますが,今のところ原因不明です

Drizzleせよ

顧問はDrizzleの効果はあまり感じないのでやらないことが多いのです.しかし今回に限っては撮影結果をクロップ拡大していることもあって,Drizzleした方が良い結果になったみたいです

終わりに

というわけで,みなさまありがとうございました.おかげで満足のいく結果になりました.

我々星沼会は,主にTwitterのDMで天体写真について頻繁に意見を交わしています.頻繁というか,1日も欠かしませんよね.異常なんじゃないかというレベルでして,とても助かっています.

SHARPSTAR15028の長い長い光条

事の起こり

SHARPSTARの反射鏡は、たまに星から長い光条がでます。下の写真は、同メーカの13028HNTを使用されているふうげつ* (@fugetsuphoto) | Twitter さんからお借りして引用してます。13028にEOSのcooled6Dを取り付けて、トータル48分の露光によるアンタレス付近です。

画像

写真左下のアンタレスから、右上方向に長ーーい光条が伸びています。まるで人工衛星のようです。顧問も以前に15028HNTでオリオン座の東側を撮影した時、写野外のアルニタクあたりから長い光条が伸びてきてびっくりしたことがありました。

ただこれは好みの問題で、光学系の大きなエラーではないと思います。しかし仮に長さを抑えたい場合、どうすればよいのでしょうか?

光条について、コモンはこれまで

「スパイダーがあるから出るんだろ」

くらいで、しっかり考えたことがありませんでした。しかしながら、上の長い光条の対策を練るには、まず原理から理解したほうがよさそうです。しばしのお勉強ののち、次節を書いておりますので、間違いがありましたがご指摘ください:

スパイダーによる光条を基本から

反射望遠鏡で星に光条がでるのは、副鏡を支えるスパイダーで光が回折するからです。

回折とは、光が障害物で遮られるときに、そこを回り込んで波が伝搬する現象のことです。その厳密な計算はフレネルとかキルヒホッフとかでてきて難しい。コモンはちゃんと勉強したことが無いのですけども、直感的に理解するには、高校で習うホイヘンスの原理で十分です。

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上の図は進行する左から右へ進む光が、スパイダー(AB)で遮られている様子を横方向から書いてます。ここにホイヘンスの原理を適用すると、障害物での回折は次のように解釈されます:エッジの先端に新しい波源が発生して、そこから球面波が広がる、と。ですのでセンサー面から点光源を見ている場合、スパイダーの伸びる方向に対して直角に光が伸びることになり、これが光条の原因です。

これだけで予想できることがいくつかあって、列挙しますと

  • 光条は、スパイダーの向きに対して垂直で両方向に伸びる
  • 光条に七色の干渉縞がでるのは、上図のA点とB点での回折光がお互いに干渉することによる。

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  • 光条の明るさや長さは、スパイダーの端で回折する光の総光量に比例する。ダブルスパイダーで光条が強くなるのはそのため。
  • なので、スパイダーの太さを変えても光条の強さと長さは変わらない。干渉縞の間隔が変わるだけ。なぜなら、センサー面上での星の中心からの干渉の明縞までの距離を x焦点距離 f、波長を \lambda、スパイダーの太さを d、として干渉縞のでる条件は
     x=\displaystyle \frac{f\lambda}{d}n,~~~~~~~~n=1,2,3
    であるので、 dを長く(短く)すると、干渉縞の間隔は狭く(広く)なる。

このへんはウェブを探すと、同じ情報が出てくると思います。

じゃあ、どうやって光条を短くするか?

