天文はかせ幕下

3代目NJP箱(タカハシNJP赤道儀用の箱)

沿革

NJP箱(1代目)

そこらに転がっていた廃材を集めて3年前に作製しました。

f:id:snct-astro:20150802153311j:plain

こんなものでした(右側)。しかしこれはサイズが70cm四方もあってスペースとるために使い勝手が悪く、やがて解体。バーベキューの薪へ消えて行きました。

NJPスタンド(2代目)

たしか、2年前くらい前に廃材を集めて作成しました。NJPを台車の上に立ててボルトで固定するタイプなので、NJPスタンド。ところが運搬中に転倒したために、一度使用しただけて廃棄しました。あまりにひどい作品だったため、写真も残っていません。

3代目NJP箱

それからしばらく、車のシートの上にドスンと横置きして運搬されていたNJP赤道儀。しかし夏合宿へ向けて、専用の箱をこさえました。今回も主に廃材利用です。

f:id:snct-astro:20180810173247j:plain

なぜ初めからこうしなかったのか。3代目は全体がすっぽり収まる構造にしました。赤道儀は箱の中で四点支持されていて、モーターやギアに自重の負荷がかからないようになっています。さらに薄板で蓋ができるので、運搬中は上に箱を置くこともできますし、観測中はノートパソコンを置く机として活躍する予定です。 

宮城県も猛暑が続いています。熱い空気は水蒸気量も多いみたいで、夕刻から夜には雲がよく出ます。その雲は、朝になって日が差してくるとすっと消えて、「今日も暑くなりそうだな」といった感の青空。ミンミンゼミも早々に鳴き出す始末です。

3日の夜はようやくチャンスに恵まれて、土星、火星、月と撮影しました。まずは火星の結果を。

f:id:snct-astro:20180804152434j:plain

火星:Aug. 3 2018, 23:43
鏡筒:Meade LX200-30cm + Kasai 2倍バローレンズ
合成焦点距離:6000mm(F20)
カメラ:ZWO ASI174MM CMOSカメラ
フィルター:kenko MC R1
gain:169, 露光:0.006sec*60sec
AutoStackkert!にて20%スタック x3Drizzle、Registax6.0でウェーブレット処理。

火星は先日撮影した時よりもずっと明るくて、gainを下げてもシャッタースピートが身近くて済みます。北半球にみえる血管の浮き出た筋のような構造は、ウェーブレット処理のやり過ぎかもしれません。次回ゆっくり再処理してみます。

昼間の炎天の影響がのこっているのか、23時を過ぎた撮影でも筒内気流の影響(?)を感じました。撮影している視野全体がなにかこう、細胞が脈打つような感じでうごめくのですね。一方、上空の気流が悪い場合は、川の流れ越しに星を見ているようなそんな像になります。

筒内気流への対策は、現在計画中で、来週には実施できると思います。

Nikkor 300mm レンズの色収差のこと

前口上

28年前、平成2年。天文部が購入したNikkor 300mm F2.8については、これまで何度か紹介してきました。当時の高級レンズも、最近のデジカメで天体撮影に使用するにあたっては、どうしても強い色収差が目立ってしまいます。それは、写野の中心から放射状に青や赤の偽色が現れるタイプの収差で、一般的に「倍率色収差」と呼ばれているそうです。一段絞ってF4とし、APS-Cセンサーで撮影しても、かなり強い青フリンジがのこって、画像処理に難儀します。

しかし、300mmの焦点距離は非常に使いやすい。M43やバラ星雲、北アメリカ星雲からM31、または彗星など、たくさんの撮影対象に使えます。部としてはなんとかこの古いレンズを活かしたい。

フリンジへの対策として、青〜紫の波長をカットするフィルターの使用が良くやられています。そこで、

  • Astronomik CLS CCDフィルター(440nm以下をカット)
  • L42シャープカットフィルター(420nm以下をカット)

