天文はかせ幕下

Astrobinの"top pick"ゲットと、同サイトの審査過程のご紹介

お久しぶりのブログ更新は冒頭から自慢話になってしまい恐縮至極でありますが、AsrtoBinと呼ばれる海外のメジャーな天体写真投稿サイトがありまして、最近、そこにアップロードした拙作の写真二点が連続して"Top picks"(後述)に選ばれました。

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上は、顧問が同サイトにアップしている画像のリストです。いづれも自信作のみ載せていました。そのなかで、銀色の星マークが付いている写真が"Top Picks"になります。先月撮影していたアンタレス付近のモザイクと、M64と周辺の分子雲の画像です。

Rho Ophiuchi cloud complex part 2(2021)

around M64 (stretched)

無料メンバーの場合、Astrobinに投稿できる写真は10点までとなります。対して有料プランは$22/yの"Lite"、$43.5/yの"Premium"、 $65.5/yの"Ultimate"の3つがあり、それぞれ投稿できる画像サイズや枚数に差が設けられています。詳しくはこちらをご覧ください。

顧問は今回、とりあえず"Lite"を選びました。

さて、画像をアップして共有するだけなら、わざわざお金を払う必要はわりません。FlickrやTelescopiumを利用すれば、高解像度の画像を無料で共有できます。Astrobinのユニークさは、有料メンバーに提供される画像のレビューと審査過程にあり、これにはお金を支払う価値があるなと感じました。今回はその詳細をご紹介したいと思います。

Astrobinの天体写真の審査過程について

まず驚いたのは、毎日行われている天体写真の審査が、人力である点でした*1。その審査の詳細は

に詳述されています。この内容がとても面白いです。いかにポイントを要約します。

まず”Top Picks”や"Image of the day"は、画像の優劣を決める競争ではないことが強調されています。その目的は、第一にアマチュア天文家の成果を世に知らしめることであり、第二には、すぐれた画像の共有によって技術向上に役立てること、とされています。

このへんはお約束的ながら、美しい理念であると思います。あと興味深いのは、特に以下の項目

  • 使用した撮影機材の値段
  • 撮影した場所の空の暗さ
  • 露光時間などのデータ取得条件

が、審査においてまったく度外視されるという点です。これはちょっと残酷でもありますね。

具体的な審査過程は3段階に分かれていて、その仕組みも面白いです:

 

STAGE1: 我々が画像を投稿すると、まずそれらは匿名の状態でAstrobin内に128名いる"Submitter"と呼ばれるスタッフのうち、ランダムに選ばれた26名(全体の20%)に送られます。その画像は、それぞれのSubmitterのスペースに48時間閲覧可能な状態に表示され、その時間内に3名以上の"Submitter"が「いいね」とすれば、画像は次の審査段階STAGE2に進むとのことです。と同時に”Top pick nomination”と銘打った銅メダルが画像に授与されます。つまりアップ後2日間何もなければ残念賞ということですね。ちなみに銅メダルは

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こんなモノです。

STAGE2:  ”Top pick nomination”された画像は、今度はAstrobin内に64名いるの"Reviewer"と呼ばれるスタッフのうち、ランダムに選ばれた13名(全体の20%)に送られます。その画像は、それぞれのReviewerのスペースに48時間閲覧可能な状態に表示され、その時間内に3名以上のReviewerが「いいね」とすれば、その画像は次の審査段階STAGE3に進みます。と同時に”Top picks”と銘打った銀メダルが画像に授与されるというわけです。ちなみに銀メダルは上にも書いてますが

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この星マークです

STAGE3: ”Top pick"に選ばれた画像は、最後にAstrobin内に8名いる"Judge"と呼ばれるスタッフ全員に送られます。その画像は、それぞれのJudgeのスペースに7日間閲覧可能な状態に表示され、だれか一人が「いいね」とすれば、その画像が"Image of the day"の掲載リストに加えられる。とのことです。と同時にトロフィーマークの金メダルが授与されるとのことです。

 

以上ですが、とてもよく考えられた仕組みで、特に審査が匿名で進むことに好感が持てました。これは国内の天文雑誌のコンテストに比較してもとても優れていると思います。掲載スペースの問題やいわゆる「旬モノ先取り」の優位性が薄くなる仕組みもいいと思います。

また審査において重要とされる技術的項目も、上のリンクに箇条書きされています。それについては省略しますが、読むと勉強になります。たとえば

  • Topazデノイズのやりすぎ

とか書かれているのが面白いです。

今後は積極的にAstrobinに投稿しようと思っています。いつか欲しいですねー"IOTD"。1日1枚だから、継続すればいつかチャンスあるかな?

 

 

 

 

 

 

 

*1:Flickerにも一定の条件を満たすと"in explore"に写真が「入賞」する仕組みがありますが、これはコンピュータプログラムによって行われているようです。