ここからはコモンの予想が混じってきます。

光の回折について計算するときは、ナイフのように鋭くとがった先端を考えます。ナイフエッジでの回折は、先端に一つの点光源があると見なせば良いので、扱いが簡単だからです。一方で鈍な端では、回折光の光源が連続的にボンヤリ分布していると考えねばならず、扱いが面倒になります。

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鋭い端に比較して、鈍い端では回折の光源が薄くなり、しかもそれらが互いに干渉するので、おそらく光条がずっと暗く短くなるはずです。

SHARPSTARの長い光条の原因と対策

スパイダーが鋭い

翻って、15028HNTのスパイダーを見てみますと、なされている面取りが小さめです。この鋭い端が長い光条の原因か。”SHARPSTAR”というくらいですから、これは効果を狙っての設計かもしれません。

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これを丸くすれば、光条は短く弱くなるのではなかろうか?そういえばVixenのR200SSのスパイダーも丸く、表面がザラザラしてました。

光条を抑える対策

簡単な対策として、スパイダーに不織布を巻いてみます。布の厚みの分だけ端が鈍くなります。効果のあるなしを比較するため、向かい合う片方にだけ張っています。

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これで先日、庭先での試写をしてみました。

対策の結果

一等星のアークトゥルスを写屋の中心に入れて、フルサイズのEOS6Dでの撮影しました。撮影場所は自宅庭です。

まずは布を張る対策を施す前の画像です

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なぜか長い光条が再現しませんでした。光害の所為なのか、それとも星が中心にあるときは光条は長くならないのか、その点は次回の検証に回します。

次に対策を施した後の画像です

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下は中心部の拡大です:

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光条は確かに短くなりました。さらに干渉縞も消えました。

まとめ

スパイダーに布を巻くという単純な方法で、光条は確かに短くなりました。ただ、この対策だとあまりにも光条が短くなりすぎかもしれません。あと七色の干渉縞が好みの方もいらっしゃるでしょうから、それが消えてしまうのも善し悪しです。

布を一部だけ巻くようにすれば、効果の強さは調整できそうです。この鏡筒でアンタレス付近を撮影するとき、試してみましょう。

以上です!

第4回、ソンブレロチャレンジ。結願しました

自宅での第三回から幾ばくもなく、顧問は第四回のチャレンジを目的に遠征に出かけてきました。3月の、月曜の夜のことでした。

結果

まずは結論から。今回の結果はコチラになります

The Sombrero Galaxy (L-RGB Composition)

date:2022-03-07
location: Iidate, Fukushima
Optics: MT-200, astrodon LRGB
Camera: ASI183mm pro
Mount: CEM70, off axis guide
Exp: L:180s x 22, RGB: 180s x 7
Processing: Pixinsight and Photoshop

そして中心部の拡大

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どおーですか、円盤の文様! 今までで最も良い結果を得ることができたと思っています。3年目にしてついに結願です。来年はもうチャレンジしないかもしれません。

撮影記

遠征地選び

当日の昼下がり、windytyを閲覧します。南風が入って雲が多いながらも晴れそうな予報が出ていました。

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奥羽山脈を越えて西風が入る日と比較して、南風の晴れ間は透明度低いながらもシーイングが良いのではと愚考。ちょっとでも春霞をさけようと、標高600m弱の福島県飯館村を選びました。

現地では、喜右衛門さん(喜右衛門 ☆ (@toshikatu0214) / Twitter)と初めてご一緒しました。注釈でご紹介します((私は氏をこの驚くべき動画

で知り、今回はお会いできて光栄でした。

「年を取ると足がいうこと聞かなくてね。泥の中を歩いてるみたいで撮影も大変ですよ」

と仰いながら、終始鼻歌交じりで楽しそうに撮影されていて、その翌日も撮影してたみたいです。すごい体力。またうかがうお話が楽しくて。内容を抜粋して紹介したい気持ちです。

  • 「フォトコンにはよく投稿するんですけど、入選すると人生に目薬が落ちたような、ハッとする感じで良いんですよね」
  • 「この年になってようやく気付いたんですけど、女性って要は過程を共有できると嬉しいみたいなんですよね。この前、妻に勧められて応募したフォトコンで入選して、もらった商品券でプレゼントを買ってあげたら、たいそう喜んでましたよ。カメラレンズ買っても大丈夫なくらいに(笑」