の二つについて、青フリンジへの影響を比べてみました。CLS CCDフィルターは、カメラセンサー面の手前に取り付けるタイプ。L42は下の写真のように、

f:id:snct-astro:20180724192915j:plain

レンズのフィルタースロットにねじ込める31mmサイズを使用しました。

結果

f:id:snct-astro:20180725184529j:plain

APS-C、F4で撮影した撮って出し画像の周辺部。左から、フィルターなし、L42フィルター、CLSCCDフィルターの結果。

本来の目的ではないものの、CLSCCDフィルターを使用すると青フリンジがすっかり消えます。代償として、光害カットフィルターは青色のかなりの部分をカットするようで、結果として得られる天体写真は青が貧しいものになってしまいます。

いっぽう、L42フィルターの結果はどうでしょうかね。じゃっかん青フリンジが弱くなっているようにはみえますが、なかなかに微妙です。L42フィルターはケンコー光学という会社が扱っていて、一般消費者向けではないために、手に入れるためにはそれなりに労力がかかりました。それに見合う結果かと言われると、かなり「?」ですが、これで満足すべきなのかもしれません。

結論

440nm以下をカットすれば青フリンジは消えるけれど、420nm以下ではその効果は不十分。つまり、「青フリンジをカットするためには、青をカットすればよい」という身も蓋もない言説が我々の結論です。冷静に考えれば、星雲星団の青を残しつつ、青フリンジだけをカットするという操作を、フィルターワークだけで実現できるという考え方が虫の良すぎることなのかもしれません。「フリンジキラー」と名付けられたフィルターも同じようなものなんじゃないかなと想像しています。

まいど、役に立たない情報ですみません。ざんねんでした。

蛇足

フィルターなんか使わなくても、Photoshopでぱぱっと青フリンジは除去できます。でもそうすると・・・

f:id:snct-astro:20180725184731p:plain

こんな風に、散光星雲のなかの星の色が落ちくぼんでしまったり、または本来赤い微光星が白くなってしまったりします。

なかなか悩ましく、そういえばVixenから新発売されたFL55SSって、ちょうど300mmですね。買っちゃおうかなぁなんて。

 

蔵王で天の川とNGC7000

天文部の学生たちはテスト週間でお勉強をしており、活動自粛状態です。教員のわたくしは、「こいつで、くたばりやがれ!」などと叫びながら(?)試験問題をサクッと作成し、土曜の夜に蔵王に行ってきました。ご近所の高専OB、Hさんを誘いました。

月没は0時頃。予想通りに晴れはしたものの、透明度の低い夜でした。賽の磧には4〜5組ほどの天文ファンが集まっていて、最近よくご一緒しているYさんもすでに準備されていました。こんなにたくさんの人たちが集まっている場所で撮影するのは、初めてです。夏の蔵王は仙台の天体撮影のメッカなんですね。 

垂直に立ち上がる天の川と火星

Hさんが撮影された天の川の写真を紹介します。地平ギリギリまで天の川が良く写っていて、射手座の南斗六星も霞の中にはっきり見えています。蔵王の南西方向の暗さが素晴らしいことがよくわかりました。左側にひときわ明るく写っているのが火星です。

f:id:snct-astro:20180724180941j:plain
7月21日 25時27分ころ
Camera: Nikon D810(ノーマル)
Lens: AF-S Nikkor 18-35mm f/3.5-4.5G ED (18mm F3.5)
露光:70sec, ISO3600, 1flame
Vixen ポラリエによる追尾。Photoshopでレタッチ
このレンズですが、中央部はかなりシャープです。周辺部はすこし星が三角形になりますが、広角レンズなのでほとんどわからないです。

アメリカ星雲(NGC7000)

わたくしは、Nikonの古いサンニッパレンズで天頂付近の北アメリカ星雲を撮影しましたよ。当日は風が強くて、ガイドも暴れっぱなし。透明度が悪くて、画像処理が辛かったです。なんとかモノにできました。

NGC7000

date: 21 July, 2018 NGC7000(北アメリカ星雲)
Location: 蔵王、賽の磧
Camera: Canon EOS 60Da
Lens: Nikkor 300mm F2.8 ED (F4)
Exposure: ISO1600, 300sec x 15flames
Mount: Takahashi NJP, PHD2 guide

