天文はかせ幕下

Sigma 70mm DG Macro Art で天体写真を撮影してみた

先日、ならは町の木戸ダム遠征では、Sigma の70mmF2.8 DG Macro | Art レンズをお借りして使用する機会がありました。今回はそのレビューをしたいと思います

 

マクロレンズは被写体に近づいて撮影する目的で開発されているレンズです。もともと結像性能が良く、無限遠にピントを合わせる天体写真においても高い性能を発揮することで知られています。顧問はこれまで、中古で手に入れたSigma製の 70mmF2.8 EX DG Macroというレンズを使用していました。これは「カミソリマクロ」との異名もあって、とにかくシャープであることで有名です。

これまでの拙作例は

The Eridanus bubble

Around the tail of Ursa Major

などです。

今回お借りした70mmF2.8 DG Macro | Art(以降「新カミソリ」)は、70mmF2.8 EX DG Macro(以降「旧カミソリ」)の後継機種になります。旧カミソリはとくに絞り開放での青ハロが強く、天体写真を取るにはF4まで絞る必要があったのに対して、70mmF2.8 DG Macro | Artではそういった色収差が徹底的に取り除かれているとのことです。噂では開放から十分に使えるとか*1

今回はこの二つを比較してレビューしたいと思います。ただし旧カミソリはもっぱら絞って利用していたため開放でのデータがありません。ですので星像については、新カミソリがF2.8開放での撮影であるのに対して、旧カミソリはF4と、かなり不平等な条件での比較となってしまいました。予めお断りいたします。

それでは早速参りましょう

中心と周辺像

それぞれのレンズに、フルサイズのCanon EOS6Dを取り付けて撮影した画像の中心と周辺300pxの切り取り像です。どちらも冬にオリオン座の付近を撮影した結果です。

まずは旧カミソリ(F4)↓

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つづいてに新カミソリ(F2.8)↓

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です。

中心像は両者ともほぼ同等にシャープ。周辺は旧カミソリではわずかに放射状に星が伸びているのに対して、新カミソリはほぼ円形です。星の小ささで言えば、思い切り拡大してみると旧カミソリのほうがわずかにシャープに見えなくもないでしょうか。ピクセルサイズが6.54μmの6Dではどちらも若干アンダーサンプリング気味なので、厳密に比較するにはさらに解像度の高いカメラが必要そうです。F値が異なることを考えると、新カミソリの性能が素晴らしいと言わざるを得ません。

一方で周辺光量はどうでしょうか。こちらは新旧両方をF2.8で比較しました:

 

旧カミソリ↓

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新カミソリ↓

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ヒストグラムをみて比較すると、若干新カミソリのほうがグラフの幅が広く、周辺光量落ちが大きいことを示しています。前玉の径が小さく変更されていることが影響しているのかもしれません。最近のシグマのLマウント用レンズはソフトウェア経由で周辺光量を調整する仕様に変更されつつあるようで、その辺は天体写真には不利に働くことになりそうです。

ピント調整が超音波モーターに変更されていて少々戸惑いましたが、慣れれば大丈夫そうです。がお値段も比較的手頃ですし、全体的にみて星の写真にはきわめて高性能だなという感想です。購入したくなりました。

最後に再掲載になってしまいますけど、新カミソリレンズで撮影したコーン星雲からエンジェルフィッシュまでの写真をごらんください。

The corn and angelfish nebulae (re-processing ver.)

それではまた。 

 

*1:参考リンク:「石鎚の西側で星を撮っています」http://ishizuchi1957.asablo.jp/blog/2018/06/19/8898205