天文はかせ幕下

寒波の神割崎で、カタツムリ星雲

お正月明け1月9日の神割崎遠征について思い出しながら書いておきたいと思います。

新月期は撮影に専念して、満月期にブログを更新する方がイロイロと良いのじゃないかなと思い始めています。天リフにピックアップされる確率も上がるのではないか知らん。

 

確か1月上旬は、シベリア高気圧が1080hPaを超えて過去最高を更新したとかで、猛烈な寒波が押し寄せていまいた。自宅の水道管も久しぶりに凍結して、外に置いておいたペットボトルも簡単に過冷却状態になるほどでした。

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当夜の気温と湿度はご覧の通り。最低で-7℃まで下がりました。温度計に言われるまでもなく「不快」です。撮影をご一緒したそーなのかー さんによると、前日はもっと寒くてー10℃まで下がったとか。一方で撮影については、カメラはよく冷えますし、湿度も低くて結露もなし。バッテリーさえ気を付ければ撮影自体は快適です。

今回の対象:カタツムリ星雲

今回は、バラ星雲のちょっと北、コーン星雲の東に位置する「カタツムリ星雲」をメインの対象に選びました。比較的にマイナーな対象ですのでちょっとご説明を。

下の写真は2018年に撮影したバラ星雲とコーン星雲付近です。撮影にはEOS6DとMamiya Apo-sekor 250mmを用いました。

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冬の定番構図のひとつです。この写真の右上部分、灰色の枠で囲った青い小さな星雲が「カタツムリ星雲」になります。ピクセル等倍で拡大すると以下のとおりです。

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まさにこの画角を、フォーサーズセンサーの294MC-proと、620mmのRASA11"の組み合わせで撮影しようというわけです。

撮影の改善点

RASA11"と294mc-proの組み合わせの撮影は、もう何回もやっています。漫然と同じようにして撮影していては飽きてくるというのもあって、ちまちまと小さな改良を繰り返しています。

今回はスケアリングエラーの原因であったTリングとZWOのマウントアダプターから決別して、ガッチリした延長筒とZWOのフィルタードロウナーを用いてカメラと望遠鏡を接続しました。

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この16.5mmと書かれた延長筒はZWOのカメラに付属で一緒についてくるものですが、かなり堅牢に作られています。堅牢すぎて内側が狭く、RASAで使用すると多少ケラれるようでした。そこで、全く同じ光路長で内側を広くした延長筒をコスモの天文工房さん

に製作してもらいました。下がそのブツになります。

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左がZWOの延長筒、右がコスモ工房特注の延長筒になります。フィルタードロウナーとの接続もM42ネジからM48ネジに変更しました。価格は八千円弱でした。これで周辺光量がだいぶん回復しました。

あともう一つ。ZWOのフィルタードロウナーですが、Twitterで噂されていたとおり個体差があるようです。私の手元の製品もマウント面の平行が出ていませんでした。そこで学内の直線廊下を使って、スケアリングを調整しました。

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30m先にピンホールの光源を置いてます。その「人工星」を使って、写野の四隅でピントがあうようにドロウナーにテープを貼りながら調整しました。

余談ですけどこの方法、星を使わなくて済むので便利な反面、目立つんですよね。

「また仕事しないで遊んでるのですか」

と思われてしまいます。全くそのとおりなんですけど、査定に響くと嫌ですので盆や正月など基本的には人がいないときにやっています。

さておき、結果的には下の写真のようにマスキングテープを二枚貼る程度で、調整はうまく行きました。

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位置からして、フィルターを差し込むスリットの加工に影響されて、マウント面が傾いているようです。同じドロウナーを使われている方は、同じ位置の調整でうまくいくかもしれません。

撮影結果

前置きが長くなってしまいました。それでは撮影の結果です。

IC2169

Date: 2021-1-09
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec x 36 flames
(gain 120)
Processing: Pixinisight, Photoshop

画像処理は「控えめに控えめに」と唱えながら行い、輝度よりも色を引き出せるように心がけました。ある程度意図した通りにできたかなと思ってます。PixinsightのDecomvolutionがうまく決まって解像も上がったと思います。とくにカタツムリ の頭部から写真左側の反射星雲にかけての領域:

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あたりが気に入っています。でもこれくらい拡大してしまうと、DenoizeAI特有の網目状の模様が目立ってきてしまいますね。

あと写真左上部分の大きな暗黒帯

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この部分に縞状の構造が写っています。これはどうなのでしょう?他の方が撮影した結果を探してみると、私が探した範囲で、こう言う構造が写っている写真は見当たりませんでした。アーティファクトなのかどうか、判断ができていません。

