天文はかせ幕下

新ソンブレロチャレンジ。恒星ストリームを撮影しました

ソンブレロ銀河には、非常に淡い「恒星ストリーム」が存在するらしい---

このブログにたまにコメントくださるUTOさんよりそんな情報をいただきました。

 

恒星ストリームは、一般的に非常に淡い銀河本体の星の連なりで、過去に起こった銀河間の相互作用などが原因で形成されるそうです。こういった構造の発見は、比較的最近であると思います。

これまでの顧問の撮影経験では、たとえばM63やM51が、恒星ストリームを伴う銀河の例です:

M63 and its tidal stream

M51(reprocessing)

個人的に思い入れの強いソンブレロ銀河。昨年春に飯館村で撮影した例を強強トレッチして見直してみますと、下のように影も形も見えません(みえないよね?)

astrobinで検索しても数例の作品があるばかりで、南中高度の低い日本でM104の恒星ストリームをとらえた例は恐らく無いとおもいます。チリなら空はとても暗いしM104はほぼ天頂に来ます。ガッツリ露光すれば写せそうです。

というわけで結論

M104 and its halo and tidal stream

Date: 2023-3-23~4-27
Location: El Sauce, Chile
Optics: Vixen R200ss, CorrectorPH, Astrodon LRGBHaO3 E-series
Camera: ASI294MM-pro
Exposure:
L120x607
R120x100
G120x96
B120x97
Total  30.1h
R200ss, ASI294MM

数日をかけて30時間の露光を行いました。銀河本体を中心として、時計の5時方向にひろがるフラフープ状の構造ははっきり出ましたが、11時方向のハローの凸構造はあまり写りませんでした。DBEによる背景の補正で消えてしまったかもしれず、追加露光後の処理で確認してみます。前例では、5時方向と11時方向のストリームが合わさって、全体的には土星のような形になるようです。

こちらは、モノクロ反転させてさらに強調した結果です。

「お相手」はどこに?

恒星ストリームが銀河の相互作用で形成されるなら、「お相手」の銀河はいったいどこに行ったのでしょうか?これは考えてみると不思議です。

M51はまさに相互作用の真っ最中なのでわかりやすいですね。M63のお相手は、ひょっとするとこれだったのかもしれません(PGC45992)

 

一方で、ソンブレロ銀河はこれだけの恒星ストリームが形成されているわけですから、それなりの質量をもつ銀河が過去に衝突したのでしょう。しかし周辺には無数の矮小銀河が分布しているだけで、それらしい伴銀河は見当たりません。M104の形も乱れが見えず、過去に衝突を経験しているようには思えません

以下は妄想ですが、

M104は5000万光年も離れている割には極めて明るいです。質量が中心に極めて高密度に集まっていて、ちょっとした衝突ではびくともしないのかもしれません。そこへ、軟弱な感じの楕円銀河がぼわーんと衝突して、そのまま取り込まれ、ハローと恒星ストリームがが出来上がったのかもしれませんね。