天文はかせ幕下

O型主系列星に注目する

光星雲はそれ自体が光っているのではないーー。宇宙空間を漂っている水素や酸素が、近くにある明るい星の光を吸収し、それぞれの元素特有の光を放出することで光っているのである。

顧問はそれらのことを、ウィキペディアを読むなどして学びました。

水素や酸素を発光させるには大きいエネルギーが必要で、そこらの烏合の星では無理なのだとか。散光星雲を光らせているのは、おもにO型とかB型と分類されるエリート級に高温の星です。

天体写真の画像処理をするにあたって、「星が大事ですよー」とよく見聞きします。星そのものの美しい表現以外にも、星と星雲の関係についても着目して処理をしたら良い結果に成るのではないか。それならば、散光星雲にエネルギーを供給しているO型の星が何処にあるのか、把握しておくのは悪くないと思いますた。

O型・B型主系列星

その前にO型・B型とはなにか?下のグラフで説明します。

星の色と星の絶対等級*1の間にはある関係があり、それぞれを縦軸・横軸にとって、いろいろな星のデータをプロットすると、一本のラインにのります。それらの星は「主系列星」と呼ばれています。一方で赤色巨星白色矮星、ラインから外れる例外です。

これら主系列星は、グラフに示した星の左上から温度の高い順にO->B->A->F->G->...と名前がついて分類されています。最もエネルギーの高い星が「O型主系列星」で、太陽の近くでは300万に1個くらいの割合でしか存在しないのだそうです。

O型主系列星の探し方

300万に1個と激希少ながらも、O型星の周りには星雲が光っていることが多いのですぐ見つかります。Stellariumでそれっぽい星をクリックしてみましょう。すると、特定の星だけ「スペクトル型」が表示されるようになっています

初めのアルファベットがスペクトルの分類型を表していて、そのあとにゴチャゴチャっとつづく記号は星特有の物質による吸収線*2を表しているのだそうです。それについては今は深入りしないでおきます。

O型星のリスト

今まで撮影した天体写真から、O型星を8つほどピックアップしてみました。

「お、この星がO型だったのかー」

みたいな感じで楽しんでいただければ幸いです。

主要な星雲内で見つかるO型星(丸印)

オリオン大星雲のトラペジウムの一つはO型でした。カリフォルニア星雲も星と散光星雲の関係が分かりやすいですね。北アメリカ星雲からO型があまり見つからないのは少し意外。面白かったのは、呪いで有名なアルニタクです。馬頭星雲の周辺で唯一O型でした。特異な「燃える木星雲」は、アルニタクの放射エネルギーの強さを物語っているように見えます。撮影時に悪さをしやすいのも、明るさだけでなくスペクトルが関係しているかもしれません。

主要な星雲内で見つかるO型星(丸印)

M16の創造の柱付近や、干潟星雲の中心部には、複数のO型星が見つかるようです。三裂星雲も含めてこの辺りは銀河系の中心部ですから、高温の星が多いようです。これらの星雲に比べて淡い「象の鼻星雲」の中にも、一つ見つかります。象の鼻はこの星に向かって伸びているように見えますね。

 

以上です!

*1:星本来の明るさ。地球から見た見た目の明るさとは異なる。

*2:その物質が存在することで、特定の波長の光が吸収されスペクトルに暗線として現れる