天文はかせ幕下

The great conjunction of Jupiter and Saturn!

したの写真は、顧問の自宅の本棚にある岩波書店版の「星の王子さま」です。

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これを読んだのはだいぶん昔のことで、いまではその内容もほとんど忘れてしまいました。小さな星に住んでいた王子さまが地球にやってきて、主人公といろいろやりとりしたあと、また空へ旅だって行ったのだっけ?、というくらいの記憶です。

この有名な表紙の絵は、王子さまの住んでいた小惑星を地球から眺めた様子を描いているのだろう、と解釈しています。すると、ねずみ色の小惑星の向こうに見えているのは木星土星だと思ってよいでしょう。まさに大接近です。

2020年12月21日の会合は、ちょうどこの表紙と同じように木星土星が並んで見えていました。

Watching the great conjunction!

397年ぶりと言われた夕方。宮城県では、西から流れてくるちぎれ雲の間に澄んだ空がのぞいていました。顧問がSlackでよびかけましたところ、やってきた天文部員は一年生二人でした。三人で学校の屋上に登って、西空に見える一番星の木星を探します

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ほどなくして、二つならんで明るい星が見え始めました。ちょうどこの写真に写っているおおきな雲の少し上のあたりです。熟練の顧問は一番先にそれを見つけ、すばやくシュミカセを向けて、1年生そっちのけで観望しました。およそ100倍の視野の中に、木星土星、それらの衛星たちが、地球の大気に揺らぎながら見えています。大宇宙の広がりが、一瞬で網膜に焼きつくような光景でした。

「こ、こ、こ・れ・わ・ス・ギョ・イですぅ〜〜!」

と、さかなクンとムツゴロウさんを足して2で割ったような声を上げる顧問に、一年生のふたりは若干引いていましたが、自分で確かめたあとは、それなりに感動している様子でした。

次は60年後。顧問は生きてませんが、彼らはおじいさん・おばあさんとして、もう一度この様子を見ることができるかもしれません。

撮影結果

こちらはIRパスフィルターをつかって撮影したモノクロ画像です。土星の輪があと90°ほど左回りに傾いていたら、星の王子様の表紙と「完全に一致」でしたね。オシイ。

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Date: 2020-12-21 7:44(UT)
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI 294mc
Optics: Meade LX-200-30 F10, Sightron IR720 pro filter
Exposure: 0.2sec x 1000flames (gain120), 75% stacked.
Processing; Autostackkert!3, Registax6, Photoshop

撮影結果は、満足のできるレベルに達したと自己評価しています。露光時間は木星がぎりぎり飽和しないくらいに設定していますので土星は暗いですが、色目を使えばそこから遠近感を感じとることができると思います。

カラーカメラの294mcをつかったのは、Lフィルターを使った撮影と合わせてIR-RGB合成を行いたかったからです。しかしその試みはうまくいかず、カラー化すると木星が腐ったみかんのようになってしまいます。現在原因を検討中です。

「モノクロじゃあ、物足りないなー」と悩みながら色々いじっていたら、色温度の調整でなんとなくカラーっぽくなることを発見してしまいました。

The great conjunction of Jupiter and Saturn

(^_^;)\('_') コレ! インチキハ,ヤメナサイ

流星の軌道解析

あらまし

じつは流れ星にあまり興味を持っていません

「いえ。流星って宇宙の塵芥が断熱圧縮で燃えてるだけですよね。ちょっと何が面白いのか分かりませんねぇ。」

顧問は以前からこんな調子ですので、流星群の極大の日はだいたい自宅で寝ぼけております。ペルセウス座流星群に合わせて夏合宿を行うなんてこともありません。頭脳が働いていないから、好奇心の幅が狭いのですね。どうもすみません。

ところで今月12日の夜。神割崎でM78の周辺を撮影していましたらやけに流星が飛びます。

「あ、そういえばふたご座流星群の極大が近いのだっけ? 念のため撮影しておくか」

とα7Sに魚眼レンズをつけて動画をほったらかし撮影していました。

しばらくして、カエル教教祖3.0さん(以下カエルさん)のツイートが目に止まりました。

カエルさんが火球を目撃していたとき、顧問は目をギンギンにして、モニターに表示されるガイドグラフを凝視していたとおもいます。しかしあとで動画を確認したら、この火球が写ってました。 


「動画に撮ってましたよ!」とコメントしたところ悔しがっておられましたね。

「こっちでも撮影できていたら、軌道の解析ができたのにー」

って。しかしすかさず、同じ宮城県内でこの流星を撮影されていた方を見つけ出してくださったのです。ありがとうございます。顧問がいた神割崎から西に30kmほどのところにある加護坊山にて、同じ流星は次の写真のように写っていました