もう一点。反射星雲を伴った星を拡大してみると、Starnet++の星消し痕が残ってしまってます。

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これはTwitter上でTakahiroさんに指摘してもらって気づきました。星消し画像を直接使ってしまうとこう言うことになるので気を付けないといけません。別の星では目立っていない場合もあって、明るさと星周辺の様子に依存しそうです。EZ Star Reductionスクリプトも、星の周りを星消し画像で置き換えているようなので、場合によってはこう言うアーティファクトが生じる場合もあるかもしれません。

この星消し痕は、ちょっとみっともない感じなので修正しようと思いつつ、気力が湧かずにそのままにしてしまっています。

 

 

 

 






 

 

Sigma 70mm DG Macro Art で天体写真を撮影してみた

先日、ならは町の木戸ダム遠征では、Sigma の70mmF2.8 DG Macro | Art レンズをお借りして使用する機会がありました。今回はそのレビューをしたいと思います

 

マクロレンズは被写体に近づいて撮影する目的で開発されているレンズです。もともと結像性能が良く、無限遠にピントを合わせる天体写真においても高い性能を発揮することで知られています。顧問はこれまで、中古で手に入れたSigma製の 70mmF2.8 EX DG Macroというレンズを使用していました。これは「カミソリマクロ」との異名もあって、とにかくシャープであることで有名です。

これまでの拙作例は

The Eridanus bubble

Around the tail of Ursa Major

などです。

今回お借りした70mmF2.8 DG Macro | Art(以降「新カミソリ」)は、70mmF2.8 EX DG Macro(以降「旧カミソリ」)の後継機種になります。旧カミソリはとくに絞り開放での青ハロが強く、天体写真を取るにはF4まで絞る必要があったのに対して、70mmF2.8 DG Macro | Artではそういった色収差が徹底的に取り除かれているとのことです。噂では開放から十分に使えるとか*1

今回はこの二つを比較してレビューしたいと思います。ただし旧カミソリはもっぱら絞って利用していたため開放でのデータがありません。ですので星像については、新カミソリがF2.8開放での撮影であるのに対して、旧カミソリはF4と、かなり不平等な条件での比較となってしまいました。予めお断りいたします。

それでは早速参りましょう

中心と周辺像

それぞれのレンズに、フルサイズのCanon EOS6Dを取り付けて撮影した画像の中心と周辺300pxの切り取り像です。どちらも冬にオリオン座の付近を撮影した結果です。

まずは旧カミソリ(F4)↓

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つづいてに新カミソリ(F2.8)↓

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です。

中心像は両者ともほぼ同等にシャープ。周辺は旧カミソリではわずかに放射状に星が伸びているのに対して、新カミソリはほぼ円形です。星の小ささで言えば、思い切り拡大してみると旧カミソリのほうがわずかにシャープに見えなくもないでしょうか。ピクセルサイズが6.54μmの6Dではどちらも若干アンダーサンプリング気味なので、厳密に比較するにはさらに解像度の高いカメラが必要そうです。F値が異なることを考えると、新カミソリの性能が素晴らしいと言わざるを得ません。

一方で周辺光量はどうでしょうか。こちらは新旧両方をF2.8で比較しました:

 

旧カミソリ↓

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新カミソリ↓

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ヒストグラムをみて比較すると、若干新カミソリのほうがグラフの幅が広く、周辺光量落ちが大きいことを示しています。前玉の径が小さく変更されていることが影響しているのかもしれません。最近のシグマのLマウント用レンズはソフトウェア経由で周辺光量を調整する仕様に変更されつつあるようで、その辺は天体写真には不利に働くことになりそうです。

ピント調整が超音波モーターに変更されていて少々戸惑いましたが、慣れれば大丈夫そうです。がお値段も比較的手頃ですし、全体的にみて星の写真にはきわめて高性能だなという感想です。購入したくなりました。

最後に再掲載になってしまいますけど、新カミソリレンズで撮影したコーン星雲からエンジェルフィッシュまでの写真をごらんください。

The corn and angelfish nebulae (re-processing ver.)

それではまた。 

 

*1:参考リンク:「石鎚の西側で星を撮っています」http://ishizuchi1957.asablo.jp/blog/2018/06/19/8898205

ならはで星鍋

天文部の顧問をやっておる私は、観望会などの各種イベントを行うのは苦手な人間です。役所や警察署に申請出して、周知活動した挙句、当日は雨。なんて大変すぎるんです。自分が楽しみたいだけなんだろと言われれば返す言葉がございません。

でも子供の教育なんかでも、晩酌してYoutube見たりしているくせに「勉強しろ、宿題やれ」何て言うのは説得力のないことで、自分が楽しんで勉強している姿を子に見せるのがいいのじゃないかと思います。

ですので天文普及としても、「めっちゃ楽しんでる俺の背中を見よ!!」というわけです。それでこんな動画を作っています。

楽しそうでしょう? 本当に楽しいのです。皆さんも天体写真、始めて見てはいかがでしょうか?

