はじめに
惑星状星雲とは、私たちの太陽のような、ごく普通の星が迎える最期の姿だといいます。
そう考えると、夜空は無数の星雲で埋め尽くされ、まるで宇宙にインクを撒き散らしたような光景が広がっていてもよさそうです。現実にはそうなっていないのは、その姿が、星の一生に比べてとても短い時間しか続かないからなのでしょう。
もし星空をくまなく探索し、星と惑星状星雲の数の比を求めることができれば、その比は寿命の比に近い値になっていそうです。実際にそうした調査が行われたのかはわかりませんが、惑星状星雲の寿命はおよそ千年から数万年といわれています。太陽の寿命を人の一生に置き換えるなら、惑星状星雲の姿は数分から一時間ほどしか続かない計算になります。一発の花火・・・程ではありませんが、小規模な花火大会一回分、あるいはキャンプの焚き火くらいです。
NGC246のかわいい姿
止まって見える天体写真も、そういった瞬間の姿を捉えていると考えると味わい深いものがあります。今回はチリのリモートでNGC246星雲を撮影しました。
撮影データは後で加えます
通常とは反対の「南が上」で掲載しました。そうすると、小さなお化けが微笑みながら星を食べようとしている姿に見えてきます。

特殊な中心星
見た目の可愛らしさとは別の話で、NGC246には他の惑星状星雲に例のない特徴があります。中心星である白色矮星が3連星系になっていて、その周りを普通の恒星と赤色矮星が回っているのだそうです。とくに赤色矮星が発見されたのは2014年とかなり最近の話です*1。
顧問が撮影した画像でも、3連星の一番外側の恒星がギリギリ分解できていました。

この二つの星は、画像上で4秒角ほど離れています。NGC246までの距離は1600光年なので、恒星と白色矮星の実際の距離は0.03光年≒2000天文単位になる計算です。*1の記事では距離が1900天文単位とあるので、この光芒が3連星系の一つであると結論して間違いなさそうです*2。全く見えない赤色矮星はその内側1/3くらいの距離のところをまわっているそうです。
おわりに
惑星状星雲は小さくて地味、という印象がありました。実は今まで、ほとんど撮影してこなかったのです。図鑑などをみてみると、その瞬間ごとの実に様々な姿の惑星状星雲を見ることができて、とても面白いです*3。
いまは、可能な限りの惑星状星雲を撮影して、コレクションしたい気分です。