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おー、見かけの方向がだいぶん変わるのですね!
撮影された方は、ブログ

を書かれているSさんです。今回、許可をいただいて掲載しました。

顧問が撮影していた動画からも、各コマを切り出して比較明で合成して静止画を用意しました。

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二つを比較して、軌道の解析ができる。流星たのしいじゃん。考えを改めました。

解析の方法

全体の手続き

まったくの我流ですが、以下の手続きで解析を行いました:

  1. それぞれの観測点の北緯・東経・標高を調べておく。
  2. 写っている星の位置を元にして, それぞれの写真から流星の始点・中央点・終点の赤緯赤経を求める。
  3. 流星の写った方向の赤緯赤経に対応する、観測点の位置と観測時刻における方位(真北からの角度)と高度(水平線からの角度)を取得する。
  4. 緯度線・経度線を記入した地図に,お絵かきソフトをつかって方位を書き込み、日本の線分が交わる点を求める。
  5. 交点との距離と高度をつかって、流星の高さを求める。

という流れです。

使用したソフトウェア・サイトなど

上記の3. は、フリーソフトのStellariumを使いました。もはや紹介するまでもないほど有名なソフトですけど、念のため以下からダウンロードできます。

標高・緯度・経度の取得、作図のための地図の入手には国土地理院の地図

が便利でした。

また、流星の見えた方向の赤緯赤経をを取得するために、Pixinsightを使って二枚の写真に写っている星を位置合わせした上で比較明合成し、次のような画像を用意しました。

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この写真から、それぞれの流星の開始点、中間点、終点の座標を求めることにしました。

解析結果

以下、簡潔に解析の結果をまとめます(方位と高度は2020-12-12 23:12.30(JST)での値)。

神割崎
流星痕の始点 :赤緯0度16分,赤経5h45m30s(方位163.7°、高度50.5°)
流星痕の中間点:赤緯-5度45分,赤経5h29m20s(方位171.2°、高度45.3°)
流星痕の終点 :赤緯-10度48分,赤経5h15m00s(方位176.6°、高度40.5°)
 
流星痕の開始点:赤緯1度10分,赤経6h48m50s(方位140.6°、高度45.3°)
流星痕の中間点:赤緯-3度45分,赤経6h43m30s(方位145.4°、高度41.7°)
流星痕の終了点:赤緯-8度16分,赤経6h38m20s(方位149.4°、高度38.1°)
 
以上の結果を地図に書き込みました。
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青:始点、赤:中間点、マゼンダ:終点、です。黄色の矢印が流星の軌跡になります。水平距離としては15.7kmを移動し、標高88.3kmから発光し,59.7kmまで落下したのちに燃え尽きた計算です。顧問のビデオ撮影では、1/4秒の動画で4コマにわたって火球が発光していたのが見えたので、発光時間はおよそ1秒。すると平均速度はおよそ33km/s=時速12万キロだったことになります。

誤差について

誤差の要因のうち最も大きそうなのは、それぞれの写真を撮影したカメラの感度の差であろうと思います。感度が違えば、写真上の流星の視点と終点の位置が異なってくるはずです。これはそれぞれの画像に写っている星の測光をすれば補正できそうですが、今回はやってません(始点・中間点・終点が一直線に並んでいるので、多分大丈夫かなと)

第二に効いてきそうなのは、大気差、レンズの歪みでしょうか。第三に地球の曲率だとおもいます。

実際の計算はどのように行われているのか、もうちょっと勉強してみようかしらん。

 





木星と土星の最接近(新兵器準備編)

21日の木星土星の大接近。みかけで0.1度まで近づくのは400年ぶりとか800年ぶりなとどと言われております。貴重なイベントに際して,どういう写真を撮るのが一番楽しいかと考えてみますと,これはなかなか難しい問題です。

といいますのは今回の大接近,夕刻に高度20度くらいで重なって見えている木星土星が,そのまま太陽を追いかけて1時間ちょっとで沈んでいく。というイベントです。

 

例えばこれを,星景写真として撮る場合を考えてみます。みかけ0.1度というのはあまりに近すぎて,地上風景が入る画角では,両者が分解せず一つの光点にしかみえません。24mmくらいの広角で撮影して

