天文はかせ幕下

「淡いよ!」な天体の呼び名の分類

星雲を分類する名称は、重複していたり、厳密に区別できなかったり、専門用語とアマチュア用語が混じっていたりで、混乱しやすいなと思っていました。先日のM63のエントリでも、銀河周りの恒星ストリームを「IFN」と書いてしまって、指摘をうけました。

名前は大事ですので、ここでアマチュア用語も含めて整理し、できれば皆さんの指摘をいただきながら更新していきたいと思います。以下は主に「天文学辞典」やを参考にしています。

淡い天体の呼び名の分類(2022年4月 Ver. 0.2)

分子雲/暗黒星雲

主に水素が分子の状態で分布していて、かつ低温なのでHα輝線などを出していないもの。次いで一酸化炭素(CO)を多く含む。低温であるためには、周辺の星の光を十分に遮るくらいに密度が濃い必要がある。なので周囲よりも暗く見えている。COの回転に伴う励起状態基底状態に落ちる時の電波(波長3mmほど)によって観測できる*1。特に完全に星を遮るくらい密度の濃い領域は暗黒星雲と呼ばれる。「星雲」といっても星ではない。

分子雲 / 暗黒星雲

銀河巻雲/IFN/H1ガス雲

密度が薄い水素は、星の光をモロに受けるので高温になり、分子として安定できず、原子の状態で宇宙空間に分布する。よって「分子」雲とは区別する。写真では向こう側の星が透けて見えるくらいに写る(?)。あくまで天の川銀河内に分布しているもので系外銀河の周りの恒星ストリームや銀河ハローとは違うことにも注意する。天の川銀河全体の光を集めて(≒Integrateして)て淡く光っていることから、Integrated Flux Nebua (IFN, アマチュア用語?)と呼ぶことも。天文学では、中性の水素原子をHI書くことから、これらをH1ガス雲と呼ぶこともある。

IFNの例1

黒目銀河近くのIFN

輝線星雲/HII領域/赤ポチ

周辺の星からの放射線をうけて電子が引きはがされ(電離して)た水素が集まっている領域。これら電子と水素が再結合するときに発するHα線を「輝線」というので「輝線星雲」と呼ばれる。「星雲」といっても、星ではない。また、天文学では、電離した水素のことをHIIと書くので、HII領域とも呼ばれる。系外銀河に分布する赤ポチ(アマチュア用語)も起源は同じ。

H2領域

赤ポチ

反射星雲

周辺の星のから受ける光のエネルギーが低くて、電離して輝線を発することはできないが、その光を反射したり散乱したりして見えている星雲。星雲というけど星ではない。主に炭素や鉄ニッケルから成るとのこと(wikipediaによる)

反射星雲の例

銀河ハロー

渦巻き銀河の円盤部分のさらに外側に分布していて、銀河全体包むように丸く分布している。星や球状星団から構成されている。

銀河ハロー

恒星ストリーム/潮汐(tidal)ストリーム

銀河の過去の衝突によって、小さな銀河が崩壊して大きな銀河から受ける重力によって引き延ばされ、周辺に分布している構造。銀河ハローと区別されるのかどうかはよくわからない*2

恒星ストリームの例1

恒星ストリームの例2、見えます?



*1:丹羽さんからの指摘で追記

*2:恒星ストリームの名は、ぐらすのすちさんに教わりました