天文はかせ幕下

彗星を撮る:計画から実際の撮影まで —— ポン・ブルックス彗星編

以下では、今回の12P/Pons-Brooks彗星の撮影について計画から撮影場所選び、実際の撮影までをまとめました。今年の秋にはツチンシャン(紫金山)・アトラス彗星も大いに期待されてますし、その時の撮影の参考になれば幸いです。 彗星が見える位置の確認 彗星…

1月・2月のチリリモート

チリでのリモート撮影をしておりますと、撮影している本人が一体どこを撮っているのか、てんで分かっていないことがあります。 一つの対象を数十時間も露光し続けているというのに、なんでそんなことになってしまうのか。 あかんではないか。 というのはやは…

「時空を超えた贈り物 — 宇宙は不思議で美しい —」 を見てきました

先日、CP+に合わせて実家への帰省をしていました。その帰り道に、かなりの遅ればせで、丹羽雅彦さんの個展 「時空を超えた贈り物 — 宇宙は不思議で美しい —」 を見てきました。実際の会期は昨年の8月で終わっているのですが、顧問は丹羽氏と個人的な友人で…

"My Astronomy Picture Of the Year"を、少し贅沢して印刷する

序 たまに納得のいく天体写真が撮れたときは、フジプリで印刷を発注して、それをハクバのフォトフレームに納め、自宅の壁に飾っておりました。 一方で、年に一度はMAPOY(註:My Astronomy Picture Of the Year)を定め、もっと気合の入った印刷をなして額装し…

LRGB合成するとき、BXTはどの段階で使えばよいのだろうか?問題

(注意:今回のエントリはまだ結論が出ておらず、考察というよりは心配事の吐露みたいな内容です。最後まで読まれて、「なんだよ、この野郎」とガッカリしないよう、あらかじめお断りしておきます) はじめに 心配な問題点 考えられる対策 リニアなLRGB画像…

2024年の撮り始めは神割崎でエンゼルフィッシュ

秋田県勢のみなさんと賑やかに撮影 長い夜 撮影結果 エンゼルフィッシュ星雲の周辺 この領域について(なんちゃって天文学) 秋田県勢のみなさんと賑やかに撮影 冬になりますと、日本海側の天文ファンが晴れ間を求めて太平洋岸までやってきます。1月14日…

往年?の名機EOS6Dの性能を、Drizzle+BXTで150%引き出す

「低画素機」の利点と欠点 低画素機は、Drizzle Integrationが効く! さらにBXTが効く!! Before-Afterギャラリー リザルト おわりに:EOS6Dはまだまだ現役 冒頭の写真は、135mmF2レンズのZeiss Apo Sonnarを取り付けたCanon EOS6Dであります。顧問にとっ…

エリダヌス座のNGC1269/1291と、銀河の進化

オリオン座の南西、エリダヌス座の方向に見えるNGC1269/1291をチリから撮影しました。 エリダヌスとはギリシャ神話の大河のことだそうです。その1等星アナルケルは南端に位置していて、「川の終わり」という意味であることから、流れは空の北から南に向かっ…

Starnet2開発者による、深層学習ノイズ処理プログラムDeepSNRが良い(Pixinsight)

新年あけましておめでとうございます。今年もみなさまのお役に立てる情報を発信できるよう、頑張ってまいります。 さて、海外の掲示板をいろいろ斜め読みしていましたら、Pixinsightで利用できるディープラーニングを使ったノイズ処理プログラムを見つけまし…

2023年の締めくくりにカモメ星雲を撮影しました

「全天で最も美しいHα領域の散光星雲を3つ挙げよ」と言われたら、皆さんは何を選ぶでしょうか? うーん、私ならランク付きで カモメ星雲 馬頭星雲 なし なし 猫の手星雲から干潟星雲かけて を挙げます。「3、4がなくて」ってやつです。皆さんのランク付け…

2023年ふたご座流星群:極大日の夜に観測できました

今月14日の夜から翌日未明に極大を迎えたふたご座流星群。全国的に雲が広がる空模様のなか、宮城県の沿岸部は運良く雲が切れて晴れ間に恵まれました。当初から計画していた観測会は、参加人数が少なかったこともあり、ちょっと無理して神割崎まで出かけて…

スタックでの最適な重み付けをもとめる PixinsightのWeight Optimizer スクリプト

はじめに まずは使い方 基本的な使い方 処理に時間がかかりすぎる時は"Subregion"を指定する 結果の吟味 グラフで比較 スタック前のフレームに画質の差があると、効果あり 画像で比較 おわりに:検証すべきことたくさん! はじめに (追記12/19:Pixinsightの…

自宅で馬頭星雲

ドラモリドラモリ、ドラッグストアモーリー。ドラモリドラモリ、ドラッグストアモーリー。って頭の中で、かかる薬局店のテーマソングが繰り返し鳴りやないのは、そこに自分が出入りし、プロテインなどを買っているのが悪い。1年ほど前、近所の商業用地に建設…

天体写真は芸術作品たり得るか

はじめに 「芸術作品」の定義 Tさんを例に 個人的な美と普遍的な美 芸術作品の定義 天体写真は芸術作品たり得るか おわりに はじめに 星沼会で親しくお付き合いしている丹羽さんは、昨夏に自身の個展を開くなど「天体写真にアート性を見出す」ことをテーマと…