とかいう顧問も、ぐらすのすち氏の動画


をみて、無性に楢葉に行きたくなってしまった類です。

 

さて、当日の天体写真は失敗だらけでした。「ピンボケ」「jpg保存」「バルブのつもりが15秒露光」など初心者のような失敗を連発してしまったのは、動画撮影に気を取られすぎていたからかもしれません。

とはいえもはや素人ではございません。最低限の結果は残しました

The corn and angelfish nebulae (re-processing ver.)

Date: 2021-1-16
Location: Naraha city, Fukushima
Optics: Sigma 70mm F2.8 DG Macro Art
Camera: Canon EOS 6D(mod)
Exposure: 180s x 63f = 189min (ISO1600)
Processing: Pixinsight, Photoshop

バラ星雲からコーン星雲、エンゼルフィッシュまでを一枚に入れてみました。微光星の多い領域で、今回はPixinsightのEZ StarReductionという星を小さくするスクリプトを利用してみました。詳しくは

をご覧ください。1回の適用では物足りず、かといって2回の適用では星が暗くなりすぎたので、それらの平均を採用して処理しました。いろいろやっていたらいつもと違うカラーバランスになったのですが、結構気に入っています。

彩度のヒストグラム は使えるか?

はじめに

天体写真の画像処理にて、「彩度のヒストグラム」というものも有用なのじゃ無いかなと思いつきこのエントリを書いています。

通常ヒストグラムといえばそれは輝度のヒストグラムを指し、それは各ピクセルの輝度の分布を表すグラフのことを言います

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天体写真の場合,だいたいこんなグラフになります。左側から右に行くに従って輝度が0から255の値を表していて、このグラフだと輝度がだいたい60ほどのピクセルが最も多数を占めていることを表しています。このピークは天体写真の背景に対応するので、それよりも明るい右側が太っていれば「コントラストが豊富」、左側が急峻なら「周辺減光が小さい」など、様々な判断ができるわけです。詳しくはnakacygさんのブログ

が参考になると思います。

輝度のヒストグラムはこのように、客観的に画像の仕上がりを評価するのに使えるわけですが、だったら彩度のヒストグラムも、天体写真の色を客観出来に判断するのに使えるのでは無いでしょうか?

たとえば下のgifアニメをジーーっと見つめてみてください。これは元画像の左半分を彩度+70、右半分を彩度-70に加工したものです。5秒後に元の状態に戻ります。

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境界に注目すると、切り替わって通常の状態に戻った瞬間に右半分が派手な色に、判定に左半分が地味な色に見えないでしょうか?

このように人間の目は直前に見ていた情報に引きずられます。画像処理を何時間もやっていると目がギンギンになってしまって、色も輝度も訳が分からなくなってしまうなんてことよくありますよね。

つまり輝度だけでなく彩度にも客観的な指標が必要なはずで、その目的ならヒストグラムが有効だと考えたわけです。

彩度のヒストグラムの表示方法

しかし、「彩度のヒストグラム」ってあまり聞きません。まずはその表示方法をPixinsigntとPhotoshopについてそれぞれ紹介します。Pixinsightはそーなのかーさんのアイデアが元になっています。PhotoshopについてはTwitterでTakashiさんがなんとプラグインを開発してくださいました!ありがとうございます。

Pixinsightの場合

したのように、ヒストグラムを表示したい画像に対して"Chnnel Extraction"のColorSpaceをHSVにして適用し、彩度の画像 "*****_Sv"を取得します。

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その画像に対して、HistgramTransformationからヒストグラムを表示します

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ちょっと面倒ですが、現状この方法しかないと思います。

Photoshopの場合

takashi(@Mazic_tell_Arts)さんが開発されたプラグイン

exchange.adobe.com

から無料でダウンロードできます。

ダウンロード後は、アドビのCreativeCloudsから"プラグインを管理"を選んで、Photoshopに対してプラグイン"Saturation-Histogram"を有効にしておきます。

すると、PhotoShopから以下のように"ウインドウ>エクステンション"から"Saturation-Histogram"が選べるようになります。

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この機能をつかうと、下のように"Show Histogram"のボタンをクリックするだけで、レイヤーの一番上の画像について彩度のヒストグラムを計算して表示してくれます。

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縦軸をlogにできたり、選択部分だけのヒストグラムを表示できたりと便利ですので、是非使ってみてください。

彩度のヒストグラムの活用方法

これについてはまだ、アイデアを練っている状態です。今のところ思いついているのは以下の2点です。

彩度の評価

天体写真の彩度のヒストグラムがどういう形であるべきか?というのは一概には言えず、その対象に依存しそうです。日の丸構図の銀河の画像と、画面いっぱいに散光星雲が広がった画像では全く違うでしょう。

以下は主観になります。顧問がたくさんの天体写真について彩度のヒストグラムを表示し調べてみたところ、彩度の足りない画像の場合、ヒストグラムのピークから右側が薄く、8bitで200に届いていない場合が多かったです。たとえばこれは拙画像で恐縮ですが、以前撮影したアイリス星雲です。