「人生に目薬」という表現にコモンは感激しました。「妻攻略法」も参考になりますー^^。あれ、なぜか注釈にならない。))

はじめてのLRGB撮影

実は今回の撮影、そーなのかー氏と合作という話が事前にあり、コモンはモノクロカメラのASI183MMで、L画像を重点的に、慣れていないRGBはちょっとだけ撮ろうと計画していました*1。M104の高度が30°を超えた23時当たりから

  1. Lを1時間
  2. Bを20分
  3. Gを20分
  4. Rを20分
  5. Lを最後まで、

という割で撮影していきます。ちょうどBの撮影時に対象が南中するタイムテーブルです。

途中でAPTが突然落ちて設定がリセットされ、撮像ソフトをSharpCapに切り替えるなど、トラブル含みながらも撮影は進んでいました。

しかし撮影の後半、予期せぬ事態が起きたのです!

シーイングに急激な変化が!

下の画像は、撮影開始直後のL画像(左)と、R画像を撮影時(右)のM104の様子です。だいぶん解像が違います

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左もそれほど悪くないのですが、右のR画像の状態は顧問としては経験のない良シーイングでした。撮ってだしにもかかわらず、暗黒帯のうねりだけでなく、例の円盤の文様までうっすら見えているではないですか!

大気の状態をなんとなく基準の10点満点で表すと

  1. Lを1時間  7点
  2. Bを20分   7点
  3. Gを20分  8点
  4. Rを20分  10点
  5. Lを最後まで 9点

と推移していたかな。

がしかし、シーイングの良化は喜ばしいのですが、RGB撮影の途中でそれが起こると、画像処理で困った事態も起こります。。

画像処理

RGB画像の色ハロ

B→G→Rと撮影していく過程で、急激にシーイングが良くなったものですから、あとでRGB合成した時にBだけ星が大きく、Rは極端に小さいって感じで大きさが合いません。そのままRGB合成してみますと

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このように色ハロが発生してしまいました。対処策として、RとGにガウスボカし処理をかけて星の大きさを強引に揃えましたが、それでもわずかに色ハロが残ってしまいます。

こんな苦労をするなら、いっそのことカラー情報はカラーカメラで撮影したほうがよさそうなものです。次回そーなのかーさんと合作するときは、その辺を考慮してみます。

気を取り直して、L画像を処理します。

L画像のコンポジット

全部突っ込むか、いいところだけ選りすぐるか、悩みどころです。

なんてツイートをしましたら、西側列強のタカsiさんからコメントいただきました。

リモート撮影で大量のデータを処理されている氏のことですから、すでに同じ悩みを数年前に通過済みなのだろうと思います。念のため実験してみることにしまして、

  1. トータル3時間弱のすべてのフレームをスタックした結果
  2. 後半のシーイングが良かった70分のデータのみスタックした結果
  3. 2.に加えて特にシーイングの良かったR画像20分分も一緒にスタックした結果

の三つを比較します。それぞれの画像にはSubframeSelectorで算出したウエイトをかけています。

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タカsiさんの言う通りの結果で、しかも明確な差が出ました。3.のLとRを使った結果が最も良いようです。これを採用しました。

Deconvolution!

銀河の処理では決定的な役割を果たす表題の処理。一度自分でやってみたらアーティファクトが残ってしまい、丹羽氏に「気になる」と指摘を受けました。相談の上、氏に処理を丸投げしてしまいました。休日には8時間ぶっ通しでDeconvolutionをしたこともあるとのことで、とても丁寧な処理をやっていただきました

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どーですか! これがDeconvolutionの威力、本当に驚きます。

強力な効果を発揮するDeconvolutionは、使いこなすには一定の技術が必要です。詳しくは

や、拙ブログの記事とそこで引用しているKさんや丹羽さんの記事

をご参考ください。

おわりに

L画像は満足いってますけど、RGB画像には課題が残る結果です。星の色もあまり出ていなくて、もうちょっと星がきれいだと一気に印象が変わる気がします。次回の撮影でそーなのかー氏とも協力しながらデータを取得しようと思っております。