青ハロのきついこのレンズ、前回は光害カットフィルターを適用して、ハロは抑えられたものの、かわりに緑と赤のイクラ状態の星が出現して、撃沈しました。今回はL42シャープカットフィルターを使っています。その詳細については次回のエントリで報告いたします。

土星と火星、

この時期、東北だと夜中の1時ころに天の川が南西方向に垂直に立ち上がる。その中で輝く土星と火星を含んだ星景を撮影したいと思っていて、なかなかチャンスがない。

昨夜の金曜日も靄がかかったような天気で、蔵王に行けば上に抜けるかなと思いつつも、リスクを恐れて足が動かなかった。日中の暑さで疲れてもいました。

そのかわり、土星と火星を撮影しました。

f:id:snct-astro:20180721005839j:plain

2018年7月20日23:15 土星
鏡筒:Meade LX200-30cm + Kasai 2倍バローレンズ
カメラ:ZWO ASI174MM CMOSカメラ
フィルター:kenko MC R1
gain:400, 露光:0.03sec*60sec
AutoStackkert!にて20%スタック x3Drizzle、Registax6.0でウェーブレット処理。

f:id:snct-astro:20180721005843j:plain

2018年7月20日23:23 火星
鏡筒:Meade LX200-30cm + Kasai 2倍バローレンズ
カメラ:ZWO ASI174MM CMOSカメラ
フィルター:kenko MC R1
gain:250, 露光:0.008sec*60sec
AutoStackkert!にて20%スタック x3Drizzle、Registax6.0でウェーブレット処理。 

どちらもイマイチ。土星カッシーニの隙間が全周見えなくて、手前が潰れている。火星に至っては、ウェーブレット処理で浮かんで来たこの模様が、果たして本当の火星の模様なのかよくわかりません。

夜中に撮影しているので、おそらく筒内気流はそれほど影響していないと思うのですが、ピントを追い込む方法をもうしこし考えないといけない気がしています

梅雨の晴れ間の観測会 in 白石蔵王スキー場

前置き(読み飛ばし可)

顧問が学生であった頃の同級生に木門(バスケ部)がいた。普通の人間が1時間かかるところを、20分もかからずにパパッと理解してしまう、そういう頭のよい奴であった。そのスマートさゆえの嫌味ったらしいところもあって、例えばテスト週間。我々が寮の居室で一夜漬けの勉強をしていると、木門はふらっと現われて言う

「明日のザイリキ*1のテスト範囲どこまでだっけ?」
「65ぺーじまでだよ」
「ふーん・・・、余裕ダラァー?

と言いのこして、去っていくのである。今になって思うと、木門は別にテスト範囲を知りたかったわけではなかった。ただ単に「ヨユウダラー」という遠州弁を我々にぶっつけたかっただけだったのだろう。

テスト週間前の観測会

新月期の週末。運良く晴れ間が予想されていたので、顧問は観測会を企画。部員の参加を募りました。しかし、テストまで一週間という時期でもあって、集まりが良くありません*2。そんな中「テスト?ヨユウダラー」と言いながら、ノゾキド、ユリナ、班長、そして今回初参加のマレーシア人留学生、チョンが集まりました。 

チョンくんは、今年度から我々の学校で勉強を始めています。

「なんで、日本の寮のご飯は、朝ごはんも、昼ご飯も、晩ご飯も、みそしる出ますか? マレーシア違います。」

なんて質問で我々を当惑させたりしてくるところが、楽しいヤツです。

白石スキー場に到着すると、西の屏風岳ごえの雲が天頂付近に定在していて、北極星も見えません。あとからYさんが合流しても状況は変わらず、唯一晴れていた射手座・さそり座付近を双眼鏡で眼視しました。干潟星雲やオメガ星雲、M22などの見え味は素晴らしく、久しぶりにゆっくりと星を見た気分です。晴れていると撮影にてんてこ舞いで、PHD2のグラフばっかり眺めて星を見なかったりします。