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右側の裾野はリニアでみると200に届いていません。かといって、この画像の場合これ以上彩度を上げると破綻してしまうのですが、その場合は輝度の方を調整することになるのだと思います。

いっぽうでこれも拙画像ですが、比較的派手にみえるオリオン座とバーナードループの写真です

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ヒストグラムの形は大体同じで、右の裾野が255近くまで伸びていて、128付近の中間の値が上側に膨らんでいます。

ほかにも色々な画像を見てみましたが、日の丸構図の銀河の画像を除けば大体同じ傾向でした。

ひとまず画像処理では、彩度のヒストグラムが200±X 程度まで伸びることを目指しつつ、処理する、というのが一つに指標になるかもしれません(Xは好みの差を表す)

Curves Transformationによる彩度のトーンカーブ

PixinsightにはCurvesTransformationという機能があって、そこでは彩度のトーンカーブ調整ができます(残念ながらPhotoshopには、これに同等の機能はないようです。)これと彩度のヒストグラムを合わせると、これまではマスクを使わないとできなかったようなきめ細かい彩度調整が,簡単にできるようになります。

例として,下の写真をご覧ください。

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画面左が処理中のプレビュー画面。右上のウインドウに彩度のヒストグラムを表示しつつ,右下の"Curves Transfomation"で,彩度を表す”S”を選択した上で,トーンカーブの調整を行っています。

ここからは,通常のトーンカーブ調整と同じ考え方になります。つまり,プレビュー画面左上の,元々彩度が低い背景部分は,彩度を抑えつつ,プレビュー画面右下の彩度がある程度高い部分だけ,さらに彩度を強調したいとしましょう。背景部分はヒストグラムでいうとおよそ1/4ほどのピーク位置から左側に対応しているので,トーンカーブ上で1/4の位置にアンカーを打ちつつ,中間を持ち上げれば良いわけですね。

ヒストグラムを見ながらなら,こういう調整ができるので,たとえば暗部の彩度を下げるなんて処理もそれほど難しくありません*1

残念ながら,Photoshopには彩度をトーンカーブ調整する機能がありません。また,Pixinsightの"Curves Transfomation"でも,彩度を選択した時にヒストグラムを表示する機能も無いようです。

おわりに

またマニアックなことを書いてしまったと,少々後悔しています^^

彩度のヒストグラム は,いろいろ考えてみると,輝度のヒストグラム と同列に並べるには少々扱いづらいのかもしれません。

上にあげた要素以外には

・暗部のカラーノイズや色被りの強さの評価

・暗部の色潰れ(彩度がゼロに落ちている)

などに使えるのじゃないかなーと思ってますが,まだ考察が足らない状態なので,後日また記事にするかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:ただし,彩度の性質上暗い部分でも彩度がmaxに近い値になっている場合もあります(暗部のカラーノイズなど)。なのでトーンカーブとしては右側にももう一つアンカーを打っておくのが無難かもしれません

2021年の初天体写真は8時間露光。あと今年の目標も

2021年初めの作品は、Mamiya Apo-sekor 250mm F4.5レンズのツインによるM78周辺になります。フルサイズカメラを合わせると、馬頭星雲からバーナードループの北側までが画角に収まります。

Horsehead, M78 and Barnard's Loop

Date: 2020-12-12, 2021-1-9
Location: Kamiwari-saki, Miyagi, Japan
Camera: Canon EOS6D(mod) and Sigma fp
Optics: Mamiya apo-sekor 250mm F4.5 (twin)
Mount: Kenko SEII, PHD2 guiding
Exposure:
EOS6D ... 360s x 19 (2020-12-12) + 300s x 33 (2021-1-09)
SigmaFp ... 300sec. x 43 (2021-1-09)
ISO: 1600
Processing: Pixinsight, Photoshop

昨年の12月12日に撮影していたEOS6Dでの19枚に追加して、1月9日にEOS6Dで33枚、sigmaFpで43枚を追加しました。顧問としてはめずらしく2晩にわたる撮影で、トータルは8時間超えです。露光新記録です。

2021年の目標

無理をしない画像処理、淡い部分のあぶり出しよりも星雲の透明感や滑らかさを優先した画像処理を目指したいのぅ

と顧問は考えています。なんでかというと、最近ブログを再開された近江商人さん

の天体写真にえらく感銘を受けたからです。氏は私設の天文台で1作品あたり平均10時間くらいの露光をされています。にもかかわらず作品はかなり控えめで、2時間くらいの露光時間の写真に対して顧問が行うストレッチよりも弱い強調しか施されていないように見えます。それによって星は輝星から微光星まで整っていて、星雲には透明感があり、等倍で拡大してもとても滑らかです。
我々は基本遠征スタイルなので、毎回10時間の露光は無理なんですけど、たとえば3時間しか露光できないならそれなりのストレッチを行うようにするべきなんじゃないかなと考えています。
で、上の作品はというと、自分では強調を抑えたつもりながらそれでも強い強調になってしまいました。まだ煩悩を捨てきれてないのです。