 

 

*1:この夜、そーなのかー氏の撮影地は曇ってしまい、合作は後日となりました

第3回。ソンブレロチャレンジ

ソンブレロチャレンジとは顧問の造語で、M104銀河の円盤部分の波状の文様を写し出そうという挑戦です。これまでの経過は

ソンブレロ・チャレンジ2021 - 天文はかせ幕下

ソンブレロ・チャレンジ - 天文はかせ幕下

にあります。ただ、以下でも振り返りますので特に読む必要はございません。

結果

2022年、チャレンジの皮切りは名取市の自宅庭で実施しました。まずは結果をご覧ください:

M104 (IR-RGB composition)

Luminance:

Date: 2022-3-05
Location: Natori city

Camera: ASI183mm pro

Mount: iOptron CEM70, off-axis guide

Optics: Takahashi MT200, sightron IR720

Exposure: 240s x 20 frames, gain 120

Date: 2021-04-01

Location: Natori city

Camera: ASI294mc pro

Mount: iOptron CEM70, off-axis guide

Optics: Takahashi MT200, sightron IR720

Exposure: 240s x 25 frames, gain 120

RGB:

Date:2020−5−13

Camera: ASI294MC-pro

Optics: Takahashi MT200 with coma corrector F8, UV-IR Cut

Mount: Takahashi NJP

Exposure: 90sec. x 44 flames (gain 120, -5deg.)

今年はズルしちゃってまして、輝度は今年と昨年のデータの平均、色情報は一昨年のデータから持ってきています。その理由は後で記すとして、中心部のアップです

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中心部のアップ

いかがでしょうか? 顧問としてはだいぶん理想に近づいてきて満足しています。

撮影記

今年の工夫と改善点

このチャレンジは基本的にはシーイング次第。とはいえ毎年同じ機材で撮っているのでは芸がありませんし飽きてしまいます。毎年小さいながらも積み重ねてきた工夫と変更点を表にまとめてみます

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今年の主な変更点は

  • お気楽ジョガーさんからお借りしている、モノクロカメラのASI183mmを採用したこと
  • オフアキガイドによりガイド精度を向上させたこと

の2点です。

撮って出しは、以下のような状態でした。

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一枚の撮ってだし

円盤部分はのっぺりしていて、波状の模様はほとんど見えていません。いや、かろうじて見えているか?という程度。

こんな状態でも、画像を重ねていくと、徐々に構造が出てくるのは、本当に面白いことです。ただ、IRフィルターでの撮影だと光量不足は否めず、Deconvolution処理にて本来滑らかであるべき部分が荒れてしまいます。それが、質的に劣る昨年のデータを平均に加えた理由です。

遠征地でLフィルターを使ってたっぷり露光するのが本筋かなーと思った次第です。そしてこの撮影の3日後、顧問は飯館村へ遠征しました。そこで得られた真に驚くべき結果とは?!(つづく)

 

NGC4216を撮影

「今晩は、何を撮影されているんですか?」

「あ。えーと、NGC684と672のあたりを撮ってみようと思いまして」

「ほお・・・(知らないので会話が続かない)」

 

なんてこと、コモンはよくあります。

特に、しばしば撮影をご一緒する かのーぷす さんは毎度私の知らない銀河を印象的な構図で撮影されていて、お会いするたびに上の会話を繰り返していたような。

ですので、以下のツイート

に対しての返信

は私にとっては快挙!だったのです。

そんな今回の対象、NGC4216とその伴銀河は、しし座とおとめ座の間あたりに位置しています。ステラリウムで周辺を徘徊していて偶然に見つけました。

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ステラリウムの画面より

今の時期ですと0時過ぎの南中で、今回は21:50から撮影開始、翌日月が出た後の3:20まで露光を継続しました。風もほどんどなく、オフアキガイドが上手くいったこともあり、歩留まりは90%ほど。3分を91枚、トータル4時間半の露光ができました。