「この点!!この点なんですよ。これは木星土星が重なっているんです。400年ぶりに!(鼻息)」

なんていっても理解されないでしょう。

木星土星を分離したいと思ったら,フルサイズだと135mmくらいは必要そうです。風景を含めるなら,高度10度付近で撮影する必要があり,低空に雲が出ていたらアウト。運良く撮影できたとしても低空の悪条件では土星が楕円に見えるかどうかも怪しいと思います。

というふうに考えて行きますと,やっぱり望遠鏡で拡大撮影かなーとなるわけです。

しかし冬のシンチレーション 。そのなかでも最も気流が不安定な夕暮れ時。かつ低空。拡大してもお団子にしかならないかもしれません。

そこで,今回は新しい兵器を買ってきました。 

Sightron Japan製の「IR720 PRO フィルター」です。
これは720nm以上の近赤外光をパスして,それより短い光をカットするフィルターです。これを174mmあるいは294mcに取り付けて撮影し,すこしでも低空でのヌケの悪さを改善しようという考えです。

赤外観望の可能性については,最近ではシベットさん

が積極的に進められています。私は以前,天童高原へネオワイズ彗星を撮影しにいった際,現地でIDASの社員の方とお話しする機会があって,このテクニックを知りました*1

テスト

12月10日の夕方に,このフィルターのテストをしました。時刻は17時過ぎ,木星土星の高度は約20度です。

まずは,通常のUV/IRカットフィルターで撮影した結果をご覧ください。木星から。

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Date: 2020-12-10 17:23~
Camera: ASI174mm
Optics: Meade Lx-200-30 F10, Baader L Filter
Exposure: gain200, L:8msec x 1000f
Processing: Autostackkert!3(stack), Registax6(wavelet)

小さいのは,本番の画角に合わせてのことです。顧問が下手くそというのもありますけど,お団子に一本線でひどい画像です。

次にIR720フィルターを取り付けて撮影した結果です。

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Date: 2020-12-10 17:25~
Camera: ASI174mm
Optics: Meade Lx-200-30 F10, Baader L Filter
Exposure: gain200, L:75msec x 1000f
Processing: Autostackkert!3(stack), Registax6(wavelet)

おお,これは見違えました。かなり暗くなるので1フレームの露光時間は10倍くらい伸ばす必要がありました。それでもIRの方がずっとはっきり見えます。

これは戦えるかもしれません!  

*1:その方は,通常のカラーのデジカメに単純なRフィルターをつけて彗星を撮影されていました。そのままだと真っ赤な写真になってしまいますが,昼間のうちにアスファルトを撮ってそれをホワイトリファレンスに色温度を調整しておくと,そこそこカラーバランスが整うのだそうです。低空に霞がかかるコンディションの中,非常にヌケのよい結果をえられていました。

大気光の夜と、ペルセウス座付近

先月の「11月快晴」の夜は、大気光が強かったようです。

Orion with night grow

当夜。そーなのかーさんの機材を前景に撮影したオリオン座の写真。低空で赤くうねうねと光っているのがそれです。冬の天の川と同じくらいの輝度で発光しています。

 

顧問は今年で天体写真撮影歴7年目です。これまで大気光が気になったことはなくて、初めてその存在を認識したのが今年の5月28日、雲抜けの蔵王にてでした。

The Milky Way

この時は緑色。

「やっぱり、雲抜けの暗い空だからこそ見えたのだよね。すごーいね。」

なんて思っておりました。

7月,低空のネオワイズ彗星を撮影したこの画像にも大気光が顕著です:

Comet NEOWISE(C/2020 F3)

「うん、まあこれも一つの風景ですよねー。消すのはちょっと違うかな」

なんて考えておりました。また、つい先日(11月下旬)撮影したエラスムス彗星にも映り込んでいます

C/2020 S3 (Erasums)

この辺りになって、もうイヤになっております。緑や赤の発光が邪魔で仕方なく、すっかり嫌いになってしまいました。

 

比較として,こちらは今年の5月16日,福島県フラワーランドにて南の低空を撮影したものです。大気光は見当たりません。

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もうちょっと遡って今年の2月。大気光はかけらも見えません。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/snct-astro/20200227/20200227001052.png

どうも今年の5月頃から例年に増して大気光が目立っているのではないでしょうか。太陽活動やなんやに関係して強まる「時期」があるのでしょうか?

ペルセウス座付近

そんな夜、EOS6Dでペルセウス座付近を撮影しておりました。

晩秋の夜。たっぷり5時間半も露光していました。結局は大気光の影響のあるコマも含めてすべてスタックしました。低空の前後20コマを捨てた画像との比較では、そんなに大きな差を感じませんでした。

Reprocessing:Dusts around California and NGC1333

Date: 2020-11-14,15
Location: Kamiwari-saki, Miyagi Jpn.
Optics: Zeiss Apo sonner 135mm F2(F2.8)
Camera: Canon EOS 6D (mod)
Exposure: 180s x 110flames(ISO1600)
Processing: Pixinsight, Photoshop.

