前口上
28年前、平成2年。天文部が購入したNikkor 300mm F2.8については、これまで何度か紹介してきました。当時の高級レンズも、最近のデジカメで天体撮影に使用するにあたっては、どうしても強い色収差が目立ってしまいます。それは、写野の中心から放射状に青や赤の偽色が現れるタイプの収差で、一般的に「倍率色収差」と呼ばれているそうです。一段絞ってF4とし、APS-Cセンサーで撮影しても、かなり強い青フリンジがのこって、画像処理に難儀します。
しかし、300mmの焦点距離は非常に使いやすい。M43やバラ星雲、北アメリカ星雲からM31、または彗星など、たくさんの撮影対象に使えます。部としてはなんとかこの古いレンズを活かしたい。
フリンジへの対策として、青〜紫の波長をカットするフィルターの使用が良くやられています。そこで、
- Astronomik CLS CCDフィルター(440nm以下をカット)
- L42シャープカットフィルター(420nm以下をカット)
の二つについて、青フリンジへの影響を比べてみました。CLS CCDフィルターは、カメラセンサー面の手前に取り付けるタイプ。L42は下の写真のように、
レンズのフィルタースロットにねじ込める31mmサイズを使用しました。
結果
本来の目的ではないものの、CLSCCDフィルターを使用すると青フリンジがすっかり消えます。代償として、光害カットフィルターは青色のかなりの部分をカットするようで、結果として得られる天体写真は青が貧しいものになってしまいます。
いっぽう、L42フィルターの結果はどうでしょうかね。じゃっかん青フリンジが弱くなっているようにはみえますが、なかなかに微妙です。L42フィルターはケンコー光学という会社が扱っていて、一般消費者向けではないために、手に入れるためにはそれなりに労力がかかりました。それに見合う結果かと言われると、かなり「?」ですが、これで満足すべきなのかもしれません。
結論
440nm以下をカットすれば青フリンジは消えるけれど、420nm以下ではその効果は不十分。つまり、「青フリンジをカットするためには、青をカットすればよい」という身も蓋もない言説が我々の結論です。冷静に考えれば、星雲星団の青を残しつつ、青フリンジだけをカットするという操作を、フィルターワークだけで実現できるという考え方が虫の良すぎることなのかもしれません。「フリンジキラー」と名付けられたフィルターも同じようなものなんじゃないかなと想像しています。
まいど、役に立たない情報ですみません。ざんねんでした。
蛇足
フィルターなんか使わなくても、Photoshopでぱぱっと青フリンジは除去できます。でもそうすると・・・
こんな風に、散光星雲のなかの星の色が落ちくぼんでしまったり、または本来赤い微光星が白くなってしまったりします。
なかなか悩ましく、そういえばVixenから新発売されたFL55SSって、ちょうど300mmですね。買っちゃおうかなぁなんて。