NGC4216
Date: 2022-2-25
Location: はやま湖
Camera: ASI294mc pro
Mount: iOptron CEM70, off-axis guide
Optics: Takahashi MT200, Heuib2 filter
Exposure: 180s x 91 frames gain 120

焦点距離1200mmにフォーサーズセンサーを組み合わせた画角でちょうど良い収まりになったと思います。

アノテーション画像はこちら:

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距離が表示されるRNAさんのスクリプトを使用しました。

導入方法は

を参照してください。

総括(反省)タイム

撮影編

  • 三脚と鏡筒のあわや激突
    今回はMT200の筒の長さから,筒先と三脚が激突寸前のハラハラ撮影を強いられた。あと3cmくらいまで筒が三脚に接近していて,反転させるつもりでGOTO++を実行したら,反転するどころか,筒先がさらに1cmまで近づいて止まり,隣で見ていたそーなのかー さんは恐怖の叫びをあげていました
    「こええええーーー。」
    いまのところの対策としては,撮影対象の赤緯が38度よりも…
     * 小さい場合(南側の対象):三脚の一本足を真北へ向けて設置
     * 大きい場合(北側の対象):三脚の一本足を真南へ向けて設置
    とし,衝突のリスクを抑えようと思う。
  • ニュートン直焦点でのオフアキ接続
    そういえば初めてだったんです。MT200の補正レンズを省いた光学系でオフアキガイドをするのが。つまり撮影前に接続を確認してなかったんです。このへん相変わらずで反省してます。現場でアレやコレやして結局下の写真の様な接続でうまくいったのでメモ:

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    写真左上から,タカハシ主焦点アダプター > ZWO Filter Drawer > ZWO オフアキアダプタ > ZWO22mm延長筒 > ASI294mc となってます。補正レンズなしなのでバックフォーカスは関係なく,これでガイドカメラとともにピントが出ました。ただ,フィルターがオフアキプリズムよりも対物側にくることになるので,ゴーストが心配ではありますが,実際の撮影では大丈夫でした。

  • 写真左上の収差
    スタック直後の画像では,写真左上だけ放射状に伸びていました。

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    光軸のせいなのか,コマコレ外しているので仕方がないことなのか? 最終的にはMorphological Transformationで修正しました。

画像処理編

  • Drizzleの効果はよくわからん
    今回はスタック枚数が91枚と多く,途中からはそーなのかーさんに教わってディザリングもやっておりました。ですので期待していたDrizzleは,ただ画像をが大きくなっただけという感じで効果を感じませんでした。残念。
  • Deconvolutionは効いた
    一方でDecon.はビシッとはまりました。

    f:id:snct-astro:20220301153238p:plain
    左がDecon.後,右がDecon.前。銀河自体に重なっている星が一つしかないので,処理が楽でした。

  • ストレッチは"LCSストレッチ"がよい
    理由は不明ながら,銀河の場合はLCSストレッチがうまく行きます。
    「なんだよLCSって!わからんこと書いてると張り倒すぞ」
    という方は

    を。またこの手法の実績については,nabeさんのブログ

    をご査収ください

  • 青が出ない
    撮影結果をみると,銀河の青が乏しい感じ。これは致し方ないかな。といいますかもともと青くないのかもしれません。そういえばこのNGC4216の撮影が終わった後,「春の銀河マラソン5kmの部」を実施,同条件で9つの銀河を撮影しました。全く同じストレッチを施し同じ縮尺で並べたものが以下になります。全て3分1枚です。

    f:id:snct-astro:20220301164107j:plain
    これをみると,M101やM51,M100などは腕が青いのにたいして,NGC4725とかM109は青くないです。何でもかんでも腕は青くなると考えてはダメですね。