まあこんなものかなーと。実はこの画像は2回目の再処理の結果です。分子雲は抑え気味に、あくまで背景にうっすら漂っている感じにして、星の色を綺麗に出すことを念頭に処理しました。

これの一個前のバージョンでは、こんなふうな処理をしていました

Dusts around California and NGC1333

こちらはブイブイあぶり出しverです。正直に言って、少々汚いよなー 。最近の好みでは、分子雲は炙り出せば良いわけでなくて、背景にうっすらと漂いつつも確かな存在感をもつような、そんな表現を目指したいと思っています。

12月はオリオン座付近を撮影予定。あの周辺の濃い分子雲をどのように表現すべきか、考えないといけないなー、という次第です。

 

 

明け方、極低空のエラスムス彗星(C/2020 S3)を撮りました

先日のソウル星雲をアップしたエントリーにて、nyancotanさんからコメントいただきました。

「C/2020 S3を撮影されたし。当方、高緯度地方在住により困難を極め、南方に住む爾ら若者に託す。次の満月までがラストチャンスぢゃ!うっ!うごふっ!!(意訳)」

北のグランド顧問

ちょっと思い出話を。この記事を書いているのは天文部顧問のわたし。当部には非公式ながらグランド顧問nyancotan氏がおります。

思い出せばこのブログをスタートしたばかりの頃、7年前のアイソン彗星の記事

アイソン彗星(コモン) - 天文はかせ三段目(仮)

に、初めてのコメントをいただいたのでした。それ以来、折に触れてアドバイスを頂いてきました。おかげで我々もここまで成長できたのです。

ひとり作戦会議

機材選び

残念ながら部員たちは定期試験期間中でした。いつもの「ひとり作戦会議」です。

まずエラスムス彗星は、極端に低空です。夜明け前に南東の地平に姿を現し、10°まで登ってくる前には薄明の中へ消えてしまいます。よって明るい光学系で撮影する必要があるでしょう。また、事前の情報よりその尾は3〜4°の広がりを見せているとのことから、画角としては10°くらいは欲しいところ。

すると、当天文部の機材による組み合わせとしては

  • 135mm F2 + 4/3センサー
  • 250mm F4.5 + フルサイズセンサー x ツイン

が候補になります。どちらが良いのでしょうか? 要はセンサーに入ってくる単位時間あたりの総光量が多い方が良いはず。それは顧問の計算によれば

 \frac{\text センサー面積}{{\text F値~~}^2}

に比例するはずです*1。これによるとフルサイズツインの組み合わせが2倍近くの光量を稼げることになります。しかし設置に時間がかかりそうなので、135mm+4/3センサーの組み合わせをスカイメモRに載せる機材構成を選びました(計算意味なし)

タイムスケジュールと撮影地

大雑把なスケジュールは

  • 自宅出発3:00
  • 現地到着4:00
  • 機材設置完了4:30
  • 導入完了、撮影開始4:45
  • 撮影終了5:10

です。撮影場所は相馬市付近の海岸です。火力発電所から程よく遠い場所を選びました。

問題は短時間で導入できるかですが、金星が近いので、テキトーにその近くをウネウネ探せば見つかるかなと、楽観的に考えました。

結果

現場での導入はあっけなく上手くいって、4:49から3分露光で10枚を撮影できました。始めの6枚を彗星核基準で合成したのがこちら

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北が上です。今回はじめて「大気差」の影響を実感できました。星の流れ方で写野の中で異なっているのがそれだと思います。

PSでマスク合成して、星も止まって見える画像をこさえました。

C/2020 S3 (Erasums)

画像を反転して、PIのLarson Sekaninaフィルターで処理すると淡い尾がはっきりします

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これみると、画角から飛び出しているようにも見えますねー。すると5°以上?もっとカメラを西に振ればよかった。

 

最後に撮影風景です。そこそこ透明度は高かったようでした。

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*1:夜空のどの方向からも一様に光子が注いでくると仮定すれば、センサーに注ぐ単位時間あたりの光の量(フラックス)は「写野の広さ(立体角)」と「対物レンズの面積」の掛け算に比例するはずです。写野の広さは、カメラセンサーの長辺をL、短辺をM、望遠鏡の焦点距離をfとして

 2\arctan\left(\frac{L}{2f}\right)\cdot 2\arctan\left(\frac{M}{2f}\right)\simeq \frac{LM}{f^2}

です(センサーサイズは焦点距離に比べて小さいと仮定して\arctan(x)\simeq xと近似)。つぎの対物レンズの面積は、口径を Dとして \pi D^2/4ですから、二つの積は

 \frac{LM}{f^2} \frac{\pi D^2}{4}=\frac{LM}{(f/D)^2}

となります。

令和2年11月快晴

休日前 新月 快晴。これらの条件が全て揃うのはどれほどの確率でしょうか? 