こんな写真も撮影しました。

f:id:snct-astro:20180714152942j:plain

Sigma 70mm Macroでアンタレス付近

カミソリマクロ(旧式)は、鋭いながらも青ハロの強いレンズです。L42フィルターがそれを程よくカットしてくれるとのことで、今回それをテストして見ましたが、盛大なゴーストがでて、ダメでした。それでまあ、フィルターを外して、この日唯一晴れ続けていたアンタレス付近を撮影しました。

f:id:snct-astro:20180714153603j:plain

7月13日 アンタレス付近、白石蔵王スキー場
camera: Canon EOS 60Da
Lens: Sigma 70mm F2.8 EX DG Macro (F4)
Mount: Kenko SkyMemoR(ノータッチ)
撮影条件:ISO1600, 210sec, 18枚スタック 

撮影時はだいぶん高度が低く、白石市の光害カブリもかなり強かったので強調はこの辺が限界でした。青ハロの処理にさえ気をつければ*3でもこのシャープさは、3万円くらいで手にはいるレンズとは思えませんね。夏は白鳥座付近を撮影したいぞ。 

 

 

*1:材料力学のこと

*2:東北大に通っているOBのアベにも声かけしましたが、なんと大学院生にもなってテスト週間に苦しんでいるそうです。顧問が院生の頃は、テスト週間なんてなかったけど。

*3:拡大すると、青ハロ除去の影響で星の周りが黒く落ち込んでいるのがわかります。

過去画像の再処理してます・・

先日、DeepSkyStackerでスタックする前にraw現像を施したほうが、色が引き出せやすいという記事

raw現像を取り入れた画像処理の流れ - 天文はかせ序二段(仮)

を載せまして、当ブログとしては、あれだけブックマークがついたのは初めてのことでした*1。7月の新月期に入っても、宮城県は曇り空が続いていますので、ここは自宅にこもって、これまでに撮影した画像の再処理をいくつか試みていました。

M16の再処理

まず、今年の6月13日に撮影したM16ワシ星雲の画像の従来の方法による処理結果です:

M16_eagle nebula

2018/6/13 22:00-25:30
カメラ:
Canon 60Da 

光学系:Nikkor 300mm F2.8 ED (->F4)  with Astronomik CLS CCD filter
露光:ISO1600 360sec x 22 
マウント:NJP赤道儀、PHD2ガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。PhotoShopでレタッチ。

これは、見た感じ「うーん、赤いね・・」という感じしか出ない感じです。新しい方法なら、色が引き出せるかもしれません。ところが結果は大して変わりませんでした(なので掲載も省略します。)。そもそも元画像には青の情報がほぼ存在していないようです。もともと赤が一方的に強い領域なのか、それともこの撮影で使用していた光害カットフィルター(Astronomik CLS CCD)が原因の可能性もありそうです。

M8,M20から「バンビの横顔」

もう一つ、干潟星雲、三裂星雲から「バンビの横顔」にかけての画像を再処理しました。

まずは従来の方法による処理結果:

lagoon_HDR_ps2

カメラ:Canon 60Da 
レンズ:Apo-Sonner 135mm F2->F2.8
露光:ISO1600 90sec x 22 + 45sec x 6 + 20sec x 6
マウント:SkyMemoRノータッチガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。HDR EflexProでHDR合成。PhotoShopでレタッチ。

そして新しい方法による処理結果:

around M20 and M8

カメラ:Canon 60Da 
レンズ:Apo-Sonner 135mm F2->F2.8
露光:ISO1600 90sec x 22
マウント:SkyMemoRノータッチガイド
画像処理:DSSでフラット・スタック処理。PhotoShopでレタッチ。

Photoshopによる画像処理も、我々の場合はまだまだ発展途上の状態で、うえの二つは全く同じレタッチをしているわけでなく、単純な比較はできないということをあらかじめお断りしつつ、新しい方法のほうが色がよく出ていると思います。とくに三裂星雲の青いほうの部分、干潟星雲の左側のNGC6559(猫の手星雲)、バンビの首元あたりのNGC6595あたりを見比べてみるとわかりやすいですね。

これから夏の撮影が、ますます楽しみになってきます。

*1:天文リフレクションのかたが、我々がアップするような小ネタについても丁寧にピックアップしてくださるおかげだとおもいます。素晴らしい活動ですね、ありがとうございます。