先日、実家に住む母親から電話がありました
「オマエ、クマが怖いから夜に星の写真撮りに行くのやめなさいよ」
とのこと。
たしかに天体写真遠征では、夜間に人気のないところに一晩滞在して撮影します。SNSを見ても警戒をされている方が多いようです。
そこで今回は「受け入れ可能なリスク」としての天体遠征における熊リスクについて考えてみたいと思います
熊の被害人数
下のグラフは熊の被害人数(怪我・死亡含む)の推移です。顧問が環境省のHPで公開されているデータをもとに作成しました。2025年度に着目すると10月末時点で190名の方が被害に遭われています。このまま行くと今年度は400名弱の被害人数になるペースです。

2009年から2024年度の平均は100名程度なので、今年は例年の4倍ほどの被害人数が出ていることになります。確かにこれは尋常ならざる事態で、最近の報道の過熱もそれを物語っています。
このような熊のリスクを評価するにあたっては、我々がすでに受け入れているリスクとの比較が役に立ちます。わかりやすい比較対象は交通事故と登山だと思います。
他の行動リスクとの比較
以下の確率は、かなり大雑把な見積りですので、そのつもりでお読みください。
交通事故
交通事故は年間で30万件ほど発生しています。日本の運転免許の保有者数は8000万人、ペーパードライバーは400万人くらいなので、年間の平均的な交通事後遭遇確率は、ざっくりと0.4%です。これは1日あたりに直すと0.001%です。
登山・ハイキング
こちらによると、2022年の登山・ハイキング人口は2023年で500万人くらい。山岳遭難の人数は年間3506人でした。ですので年間の登山ファンの遭難確率は0.07%です。総務省の統計によると、平均的な登山ファンは年に10回ほどの登山を行うので、登山1回あたりの遭難確率はざっくりと0.007%です。
上記と比較するために、全国の熊の被害人数を高く見積もって400名/年としてみます。確率を計算するための分母は「ふだん山間部でよく行動する日本人の数」とするべきでしょう。これについてはデータが見つけられなかったのですが、登山・ハイキングファンの人数よりもずっと多いはずです。ですので、熊の被害の確率は、計算するまでもなく登山と比べてずっと低くなります。交通事故と比べても低いかせいぜい同程度でしょう。(注:登山遭難と熊被害は必ずしも分離できないのでちょっと話がごちゃつきますが、それを考慮したとしても熊被害の確率は低いはずです)
結果の解釈(まとめ)
交通事故のリスクと(天体遠征における)熊被害を同列には比較できません。なぜなら自動車は生活に不可欠ですが、我々は天体遠征をしなくても生きていけるからです。しかし登山・ハイキングのリスクとの比較においても、熊被害の遭遇確率は低い結果になりました。
もちろん、熊の被害は近年急増した事態です。そのため未知数な点が多く、リスクの見積りも大きな誤差が伴う可能性があります。地域や状況によっては遭遇確率が一桁以上高い場合もあり得るかもしれません。ですので、少し過剰めに警戒するのが不合理だとは必ずしも言い切れません。
居眠り運転のリスクを心配して、天体遠征をやめた友人も知っています。結局は、天体遠征における熊遭遇のリスク判断も、結局は個人の価値観の問題になってしまいます。
「人による」って結論は避けたいものですが、そうなのだから仕方ありません。
5行まとめ
顧問の価値観では、熊のリスクは天体写真遠征をやめるほど大きくないと判断します。可能な対策をとりつつ天体写真遠征を楽しんでいきたいと思いますし、天体写真をやってみたいと思う人があれば、「楽しい趣味」としてお勧めし、一緒にやっていこうと考えています。