計算はそんなに難しくありません:日本の平均快晴率が年間28日。年間休日数が120日。新月±5日とすると,

\frac{28}{365}\times\frac{120}{365}\times\frac{10}{29.5}=0.9\%

つまり年間で2〜3日です。

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なので,11月14日(土)の夜を「令和2年11月快晴」と名付けたい。

この夜,列島は移動性高気圧に覆われ,日本中の天文ファンが群れをなして露光をしました。国内で夜空に向けられたCMOS/CCDの総センサー面積は,A4用紙1枚分に達したとか*1(?)。

 

もちろん撮影に行って参りました。

行きがけのガソリンスタンドにてツイート。気合の観測報告ですございます。

N氏の機材と撮影スタイル

行き先はいつもの神割崎。いつもの「そーなのかー氏」「カノープス氏」と。

でも今回は、最近我々の星仲間に入ってくれ撮影をご一緒したN氏について書きたいなと思うのです。まずは撮影機材をご紹介。EM-400とCCA-250です(!)

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本物は初めてみました。これに冷却CCD+AOガイドで撮影されてました。

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明け方の写真です。AOってActive Opticsというのですね(知りませんでした)。オフアキで捉えた星像の動きがAOにフィードバックされ、なかのガラス板が「プルプルプルーーッ」と振動してガイドするのだそうです。なんと変態的な。。。この夜、N氏はM78のわずか南にあるモンスターのような形をした分子雲の塊を冷却CCDで撮影されてました。

撮影中に見学させてもらいいろいろ教えていただきました。電源確保の周到さ、乾燥空気の利用法、LRGB撮影の段取り、ガイド精度、撮影中のフォーカスの判断など、すべて我々より1段も2段も、高度な撮影をされていました。天ガで最優秀を複数回とる方は一味違うなあと、勉強になりました。さて、

結果報告

顧問はRASA11"+294MC-proで「M52とバブル星雲」「NGC1333」、そしてApo-Sonner+EOS6Dのほったらかしでカリフォルニア星雲の周辺を撮影していました。RASAの撮影はそれぞれ3時間、Apo-sonnerは5時間以上露光できました。休日前の晴天はありがたい。撮影中に、みなさんとビールを乾杯したり、カップラーメンをすすったりと楽しめました。

バブル星雲とNGC1333

M52 and NGC7635

M52 and NGC7635

Date: 2020-11-14 20:13~23:19(JST)
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec x 47 flames (gain 120)

まずはバブル星雲とM52を。自分的にはとってもお気に入りの一枚になりました。星雲の炙り出しはそこそこながら、色表現がうまくできたと思っています。青とオレンジの星、周辺の散光星雲も赤・オレンジ・マゼンダとそれぞれ違って楽しい領域です。斜めに横たわる暗黒帯のアクセントも魅力的です。これ横構図にしたらもっとよかったかもなあと、少し後悔。

 

NGC1333

NGC1333

Date: 2020-11-15
1:20~4:15(JST)
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec x 52flames(gain 120)

つづいて、縮麺ノイズに苦しんだNGC1333です。自分の画像処理、いつも全体の輝度が暗めなのかなーと、他の皆さんの画像と比較してよく思います。このNGC1333も、もっと輝度をあげてヒストグラムを太らせてしまう処理もアリかもしれません。ですが今回は、全体を暗くしておいtれ、その分彩度を強調する作戦にしました。いろんな星の色と、中心の分子雲の中で炭火でも燃えているような感じを出せたと思います。

カリフォルニア星雲の長時間露光は大気光に邪魔されて

この夜は大気光が強かったと、Twitterでフォローしている柊二さん(撮影をご一緒してました)が指摘されてました。ほったらかしで3分x120枚も撮影していたカリフォルニア星雲の画像を見返してみましたら、確かにその通りでした。

結局前後合計で30枚=90分のフレームを捨てました。もったいない。

この撮影結果は別の記事でご紹介します(ブログのネタがなくなってしまうので) 

 


 

 

 

 

*1:顧問によるフェルミ推定