撮影後記

今回は、Mamiya Apo-Sekorのツインシステム

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に初めてフルサイズのカメラを二つ取り付けて撮影を行いました。一時期評判になったこのレンズ、最近は似た焦点距離のRedCatやSharpStarが人気で、これを使っている人はあまり見かけないように感じますが、このレンズの最大の魅力は豊富な周辺光量です。もともと67版フィルム用に設計されているから当然と言えば当然。フルサイズを取り付けてもほとんど、したのヒストグラムをご覧になればわかるように周辺減光がありません。

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EOS6Dを取り付けた場合のマスターフラットです、ヒストグラムのピークの左側はほぼ垂直で、フルサイズでこれだけの周辺減光の小ささは通常のレンズではなかなか無いのではとおもいます。このレンズこそ、フルサイズのカメラで運用すべきなのではあるまいか。顧問は愚考しました。

レンズにあわせてフルサイズカメラを2台所有したいところですが、ここはカメラは改造済みの6Dと非改造のSigmaFpを用いました。下の写真はそれぞれのスタック後の写真を、カラーバランスだけ整えてSTFで仮ストレッチした結果です

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それぞれ色の出方がだいぶん違います。この二つをどのように重ねるべきか、工夫が必要そうです。今回は良いアイデアが思い浮かばなかったので、そのままそれぞれの露光時間の重みをつけて単純に加算しました。それが上の結果です。背景のノイズは小さくなった一方、若干赤い星雲の輝度は弱まってしまったかもしれません。

この辺は、今後このシステムを運用していくにあたっての検討課題です





ノイズ処理は、画像強調の前に行うべきか、後に行うべきか?


お正月は満月期。2021年は画像処理のマニアックな話題からスタートしたい所存です。

はじめに

テーマはタイトルの通り。天体写真の画像強調(ストレッチ)において、ノイズ処理をどのタイミングで行うのが正解か?という問題です。

これについてはおそらく3つの「派閥」が存在すると思われます。

  1. ストレッチの前にやるよ派
    ストレッチによってノイズもまた強調されてしまう。だから強調後にノイズを低減させるよりも、ノイズが小さいうちにこれを叩いておいて、そのあと思う存分にストレッチしたほうが良いはず!
  2. ストレッチの後にやるよ派
    ノイズ処理というのはある種の平均化処理であり、その実行によって必ず何らかの構造が失われてしまう。だから、ストレッチによってまずは星雲・分子雲の構造を引き出し、それをはっきりと把握したのちに、注意を払いながらノイズ処理を行うのが肝要である!
  3. ストレッチの前と後、両方やるよ派
    ノイズと星雲・分子雲の構造、それぞれの画像上の長さ(ピクセル量)に隔たりがあるなら、(巧くやれば)ノイズ処理によって構造が失われる心配は小さい。よって前後に一回づつノイズ処理を行うことで、「前にやるよ派」と「後にやるよ派」のいいとこ取りができる!

なるほど。三者三様に理があるように思えます。

しかしながら、これらを全て同じまな板の上に載せて比較・検証を行うことは容易ではありません。なぜなら一言にノイズ処理と言っても、単純なボカシからwaveletなどの構造解析を取り入れたノイズ処理、さらにはAIを使ったものまで実に様々だからです。同じことは強調処理についても言えます。さらにはノイズにも、輝度ノイズ・カラーノイズ・アンプノイズなどあり、何に着目するかで結果が変わってくるでしょう。

そこでこのエントリでは,もっとも典型的でかつ単純化した状況において上の三つを比較して結果を検証してみます。次にその具体的な方法を説明します。

検証の方法

基本的な考え方は,上の3つの派閥の画像について,ストレッチの強度を共通にしておいて,背景のノイズレベルがほぼ同一になるようにノイズ処理を加えた画像について,明部の構造の様子を比較する,という考え方です。

ストレッチとしてはレベル補正の中間・暗部スライダを動かすだけの最も単純な方法と,wavelet を使った構造強調の組み合わせに限定します。またノイズ処理は,これもwaveletを基にして,長さスケールごとにボカシをかけるおそらく最も典型的な方法だけを想定します(Photoshop 内 Camera Rawの輝度ノイズ低減など)。

以下では,その内容をもう少し詳しく書いておきます。

まず検証の対象にするのは次の画像です

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これはデジカメ(EOS6D)で撮影し、Pixinsightで前処理(フラット・バイアス補正、スタック)を行なった直後の画像の一部を切り出したものです(Pixinsightは、もともと14bitのデジカメ画像の上側にデータを追加して32bitに伸張するので、出力直後はこのように真っ暗な画像になります。)

画像処理では、この画像から出発して強調処理とノイズ処理を行なって天体写真を完成させるわけです。

何を使って強調・ノイズ処理をおこなうか?