赤っぽい銀河(IC342/NGC6942)の話

はじめに(IC342について) 見える方向 似ている銀河(NGC6946) 銀経と銀緯 UV/IRカットフィルターを外すとよく映る おわりに はじめに(IC342について) 先日の神割崎にて撮影したIC342銀河は、珍しい銀河でした 拡大してみますとこんな姿をしています 珍…

撮影結果からシンチレーションを評価する

まえおき 撮影の合間に空を見上げて、3等星くらいの星があまり瞬いていないようだったら、「今夜はシーイング悪くないな」と判断しています。でもこれは多分に主観的です。できれば別日と比較検討できるような指標が得られれば良いですよね。 シンチレーシ…

ASI2600MMを導入しました

久しぶりの機材拡充でして、ASI2600MM(以下”MM”)を導入しました。とある方から中古品を安く譲り受けることができました。 11月の新月期は、このカメラのファーストライトのために神割崎に行ってきました。 しばらくは元々使っていたASI2600MC(以下”MC”)…

庭先撮影のことを考える

晩秋のころ、透明度良く晴れる夜が多くて、自宅にいるとソワソワします。SCWの予報は曇りなのに、外は晴れてます。こんな夜に、ササっと庭の望遠鏡のカバーを外して撮影が出来たらいいのですよね。 そんなことを考えつつ、家族が寝た後ベランダに出てみます…

夏油高原でキャンプ

涼しげな高原なのに、夏油(げとう)と、なんだか暑苦しい名前の地区が岩手にありまして、そこに今年新設されたキャンプ場へ家族で出かけてきました。 現地のSQMは21.8。南や西は十分に暗そうです。 キャンプ場の様子。ゲレンデの平坦な場所がフリーサイトと…

チリで銀河2作

10月のチリも昨年に比べて晴天率が低く、晴れても透明度がよくなかったりで、撮れだけ少なめです。2つの銀河を3晩でそれぞれ12時間露光しましたが、イマイチSNが上がりません。またドローチューブも少しぐらぐらしている疑いで、星像も一番良かった頃…

星沼会秋合宿

顧問は学生を卒業して給料をもらうようになったのが、27歳のころと比較的おそくって、それで働くようになって初めに気づいたのが「あー、『社会人』になると友達いなくなるのだなあ」てことでした。これは顧問の人間性の問題もあるかもなんですが、学生のこ…

アンドロメダ銀河、あの日の結果を超えられるか。

今年7回目の遠征撮影に行ってきました。 1年前から始めた筋トレによる体力の向上の結果、RASA11"を車に積むのが苦ではなくなくなり、今年は5回もRASA11"で撮影しています。同時に、この扱いにくい鏡筒への対策もほぼ合格点に達して、最近はコンスタントに…

すてきなお手紙をいただきました

先日、天文部あてに速達のお手紙が届いていました。 急ぎの用事?まったく心当たりがありません。封を切ると、子供の文字が書かれた小さな便箋が二枚はいっていました。「あ、あの子かあ!」 今年の夏合宿、ハイルザーム栗駒に出かけてきたことは記事にして…

いつになったら帰るの?

子供の頃のある日、近所のおばさんが何かの用事で訪ねてきた。珍しく母親との間で話が弾んだのか、夜遅くになっても居間で盛り上がっており、帰る気配がない。私にとっては普段と違う夜で、こんなことは無条件に楽しいものである。酒の肴をつまみ食いできる…

つる座のカルテット

ペアの銀河といえば、M81とM82がすぐに思い浮かびます。3つ組は「しし座のトリプレット」、ひとつ飛んで5つ組は「ステファンの五つ子」があります。 4つ組のカルテットと呼ばれる銀河のことは、今回撮影するまで知りませんでした。 つる座の付近に"The Gr…

2023年、天文部夏合宿報告その2

コチラの記事の続きです うーん、昨晩は1枚も露光できなくて残念であったよなあ。って失望を胸に、ロビーで読書している顧問です(三脚で自撮り) 窓外の空は曇っています。 2泊日程の天文部の合宿にて、昼間の時間をどう過ごすかは毎回の課題です。 「会…

2023年、天文部夏合宿報告その1

8月20日、21日の日程で天文部の夏合宿を行いましたので、ご報告いたします。前回の合宿は2019年でした。 伝染病の影響で4年ぶりの開催でした*1。場所は、宮城県栗駒山のイワカガミ平です。 冒頭からネガティブなこと申して恐縮ですが「合宿と言えば晴れない…

ライフゲームと銀河形成シミュレーション

ライフゲームと呼ばれる計算モデルのことを知ったのは、顧問が中学生のころ、雑誌「ニュートン」だかを読んでいたころでした。2次元の方眼紙上に数字の1で表された「生物」の生存のゆくえを模倣したモデルです。方眼紙上の4つ隣に生きている別の生物の数に…

ニヤニヤ笑い

※若干唐突ですが、最近記事にするネタが枯渇気味なので、無内容な随筆をたまに書いていきます。不評であれば止めます 妻の運転する自家用車が、横を抜けていった。私は仕事帰り、県道沿いを電動自転車で走っていて、たまたますれ違ったのである。 「なにをニ…

新カテゴリ

最近は天体写真関連の話題が飽和状態な感じで、このブログもだんだんと書くことが無くなってきました。日々のアクセス数も減少気味です。それでなにか役に立つ有用な情報を記事として上梓しようと頭をひねっても、数か月後には無用になってしまうようなこと…