天文はかせ幕下

夜空の明るさ,一晩の変化を測定しました

夜空の明るさを表す定量的な指標としてSQM値というのがあります.これは空の1平方秒角あたりの明るさを星の等級で表したものです.その測定方法は,以前

に書きました.

 

遠征して星の撮影をする我々にとって最も関心があるのは,観測場所ごとのSQM値です.有名な「Light pollusion map」や,環境省がおこなっている「夜空の明るさを測ってみよう」でも,各地点でのSQM値を知ることができます.

一方で,同じ観測地であっても夜が更けていくと,空の明るさがグッと暗くなるのは,よく感じていました.例えば我々がよく行く神割崎の駐車場ですと,南西方向に石巻市の街明かりが見えていて,0時すぎくらいになるとそれがグッと暗くなります(なので同じ遠征地でも,最近郊の街の東側に位置する場所のほうが,撮影に有利だったりします).

しかしながら,一晩に着目してSQM値の時系列変化を測定したデータは,すこし調べた限りでは見つけられませんでした.(ちなみに,だいぶん前ほしぞLoveログのSamさんの娘さんのNatsuさんが,街からの距離と空の明るさの関係を自由研究にまとめられていました

これをみてみますと,空の明るさの時系列変化にも着目されていたみたいですが,どこかにデータは公表されているのでしょうか?)

というわけで,結果を以下に示します.

横軸が時刻,縦軸が天頂付近のSQM値で,下に行くほど大きな値(=空が暗い)ことを示しています.測定を実施したのは,2022年の10月24日と30日.いづれも秋特有の透明度の高い夕焼けが見えた晩でした.測定データは,ASI174mmにCanonの撒き餌50mmレンズをF4に絞って取り付け,Vixenのポラリエで追尾しながら取得しました.

オレンジのプロットで示した24日のデータ取得では,0時以降に曇ってしまい測定を中止しました.データをみると23時以降から雲の影響が出てしまっていたようです.30日のデータをみると,21時から22時のSQM値が,24日のSQM値とほぼ一致していて,その後滑らかに20くらいに漸近しています.

 

2晩のSQM値が一致していることから,測定の再現性は大丈夫そうです.一晩で空が2等くらいも暗くなるのは,驚きでした.このデータから推測すると,ニワトリ撮影の場合は深夜の1時くらいに南中する対象を選び,±90分くらいで露光するのがもっとも良さそうに思います.

遠征地だと,そもそも街から離れているので空の明るさにこれほど大きな変化は表れないかもしれません.