強調処理:STFのAutoStretchとHDRMT

天体写真の強調処理は、コントラストの強調/構造の強調の2つに分類できます(他に彩度の強調がありますが、今回は輝度ノイズだけに着目しているので、それは省きます)。

コントラスト強調については、STF(Screen Transfer Function )のAutoStretchを用いることにします。これは、Pixinsightの便利な機能の一つで、画像の情報をもとに一定の強度の強調を自動的に行ってくれる機能です。例えば、上の暗い画像にAutostretchを施すと、次の画像のようになります。

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この中身はレベル補正を自動的に行なっているだけです。上の結果の場合、中間スライダと暗部側のスライダを、次の図のようにのように調整しています。

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次に構造強調にはPixisightのHDRMT(High Dynamic Range Multiscale Transform)を以下の設定で施します。

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HDRMTは、wavelet処理を用いてある長さで変化している星雲などの構造に対して、そのコントラストを部分的に強調する手続き(のようです)。Photoshopでの「明瞭度」やハイパス強調と中身はだいたい同じであると推測します。うえのSTFを施した画像に、さらにHDRMTを行った画像がこちら:

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星雲の明暗の変化が激しい部分に注目すると、変化がよくわかると思います。

ノイズ処理:MLT (Multiscale Linear Transform)

MLT (Multiscale Linear Transform)はwavelet処理を元にしたPixinsightの非常に有用な機能で,シャープ化やノイズ低減、その他いろいろなことが出来ます。書いている本人も全体は把握できていないのですが、ここではMLTのノイズリダクション機能を利用します。

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1, 2, 3, 4, RとあるLayerはwavelet処理を行う長さスケールを表していて、それぞれ画像上の1, 2, 4, 8, 16pxの長さに対応しています。"Amount”はノイズ処理の強さを表し、"Threshold"はノイズ処理を施すピクセルの変化のしきい値を表しています。

いまは輝度ノイズ(ショットノイズ)の低減を考えているので、1pxの長さの輝度変化のみを選択的に低減させればいいはずなので、Layer1のみを選択し"Threshold"は3.0、"Amount"は適宜調整することにします。

次は"Amount=1"としてMLTのノイズ処理前と、処理後の画像を並べたものです。

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どうやって比較するか

まずストレッチの前後にノイズ処理を行う「両方やるよ派」の画像を用意します。つまり

 両方やるよ派:元画像 → ノイズ処理(MLT,Amount=0.6)ストレッチ(STF+HDRMT)ノイズ処理(MLT,Amount=0.6)

("Amount" 0.6というのは顧問がいつもMLTを行うときに選んでいる値で、特に意味はありません)。下の写真はそれによって得られた画像です。

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この画像を比較対象に用います。ノイズの強さを定量化するために,中央に四角で示した背景部分の輝度について、pixel毎の輝度値の分散を計算し、その値を「ノイズ強度」とみな巣ことにしました(その方法については後述します)。

この「両方やるよ派」の画像の場合、背景の分散は 7.68\times 10^{-5}でした(輝度は0を黒、1を白としてます。もともと輝度の揺らぎが小さいので、分散は極端に小さい値になります)。

つぎに「前にやるよ派」と「後にやるよ派」の画像を用意します。つまり

 前にやるよ派:元画像 → ノイズ処理(MLT,Amount = X ) → ストレッチ(STF+HDRMT)

 後にやるよ派:元画像 → ストレッチ(STF+HDRMT)ノイズ処理(MLT,Amount= Y ) 

と処理を行なった画像の背景のノイズ強度が、「両方やるよ派」に一致するように、それぞれの"Amount" X,Yの値を調整するわけです。ただしSTFとHDRMTのパラメータは全ての画像で共通です。(ちなみにこの画像の場合 X=1.0, Y=0.95で ノイズ強度が「両方やるよ派」に一致しました。)

以上のようにして用意した3つの画像について、右下の四角部分で示した「星雲のコントラスト高い部分」を比較しよう。というわけです。

このようにすれば、一応は同じまな板の上で、それそれの派閥の処理画像結果を比較できると考えます。ただし「星雲のコントラスト高い部分」については、その点数を数値化する良い方法が浮かびませんでしたので、ここでは見た目で判断する事にします。

結果

それぞれの結果を示します。あらかじめお断りしますと、違いはかなり微妙です。

前にやるよ派↓

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後にやるよ派↓

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両方やるよ派↓

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ちょっとわかりにくいので、さらに拡大して部分ごと比べてみます

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ここからはどうしても私感になりますが,

 前にやるよ派 > 両方やるよ派 > 後にやるよ派

の順で星雲の構造がはっきりしていると見えます。「後にやるよ派」や「両方やるよ派」では,構造強調の後にノイズ処理が入るので,どうしても星雲の輪郭がボケてしまうようです。ただしその差は,ほんよにごくわずかです。

まとめると,

強調処理の強度が同一で、かつ処理後の背景ノイズの強度を揃えるという条件の下では、ノイズ処理は強調処理の前に行ったほうわずかに結果がよい。

となりますね。

実際の画像処理ではマスクを利用して選択的にノイズ処理を行ったりシャープ化をしたりするので、上のわずかな差はほとんど見えなくなってしまうだろうと思われます。しかし最近Zoom会議などを通していろんな方とお話しした範囲では、ノイズ処理をストレッチの前に行うことを避けているという方が多かったです。waveletのlayerを適切に選びさえすれば,ノイズ処理によって構造が失われる心配は小さく,ストレッチ前にノイズ処理を行う方法も捨てたものではないと,言えるかと思います。

おわりに

というわけで、新年早々かなり時間をかけて検証した割には、結論がしょぼくなってしまいました。

最後に、画像の「ノイズ強度」を計算する方法については、Rubyからrmagickというgemをつつかいました。その導入にあたって twitter上で@rnaさん(このブログでよく引用している

Deep Sky Memories の中の方)や@watsonさんにアドバイスをいただきました。お礼申し上げます。

自分用メモとして、その導入のための概要を書いておきます(環境はMacOS Catalina)

  1. homebrew からrubyをver.3.0.0p0 指定でインストール(普通に"brew install ruby"とやるとver.2.x.xが入るみたい。するとあとのrmagickのインストールでハマった)
  2. 同じくhomebrewからimagemagickをインストール。(webの情報ではImageMagick v7だとrmagickが対応していないので、v6以前をインストールする、とあるがこれは既に解決済みでrmagickはv7にも対応しているみたい 2021.1.3)
  3. ”gem install rmagick”としてrmagickをインストール(gemというのはrubyをインストールすると使えるようになる)
  4. ソースコード

    の下の方にあるコードを参考にした。

また解析する画像がfitsなら、pythonなどを使うのも簡単で良いみたいです。

astropyも使えるようになっておいたほうが、いろいろ便利そう。

2020年の総括!

f:id:snct-astro:20200528171024p:plainくもじいじゃ。

下界の方では、新しい新型ウイルスというのが蔓延しているようで、そのせいか師走の週末も街はひっそりしとるのう。ふだんならシャンシャカとジングルベルが鳴っているはずの表通りも今年は静か。季節感を感じぬままに、あっという間に年の瀬がやってきてしまった感じって感じじゃ。

2020年。バタつきながら神割崎で撮影をしたり、頭を抱えながら画像処理をしたり、たまには学生と一緒に観望会をしたりしていた顧問の様子を、上から見ておった。今回はその「そうかつ!」をしたいと思う。 

1. 顧問のアトラス彗星の写真、朝日新聞に掲載

「世紀の大彗星!?」アトラス彗星(C/2019 Y4)が世間を騒がせたのは、今年の3月ころのことじゃったの。

C/2019 Y4 ATLAS(reprocessing)

Date:18th, Mar. 2020 22:06~22:50
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11"
Mount: Takahashi NJP
Exposure: 90sec. x 30 flames (gain 200)

顧問が撮影したこの写真は朝日新聞に掲載されて、あやつは虚栄心と顕示欲が大いに満たされ,鼻の穴を大きくして喜んでおったわい。単純なやつじゃ。RASA11"ちゅう望遠鏡がすごいだけで、顧問の技術は関係ないとワシはおもうぞ。でもまあ、その時の記事のリンクを貼っておくから、興味のある者は見ると良い。

そのあと、彗星は崩壊して期待されたほど明るくならなかったというのは、ヌシらも知っての通りじゃ。

2. ソンブレロチャレンジの成功

顧問はソンブレロ銀河がお気に入りで、見てるとどうも毎年撮影しておる。円盤部分の紋様を写し出すのを目標にしておったようじゃ。

「M104は等級の割には集光が強く、淡い部分の描出はそれほど必要ない。そこで比較的に短い露光時間で撮影し、Drizzle + Decomvolutionで円盤の紋様を写し出す作戦です」

撮影前にあやつはそんなことを言ってたの。

M104, the Sombrero Galaxy

Date:13th, May. 2020 20:40~23:10
Location: Flower land(hara machi)

Camera: ASI294MC-pro
Optics: Takahashi MT200 with coma corrector F8
Mount: Takahashi NJP, Mgen guide
Exposure: 90sec. x 44 flames (gain 120, -5deg.)

その目論見は成功したようで、当日はシーイング最悪だったにもかかわらず、 うっすら文様がうかんじょる。Pixinsightとかいうソフトウェアを活用し始めたのも、このころじゃった。

3. ネオワイズ彗星を探しに、湯の浜温泉へ

2020年の最大の天文イベントは、7月のネオワイズ彗星だといって、反対するものはおらんと思う。

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あのころは、天候不順で何週間も曇り空が続いとった。部員がスマホで撮影したこの写真は、なかなか評判よく「いいね!」がたくさんついて、顧問はまた鼻の穴を大きくしてよろこんでおったの。

Comet NEOWISE(C/2020 F3)

Date: 2020-7-16 12:00~12:06(UTC)
Location: Yamagata, Japan
Optics: EOS6D, Aposonner 135mmF2(F2.8)
mount: Kenko SkyMemoR

Processing: Pixinsight+Photoshop

大気光の越しのこの彗星写真は、FaceBookというSNSの,とある天文コミュニティーで「100いいね!」 を獲得したとか。なーにが「いいね!」じゃ。人間どもの考えていることはわからんわい。

4.動画撮影

伝染病の蔓延の影響で、人を集めた観望会ができない代わりに、電視観望などの動画撮影を始めたのも今年のことだったの。


再生回数も伸びていないようなので、よかったらアクセスしてやっちくり。

5. 栗駒山でのアンドロメダ銀河

10月に栗駒山で撮影したアンドロメダ銀河には、顧問も自信を深めておったようじゃ。

M31

Date: 2020-10-18 0:10(JST)~
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec. x 6 flames(left and right part),  240sec. x 6 flames + 30sec. x 10flames(center part), gain 120, 3x1mosaic

ワシは、やっぱりRASA11"とかいう望遠鏡がスゴイだけのことと思うが、まあそれはどっちでもいいかもしれんの。自信があるなら「天文ガイド」とか「星ナビ」に投稿してみたら良さそうなもの。そう言ったら

「ふん、コンテストなんてものは欺瞞、欺瞞ですよ。欺瞞に満ちておるのですよ *1!」

なんて言ってエアダスターを撒き散らしておった。以前に一度二度投稿して落選し、自尊心を傷つけられて頭に来たとか、どうせそんなところじゃろ。

6. 令和2年11月快晴 

11月,日本はよく晴れてヌシらは発狂して喜んどったらしいの。顧問もRASAを振り回して,縞ノイズで破滅したりとバタバタしとったみたいじゃのう(ワシは休暇をとって海外旅行にいっちょって,直接見てないからよくわからんが)。

NGC1333

Date: 2020-11-15
1:20~4:15(JST)
Camera: ASI294MC-pro
Optics: Celestron RASA 11", heuibII filter
Mount: iOptron CEM70G
Exposure: 240sec x 52flames (gain 120)

「縞ノイズとの格闘の果てに得られたこのNGC1333は,印象に残る結果です。天文用CMOSのフラットダークは,サボらず撮ろう。」

顧問は真面目な顔で言っちょった。まあそうかもしれんの。

7. 木星土星の会合

「希少な組み合わせ」に色めき立つのは,顧問のような天文マニアに限った話ではないの。たとえば撮り鉄趣味の連中が,電車がすれ違う珍奇な瞬間に人生をかけたりとか,よく聞く話じゃ。門外のワシからすると「だから何?」としか思えんぞい。

400年ぶりとかいう木星土星の接近はついこの間の話。顧問は赤外撮影という手法で,低空のシンチレーションの悪さを克服しようと試みてこんな写真を撮っとった。

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Date: 2020-12-21 7:44(UT)
Location: Miyagi, Japan
Camera: ASI 294mc
Optics: Meade LX-200-30 F10, Sightron IR720 pro filter
Exposure: 0.2sec x 750flames (gain120)
Processing; Autostackkert!3, Registax6, Photoshop

まあ,よお頑張ったとは思うが,これだけ背景が真っ黒だと別々に撮った写真を後からくっつけたように見えなくもなくて,あんまり感動しないのう。こればかしは,直接見るのが一番じゃったと思うぞ。

あと,横浜の方ではIRパスフィルタとかめんどくさい事せずに,通常のカラー撮影で,これよりずっと良い結果を出してる御仁がおった。

「まあ,関東の方が気流が良かったんですよ」

なんて、顧問はSDカードを叩きつけて悔しがっておったわい(笑)。

そうかつ

顧問です。

今年の成果としては,ようやくRASA11"を使いこなせるようになったのが一番かなと思っています。作品一枚あたりの平均露光時間は3時間弱といったところでしょうか。最近は露光時間も増加傾向な感じですが,これ以上のばすと人生を踏み外したり家族が崩壊したりしかねないので,そこそこにしておかないとと,自重しております。ブログの更新回数はこれまでで77回と,2019年の90回を下回りました。

来年の抱負は元旦に述べることにして,このブログも今年は最後になります。

みなさま関係諸氏,今年もお付き合いいただいてありがとうございました。年末は満月期ですので,自宅でゆっくりと良いお年をお迎えください。

 

 

*1:嘘です。本当のところを言うと、コンテストに入賞して掲載料を得てしまうのは、さすがに公私混同でまずいかなと考えて、応募してません。